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研究室

研究所

 パーティーの翌日、授業が一通り終わってから、俺たちはナノ工学の教授にダメ元で、研究室を貸してくれないかと頼んだ。

 教授は言った。

「誰も使わないし、何も壊さなければいいですよ」

 俺は驚愕した。この大学で真面目に勉強してる奴はいないのか。

 教授に聞いたが、防護服などは要らないらしい。ナノマシンを作ったり弄ったりなんなりする区画は研究室から壁で隔離されているとのことだ。

 研究室に入った。思っていたのと違った。電子顕微鏡が大量に並び、フラスコやらなんやらがアクリルのタンスにあるのが研究所だと思っていたが、そんなことはないらしい。あるのは壁についた電子顕微鏡一つと大きなパソコン四つだった。そして何より、高校の理科室より狭い。理科室の半分とはいかなくともそれに近い狭さだ。研究所ってのはこんなもんなのか?

 教授は言っていた。

「パソコンにナノマシンの設計図を打ち込むと、壁の奥のナノマシン生成機が設計図通りにナノマシンを作り出すんです。立体コピー機のイメージが近いと思います」

 エリーが目を輝かせた。

「このパソコン、このデカさだけあって相当な計算性能ですよね?すごーい」

 ジョージは付け足す。

「その上最新のAIソフトが山ほど入ってるんだろ?もう数理モデルとか全部こいつに作らせればいいじゃねぇか。レポートとエッセイ楽になるぜ」

 サイモンとラナは部屋を興味深そうに眺めながらゆっくりと歩き回っていた。

 俺がパソコンを起動しようとしていると、ラナが訊いてきた。

「そのパソコンで魔法を作るの?」

「そりゃな。そのためにここに来たんだ。まずは大方のイメージを確定させる」

「へー、やっぱ科学は難しいや」

 パソコンに火が入る。白い光が画面に表示された。

 よく分からない山の背景の上に、沢山のソフトのマークがある。

 俺は「Ganesh」という文字の書かれたソフトを探した。そして俺は、左上の隅にそのソフトを見つけた。

 いつのまにか俺の操作するパソコンをみんなが覗き込んでいた。

 俺はマウスでカーソルを左上の隅に持って行く。そして人差し指に軽く力を入れて左クリックした。すると画面の色が変わり、黒い背景とそこに浮かぶUIになった。

 ジョージが言った。

「で、こいつに設計図を読ませればナノマシンが生成されて、奥で実験とかがされる訳だ。あとはこいつも設計図作れると。流石生成AI」

 俺は付け足す。

「別にこいつがゼロから作れるって訳じゃないけどな。できない訳じゃないが、それでできたやつは精密シミュレーションの末ゴミと判明する」

「絶妙に不便だなぁ」

 そう言ってエリーは顔を顰めた。

 ラナがパソコンを覗き込むために曲げていた腰を起こして、俺に訊いてきた。

「ね、それレポートとか論文書けるの?」

「いや、こいつはナノマシン関連の設計に特化した生成AIだ。器用貧乏をやめたんだ。視野狭いけどめっちゃ目がいいみたいなイメージかな」

 俺がそう返した時、エリーが会話に割り込んだ。

「その……サカバンバスピスみたいな?」

「不名誉だろ、AIに謝りな」

 俺が返すと、エリーは「え」と呟きながら戸惑った。

 俺は話を進める。

「とにかく、ナノマシンの設計図を一気に作っちまうぞ」

 すると、サイモンが横から口を挟んできた。

「そんなパパっと作れるもの?」

 ジョージはサイモンに同意した。

「新しい電磁石の設計ですらそんなぽんぽん作れねぇぜ?パパっと作れるかよ」

 俺はパソコンの中身を調べながら返した。

「作り始めなきゃ作り終わんないんだ。みんな頑張ってくれな」

 俺の背後で、ジョージはため息をついた。

「そんな身勝手な……まぁ俺らが自分でこのソック入ったんだけど」

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