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Wonder Worker World ~ 隻眼の英雄 ~  作者: 今宵 侘
第0章 転生~別れ
13/50

異変

書くのを少し躊躇っていました。

更新が遅くなり、すみません。

その代り、一気に書き上げたので長めです。



グロ注意です。

苦手な人、ごめんなさい。


カイトとセフィは森を少し進んだ所で、森を覆っている”異変”を感じ取り、立ち止まっていた。



「なんか、ヤな感じがするな・・・」

「うん・・・鳥さん達も全然鳴いてないよ」

「それにこのニオイ、多分血だ・・・」



静けさに包まれた森で立ち尽くしたカイトは険しい顔つきで空を見上げる。



まだ日没には早い晴れた午後であるにも関わらず、辺りは薄暗くどんよりとした雰囲気を醸している。



カイトはさらに西の方角を見るが、そこにあるはずの太陽は障害物に遮られ、見ることはできなかっ

た。


カイトと太陽の間を遮っているのは、雲でも森の木々でも無い。




太陽を隠すようにそびえ立つそれの名前は、大霊峰“デューチェア山”である。



“魔獣の森”に連なるこの山は雲を突き抜け、肉眼で全容を見ることは不可能である。ふもとには危険な魔獣が多数生息し、頂上には巨大な龍や神さえも住まうとされている。


大陸のあらゆる場所からも見えると言われるその山の高さゆえ、西日と“デューチェア山”が重なるこの時期になると、美しい夕焼けを見るどころか、午後中は日の光の恩恵を受けられなくなってしまうのだ。



不安げにこちらを伺うセフィを見て、まるでホラー映画の主人公になった気分だ、と小さくため息をつく。



「状況の分からないまま進むのは危険だけど、ここは家にかなり近いし・・・ほっとくのはさらにマズイな」



カイトだけならその考えですぐに異変の原因を確かめに行くのが限りなく正解に近いだろう。



しかし、今カイトの隣にはセフィがいるのだ。

セフィを不用意に巻き込んでケガさせるのは余りに拙い。



いったん帰ろう、とカイトが決断しかけたとき、服の袖を掴まれる。


横を向くと、探るような口調でセフィが尋ねる。


「やっぱり、すすむの?」

「ああ、このヤな感じの原因を調べないとな。とりあえず、家までセフィを送ってから――――」

「わたしも行くっ!」

「それはダメ。怪我したらどーすんだよ」

「大丈夫!ホルスからこれも貰ったし」


そう言って首に掛けてあったネックレスを取り出す。


深青色の水晶で装飾されたそのネックレスには、装着している者により発動する魔術が込められている。


魔術の内容は、発動してから30分間あらゆる物理的、魔法的干渉を跳ね返す半径1メートル程の障壁を展開するものであるが、そのあまりに強力な効果のため食事は愚か、誰も近づくことができないというホルスの親バカ仕様でもある。



「まあそれがあれば、ほぼ大丈夫なんだけどさ」

「でしょ?それに、家まで帰ってたら時間かかっちゃうよ。できるだけ早く行くべきだと思わない?」

「でもなぁ・・・」


渋るカイトだったが、こちらを真っ直ぐ見つめるセフィの目には固い決意が見て取れた。


「はぁ・・・分かったよ、連れてく。でも、絶対におれから離れるなよ?」

「うん!」


そうして、二人はさらに奥へと踏み出していった。










二人は森の中を進み、木々の無い少し開けた場所へとたどり着いた。



そして、そこに広がる惨劇に絶句した。




充満する血のニオイ。




飛び散る肉片。




そこにあったのは、原型が判らなくなるまで切り刻まれた、かつては魔獣であっただろうモノだった。




「なんだよ、コレ・・・」



弱肉強食の世界でずっと生活してきたカイトにとっても、ここまで酷い光景は見たことが無かった。


思わず後ずさろうとしたところで、セフィの姿が目に入る。

彼女は目を限界まで見開き、カイトの服を握りしめる手は小刻みに震えていた。



それを見たカイトは一気に冷静さを取り戻し、同時にセフィをここに連れてきてしまった後悔が湧き上がってきていた。


惨劇を遮るようにセフィの目の前に立ち、彼女の頭を優しく撫でながら声をかける。


「大丈夫、おれがいるから。今から家に帰るぞ、いいな?」


真っ青な顔で小さく頷くセフィに微笑みかけながらも、カイトは後悔を深くしていた。



早く彼女をここから遠ざけなければ、という本能に近い思いに従って手を引き歩き出しながらも、あの魔獣だったモノが何なのかを考えていた。



他の魔獣に襲われた後にしては違和感がありすぎた。


餌として襲われたのならもっと食い散らかされた跡が残る。

それに、骨まで切り刻まれていたのは道理に合わない。


縄張り争いにしてもあそこまでやるのは常軌を逸している。




いずれにしても、あのまま放置しておけば魔獣達が集まり、ホルス宅にも被害が及ぶ可能性がある。



いっそ今すぐ焼き払ってしまおうかと考え、惨劇の方を振り返った時――――






見つけてしまった。


血だまりの中に、人が使うものでしか有り得ない、黒い短剣が血だまりの中に突き立っているのを。





瞬間、カイトの目に映ったのは、殺気を孕んだ二刃の煌めき。



「ッッ!!」




セフィを抱え後ろ向きに跳躍し、寸前の所で迫りくる斬撃をかわす。



一気に研ぎ澄まされていく感覚。

カイトは、後ろから迫りくる複数の気配をも察知していた。



跳躍が終わらぬうちに抜刀し、その勢いで後ろを見ることの無いままに回転しながら振りぬくきわ、魔術を解き放つ。



「≪連風ストーム≫ッ!!」



たった一振りから発生した無数の斬撃が、このときカイトが初めて視認した三人の黒装束を周りの木々ごと切り吹き飛ばす。



三人が動かなくなったのを横目で確認しつつ、追撃に備える。



しかし、予想していた追撃が来ることはなく、カイトは息をつき、目を回しているセフィを降ろす。




カイトが再び前に向き直ると、最初に攻撃を仕掛けきた、二人の黒装束が短剣を構えていた。



他に気配が無いことを確認した後、前方に声を掛ける。


「なあ、なんでおれ達を襲うんだ?アレもおれ達をおびき出す為にやったのか?」


背後にある魔獣だったモノを親指で指しながら問いかけたが、答える様子は見られない。



「無愛想だな、まったく・・・セフィ、ちょっと下がってろ」



やっと回復したセフィに声をかけながら、剣を構えなおす。

スークジールと相対したときの構えとは違い、今は左手を遊ばせ、剣を真っ直ぐに構えている。



思えば、人間から殺気を向けられるのは初めてだった。が、高位の魔獣と比べればどうということは無いレベルであったし、いくら感情を押し殺しているとはいえ、たった一撃で仲間を半分に減らされた事実に動揺しているように見えた。




しばし無言で向き合う両者。



先に動き出したのは黒装束の方だった。


常識はずれのスピードでカイトに迫る。

と、二人が同時に懐に手を伸ばし、カイトに向けて複数のナイフを放つ。



「忍者か、よっ!」


カイトはナイフが自分に到達する瞬間、剣を立てたまま横薙ぎにはらう。


その一閃でナイフを全て打ち落とし、前を向くが、そこに黒装束の姿は無い。




刹那の後、カイトの左右から短剣が迫る。


ナイフを投げた後、即座に二手に分かれ死角から飛び込んできたのだ。



迫りくる致死性の斬撃。



その中で、カイトは表情を変えぬまま、呟く。



「≪上昇ライズ≫」




斬撃が空を切る。



カイトを見失い、この時初めて黒装束達の目に明らかな動揺が浮かぶ。




バチバチバチッ




何かがはじけるような音を聞き、上を見上げると――――




剣に雷を纏わせたカイトが、楽しげな表情で剣を振りかぶっていた。



「おれの勝ちだな。≪落雷ライトニング≫!!」




辺りに目がくらむ程の閃光と轟音が轟いた。





「カイトッ!!」


軽い足取りで着地したカイトはセフィの突撃を受け止めた。


心配そうな表情で見つめるセフィに、カイトは笑いかける。


「心配すんなって。一回も攻撃当たんなかったから。セフィは大丈夫だったか?」

「うん、カイ君が守ってくれたから何ともなかったよ?」

「でも、乱暴に振り回しちゃったから・・・ごめんな」

「そんなの全然どうってこと無いよ!カイ君、すっごくかっこよかった!」

「そ、そうか?・・・ありがとな」

「こちらこそ!・・・やっぱり、カイ君はわたしの英雄ヒーローだね」



微笑んだまま恥ずかしそうに俯くセフィ。



カイトは思わず抱きしめてしまいそうになるのを頭を撫でるのに留め、改めて残らず動かなくなった襲撃者たちの方を見やる。




奴らは一体何者なのか。


カイトには及ばなかったが、気づかれることなく近づく能力やかなり洗練された技術を持ち、見事な連携を見せていた。

いわゆるプロの暗殺者というやつだ。


そんなものが存在していることにも驚きだが、問題は何故カイトたちにおそいかかってきたかということである。



奴ら自身が目的を持って襲いかかってきたのか、それとも誰かが差し向けたのか・・・



カイトはこの世界で誰かに襲われるようなことをした覚えは無い。

そもそも他人との交流さえ極めて少ないのだ。恐らくカイトが原因とは考えづらい。



考えられるのは、ホルスが過去に起こした何かしらが誰かの恨みを買い、脅迫のための材料としてカイト達に暗殺者を仕む向けたか・・・しかしそれならば生かして捕らえる方がずっと良い気がする。


奴らは最初からこちらを抹殺しにきていた。





どちらにせよ、奴らを縛り上げて話を聞くべきだろうな。

そう簡単に口を割るとも思えないが・・・




そう結論づけ、黒装束達を拘束するため近づこうと足を踏み出した時――――




「中々やるようだな」





さっきまでは誰もいなかったはずの場所に、一人の男が立っていた。








一気に書き上げようとしたのですが、長くなりすぎたので一旦切ります。


次回はすぐに更新します。

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