カイとの契約
「はあ・・・・・・・・・・・。」
私は、レイと別れてひとりで庭を散策していた。また喧嘩をしたわけではないのだが今はなぜかひとりでいたい気分だった。
そう・・・・・・・まるで・・・・・・・・・・・
だれかに会うためにわざとひとりになろうとしていたように。
「一体、私どうしたのかしら。」
ぽつりとひとりで呟いた時。
ゴオーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!
ものすごい風と地鳴りが響いたのだ。
風と地鳴りはしばらく止まなかったが、急にサアーーーと引いて行った。
「あれ?止んだ・・・・・?」
ほっと、一息ついた時。後ろから聞き覚えのある少年の声が聞こえた。
「また会ったね、麻理華。」
「カイ・・・・・・・・・・。」
魔道師カイ。鍵の力を利用しようとしている王族の敵。
散々レイには注意されたがなぜか・・・・・・・カイに会えることがうれしかった。
「会い、たかった・・・・・・・。」
「僕もだよ麻理華。・・・・ちょっとこっちに来なよ。」
カイの声が今はなぜか心地よく聞こえる。頭がぼーとして心拍数が早い。まるで、恋人が帰って来るのを待っていた乙女のような気分だ。
私はレイの注意も忘れ、カイについて行った。
「ここは・・・・?」
私がカイに連れてこられた場所。そこは、ステンドグラスの美しい教会のような場所だった。
全体が白色で構成されていて真ん中に何かの紋章が彫ってある光る石があった。
「ここは、神聖な誓いの場さ。」
「誓いの場・・・・。なんの誓いの?」
教会にしては造りがちがうような気がする。カイのことだきっと魔術に関係あるのだろう。
「婚約や、なにか大切な契約をするためのさ。麻理華、協力してくれるかい?」
契約・・・・?一体なんだろうか。
しかし、なぜか私はカイに協力する気になってしまった。
「いいわよ。」
「ありがとう。じゃあ、愛の鍵をこの石の上に置いて。」
私は言われるとおりに鍵を紋章の刻まれた石の上に置いた。
頭のどこかで誰かの注意の声が聞こえた気がするが無視する。
「じゃあ、次は僕と手の上に麻理華の手を重ねて目を瞑って。」
差し出されたカイの手に私は自分の手を乗せ、目を閉じた。
「よし、じゃあ今から儀式を始めるね。」
カイはそう一声私の耳元で言うと儀を始めた。
「我は魔術の使い手なり。この愛の鍵を代償に我の願いをかなえたまえ!」
カイが一言言い終わった直後。何かの声が聞こえた。
『願いはなんだ?』
低く唸るようなその声はカイと会話し始めた。
「我の願いは、この隣の娘の記憶の中のレイ王子を消し我と娘は婚約者という記憶を植え付けること。
そして、世界最大の魔力を手に入れることだ。」
カイの言った言葉はなぜかあまりききとれなかった。
まるで意図的に聞こえなくしたように。
『よかろう。では誓いの証拠を見せたまえ。』
謎の声が聞こえたかと思うとカイが急に私の耳元で、
「麻理華。愛してるよ。・・・・あと、ごめんね。」
とつぶやいた。
「私も愛してるよ、カイ。」
なぜかひとりでに言葉が飛び出しこんなことをいつのまにかいっていた。
もう一度口を開こうとしたのだが・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
私の口はカイのキスによってふさがれてしまった。
残念だったね王子。もう、麻理華はわたさないよ?




