魔法幻想
俺はアニメが好きだ。
五歳の時、親の影響で日本のアニメを初めて見た時から、ずっとアニメが大好きだ。
現実にはありえない美しい幻想を、あたかも現実のように思わせてくれる。
特に俺は、魔法が好きだった。魔法、魔力、他にも様々な、作品独自の力に強く惹かれた。
高校生になってから俺は、それを現実にも求めるようになってしまった。魔法を、魔力を、現実世界で作りたいと思ってしまった。
それから俺はずっと、どうすれば魔法を作れるか考え続けた。だから猛勉強した。歴史上の魔法に関する記述、科学だと量子、素粒子、様々な宇宙論。そして俺は、ナノマシンに辿り着いた。
魔法みたいな便利で賢い力は、微小な機械じゃないと実現できない。
俺は高校生活の間ずっとナノマシンとナノテクノロジーに没頭した。図書館でナノテク関連の話を読み漁り、ナノマシンの動画を動画サイトで見続けた。
大学に入った今更、受験勉強をしていればよかったと後悔した。折角ケンブリッジやらオックスフォードやら、いい大学があるというのに、何故そこを目指さなかったんだろう。恋は盲目とよく言うが、俺は魔法に恋をしていたのかもしれない。
2075年9月、俺はそこそこの大学に入学した。工学部、電子工学科、ナノテクノロジー専攻のコースだ。
フレッシャーズウィークの間、みんなが大はしゃぎする中、俺は大学の図書館でナノマシンに関する本や資料を読み漁り、電子データを検索し続けていた。そのデータ量には、何度驚かされたか数えきれない。
だが、魔法に関する記録は毛ほども無かった。そりゃあそうだ。俺が調べた限りでも、魔法の記録は全部人の勘違いで説明がつく、残念なことに。
それから、大学では教授と魔法に関する議論をしようとした。当然、相手にされなかった。大体「ジャック・スミス君、真面目に勉強しなさい」で切られる。あちらからすれば、アニメオタクの幻想でしかないのだから当然だ。
俺は学生を頼ることにした。具体的に何をしたかと言うと、「魔法研究同好会」というソックを作った。
意外と人は集まった。地政学専攻の「ラナ・シーン」という女、近代史専攻の「サイモン・レイ」という男、電磁気学専攻の「ジョージ・パーカー」という男、生物学専攻の「エリー・ガーランド」という女。
俺が売り文句にしていた「遊びじゃないソック」というのに惹かれたらしい。
そのソックができてから、俺はみんなを多目的ルームに集めて軽いパーティを開いた。円卓を囲んでみんなで座り、適当な雑談をしていた。その時に、みんなで自己紹介をしようと言い出したのはサイモンだった。
まずは俺からだった。
「ジャック・スミスです。よろしく」
次、ラナは見るからに明るそうな感じで言った。
「どうも、ラナ・シーンです!好きなものはアニメ鑑賞とゲームをすること、勉強はそんなに好きじゃありません!よろしくお願いします!」
次、サイモンは、どことなく丁寧な感じがある。
「僕はサイモン。近代史を子供の頃からこよなく愛してる。よろしくね」
次、ジョージは、やんちゃそうな言い方だ。
「俺はジョージ!SF小説オタクだ。よろしくな!」
次、エリーはもじもじしていた。
「私は……エリーです。その、生き物が好きです。特に、その、遺伝子の話が好きです。宜しくお願いします」
全員の自己紹介が終わり、みんなでピザを食べながら炭酸ジュースを大量に消費し始めた。
俺は思った。ここまで多種多様な人が集まるとは、と。まぁ、ふざけた奴らが集まってくるよりずっと良い。
ある程度パーティが落ち着いてから、俺は円卓を囲むみんなに真剣に話し始めた。
「みんな聞いてくれ。俺がこのソックを作ったのは、魔法を科学で作るためだ。正確に言えば、魔法より魔力の方が近いかもしれない。念力のような、外部の命令で発生する力場を作りたいんだ」
みんながこっちを見た。
俺は続ける。
「俺は、その力場を形成するにはナノマシン群が良いと思っている。だが、ナノマシンでどうするのかはまだよく分からない。ゼロ点振動とか量子揺らぎとか色々考えたがどうも無理そうだ。そこでだ。みんな、意見を出してくれないか?」
サイモンが口元に手を当て、「ほぉう」と感心したフクロウのようになっているのをよそに、ジョージが手を挙げた。
ジョージは「いいか?」と俺に許可を求めてきた。俺は頷いた。
ジョージは続ける。
「ナノマシンを電磁石にすれば、ナノマシン群による力場ってのはできなくも無さそうだ」
俺は衝撃を受けた。確かに磁場は力場だ。ナノマシンにそれを与えれば、ナノマシン群自体の運動エネルギーで外部に力を与えられそうだ。なんで俺は、今まで電磁気を学ばなかったんだろうか……




