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Wonder Worker World ~ 隻眼の英雄 ~  作者: 今宵 侘
第1章 始まりの冒険
27/50

依頼

冒険者のランクですが、アルファベットを使いたくなかったので色を基準としました。


当てはめてしまうなら、


S:黒 A:紫 B:青 C:緑 D:黄 E:オレンジ F:赤 G:白


といったところ。



無駄なこだわりですみません・・・ランクの話が出る時にはなるべくわかりやすくしようと思います。



因みに、ヴェストリーの冒険者5人は最年長のガエルが紫、他が青です。


”最高クラスの冒険者”の基準になるかと。


わたしたちが冒険者に登録してから、一夜が明けた。



昨日はスレールの冒険者とカイのどんちゃん騒ぎに散々巻き込まれた。


わたしは主に女冒険者たちに羽交い絞めにされて、挙句の果てに苦手なお酒を目が回って動けなくなるほど飲まされた。



おかげで目覚めは最悪。


頭がガンガンする。


せっかく冒険者として初めての仕事をする日なのに、帰りたくてたまらない。




一方昨日の騒ぎの元凶と言えるカイといえば、酒樽一杯の酒を飲みほしたはずなのにピンピンしている。


「昨日は楽しかったなぁ」なんて言いながら軽快な足取りでシヴィルに向かっている。




……楽しかったのは認める。


あんな大勢に囲まれて騒ぐなんて久しぶりだったから。



でも、昨日あんだけはしゃいでたカイがノーダメージでわたしだけが二日酔いなんて理不尽だ!



恨みを込めてカイを睨んだけど、「大丈夫か?休んでて良いんだぞ?」なんて心配されたらそんな気持ちもどこかに行ってしまった。




……わたし、ダメだな。


カイの為に出来ることをしなきゃいけないのに、また心配させてしまった。



こんなくらいで弱音を吐いてたらいつまで経っても恩返しなんてできない。



昨日買ってくれた服といい、カイへの恩は増えていくばかりだ。




頑張ってカイの助けにならないとね。



それがわたしの運命なのだから。




……でも、今日は初めての仕事だし、軽めの依頼にしてくれたらいいなぁ。







*****






昨日買ったルルの防具を取りに行くと、防具屋のオッサンが調整を終わらせてくれていた。



ルルがどんな武器を使うか分からなかったので胸当てと篭手など全て軽めの装備を頼んだけど無いよりは随分マシだろう。



ルルの実力は未知数だが、夜叉の友人を思い出す限り戦闘の素質においては問題ないだろう。


そうじゃなきゃ無理にでも安全なところに置いていっただろう。



そんなことより、驚いたのは≪調査サーチ≫を使って無いから細かくは分からないけど、ルルの中には獣人族には基本的にありえない”多量の魔力”が渦巻いているのを感じる。




未だに≪調査サーチ≫を使っていないのはただタイミングを逃しただけだが、これから旅を続けるなら彼女の力量を計る必要がある。


その時にはおれの能力チカラも見せるべき、だとは思う。




ま、とりあえずはシヴィルで依頼をうけてからだな。





ルルは昨日飲み過ぎたせいか、おれの隣を顔をしかめてフラフラ歩いている。


テーブルに突っ伏して寝ているルルを見つけた時に他の冒険者たちに気を取られてルルを構ってやらなかったことに気付き、申し訳ないことをしたと思った。



しんどいなら無理についてこなくていいと言ったけど、どうやら依頼も一緒に受けるようだ。



おれのことを手伝ってくれようって気持ちは嬉しいけど、無理してないか心配になる。



ルルの体調もあるし、今日は初めての仕事だし楽な依頼にしようかな。



なんて事を考えながら、これで二度目になる扉をくぐった。





「あっ、おはようカイト君。思ったより早かったじゃない」




シヴィルの中に入ると、昨日と同じようにカウンターに座るアニエスさんに声を掛けられた。



「おはようございます、アニエスさん。早いって何の事?」



この世界に時計は無いから正確には分からないけど、朝ごはんも食べて防具屋にも寄ったからそう早い時間でもないはずだけどな。



「あれだけ飲んでよく平気でいられるわね……昨日あなたと居た冒険者は皆酔いつぶれてまだ寝てると思うわ。…ほら、隣のルルちゃんも辛そうじゃないの」



「……わたしは大丈夫」



「本当に?無理しちゃだめよ?」



「うん。……ありがと」



俯きがちにお礼を言うルル。


その可愛らしい姿にアニエスさんは心を打ち抜かれたみたいだ。



「はぅ…」なんてため息を漏らし、熱の籠った視線でルルを見つめている。




「あのー、アニエスさん?」



「……はっ!あ、ああ、依頼を受けに来たのよね?どんなのを受けるの?」



我に返ったアニエスさんは一瞬で受付モードに切り替わる。




「依頼を受けるのは初めてだしルルはこんなだし、軽めのやつが良いんだけど……」



「……わたしは大丈夫って言ってるのに」



「ふふ、カイト君にはバレバレみたいね。軽めのなら採集系の依頼とかどうかしら」



そう言ってカウンターから依頼書が貼り付けてある掲示板の方へと向かう。



後ろに付いていくと、アニエスさんは何枚かの依頼書をはがし、おれの方に手渡してきた。



「『イタドリ草10枚』に『イノコズチ5本』に『オナモミ20株』なんてどうかしら。ランクは星1個だけど、これなら町のはずれの森に群生してるしカイト君たちなら頑張れば1日で全部集めれると思うわよ?」




……それだけ?



「それだけって、確かに簡単に見える依頼だけど森には魔獣がでるのよ?危険な仕事に変わりはないわ」



思わず口に出していたらしい。


少しだけ眉をひそめて言うアニエスさん。



それよりも気になることが出てきた。




「依頼って複数同時に受けれるんだ?」


「ええ、依頼受諾を申請すれば何件でも。といっても依頼を定められた期限までに完了させないと違約金が発生するから注意してね?」


「へぇー。ま、自己責任ってとこか」



それは良い情報だ。



それにしても採集の依頼は少し軽すぎる。



おれたちの目の前にある依頼は星1つか2つのばかりで、どれも似通ったものばかりだ。



討伐依頼にしても魔獣でさえないただの獣の狩猟ばかりだ。




もう少し骨のある依頼は無いものか……と横に目を向けると、隅の方に紙の色が違う依頼書が貼ってある。




「これは?」



はがして見てみると、内容は『エルムト街道に住み着いているティボレの討伐』とある。



ティボレ?聞いたこと無いな、と思いランクを見てみると、星が7つも並んでいる。




「ちょ、カイト君!?それ、『凍結依頼』じゃない!」



「?…なんですか、それ」


何故かアニエスさんに盛大なため息をつかれる。



「……依頼書っていうのは依頼を受諾してからの遂行期限とは別にそれ自体に期限がついていて、依頼を誰も受けてもらえないまましばらく経つと依頼は放棄されてしまうの。でも、中には町全体に関わる重要な依頼は放棄されずに、シヴィルがその依頼に報酬を上乗せして保護するの。それが『凍結依頼』。……まあ、報酬が上乗せされたところで依頼を受ける人なんていやしないのだけれど」



「へえ。……でも報酬も上乗せされてるのに、なんでやろうとする人がいないの?」



アニエスさんが呆れたような顔をする。



「ランクを見れば分かるでしょ!ティボレが強すぎるの!星7つなんてランク紫の冒険者が単体で撃破できるかどうかってレベルなのよ!?」



「なるほど、この街にはランク緑の冒険者しかいないから難しいよな……でも、街道に居るんだろ?凄く危なくないか?」



「王国に向かう街道は2本あるから襲われる心配はないわ。……本当はティボレの住み着く街道の方が近道なんだけどね」



「けっこう大事じゃないか?高ランクの冒険者でも呼んだ方が良くないか?」



「……あなたもヴェストリー出身なんだからそれが出来ないって分かるでしょ?」



「……あ、そっか」



不可侵危険地域の一つである"魔獣の森"を自領に抱えるコモル自治区では、高ランクの魔獣に対する策として、長期依頼の形で多くの高ランク冒険者を護衛として雇っている状況である。


確かによろしく無い状況ではあるものの、緊急性の無い依頼に人員を割くことは出来ないのである。




「最初の方は商人からの請願が殺到したみたいだけど、5年も経てばそういうものだと諦めるしか無いわよね」



「そっか……」




うーむ、どうしようか。



ティボレがどんな魔獣なのかは知らないが、言ってしまえばランク紫の冒険者一人程度、である。


おれだけなら難なく討伐できそうだ。



でも、問題は――――――



「それ、受けよう?」



そういったのは、ルルだ。



「な、なに言ってるのルルちゃん!?無理に決まって―――――」



「出来るよ。カイとわたしなら」



目を剥いて抗議しようとしたアニエスさんをものともせず、ルルが言い切る。




おれを見つめるその目には絶対的な信頼の色が見えた。



…ルルの前でそんなに強いとこ見せて無いはずなんだけどな。


思わず苦笑してしまう。




「ルルがそこまで言うならしょうがない。受けるか」



「はあ!?カイト君、それ本気で言ってるの!?」



「期待には応えないといけないからな」



言いながらルルを撫でる。



スカーフで角を隠しているからやりにくかったが、それでもルルは嬉しそうだ。




「……あなた達、昨日冒険者になったばかりなのよ?星7つなんて絶対に無理よ!!」




アニエスさんは納得してくれないみたいだ。



まあ、当然か。




おれは目を瞑り、右手を上にかざす。



そして、そこに自分の魔力を収束させていく。



渦巻く莫大な魔力が地を揺らし、暴風を巻き起こす。



目を開けると、そこには吹き飛ばされないようにおれにしがみついていたルルがおれをキラキラと見上げる姿と、尻餅をついて呆然とこちらを見上げるアニエスさんの姿があった。





「今、おれの魔力を右手に少しだけ集めてみました。アニエスさんもけっこう魔力を持ってるから分かったでしょ?」



「う、嘘でしょ……魔力の流れだけで…」



アニエスさんが驚くのはもっともだ。


普通の人間の何十人分にも当たる魔力を右腕だけに凝縮するなんて芸当ができる者は中々いない。


魔力量がバカみたいに多いか魔力の扱いが相当上手くなければ出来ないだろう。


おれはどちらにも当てはまると自負しているけど。



「カイってやっぱり凄いんだね」


「おうとも。ありがとな」



ルルを再び一撫でした後、アニエスさんに手を差し出す。



「とまあ、こんな感じで冒険者になったばかりだけど魔術には自信があるんだ。ルルもいるし、依頼を受けさせてくれないかな?」



「う……わ、分かったわよ。でも、無理はしないでよ?」



「分かってます」



「……それでね、これはどうしてくれるの?」


「うげ」



そこに広がっていたのは、さっきの風圧で散乱した大量の依頼書。




アニエスさんの絶対零度の視線に晒されながら、おれは依頼書の整理に奮闘することとなった。

カイト(青年)の戦闘シーンはいつになったら見れるのか・・・・・


もうすぐです。



あと、依頼の難易度は星7が最高では無いです。


上限はまた後々設定します。




イタドリ、イノコズチ、オナモミ…どれも実際にある薬草の名前。野原に普通に群生してるので、探してみるのも良いかも。



魔獣…一般には魔力を多く保有し魔術的な能力(火を吐いたりetc...)を持つ獣のことをさすが、攻撃的性質で人に害をもたらす獣も魔獣とよばれる。

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