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プロローグ




 ――それは罪。それは咎。あるいは病。

 時を経て広がり、染み込み、累積した。

 せざるべきをし、辛苦を生み出す愚行の果てに。

 すべきをせず、怨嗟を広げる無法の果てに。

 報い無き世には非ず、理を以て現出する――




 ***




 この部隊の人たちとはそりが合わない。

 それは、最初から分かっていた。


 けど、私みたいな駆け出しの魔法士なんて、誰も仲間に入れてくれない。

 かと言って、駆け出し同士で組むなんて、もっての他。

 死にに行くようなものだ。


 生活のための迷宮潜り。私は国からの強制だけれど。

 でもそれは、自分や誰かの命を守るためでもある。


 やりたくなくても、才能がなくても、やらなければ人は、生きられない世界になってしまったから。




 この世界には、いつからか迷宮が生まれるようになった。

 少なくとも、私が生まれるずっと前から。


 そこからは魔物が際限なく湧き続け、迷宮から這い出てきては人を襲う。

 放置しておくと、それは群れとなって町を滅ぼすほどになる。

 いずれ、国を飲み込むほどの数に。




 最初は軍が処理した。

 けれど、無限に湧き続ける魔物を相手にするには、国の予算では賄えなくなった。

 銃火器は有効だったけれど、弾が足りなくなったのだ。


 なにせ、世界中に迷宮が生まれたから。

 全世界で火薬が不足し始めた。

 銃の製造が追いつかなくなった。


 銃社会の国では、買い占めと買い溜めで市場から一瞬で消えた。

 結局、軍にも銃弾が回らなくなった。


 どの国も、もはや余分な火薬がないし、兵士の数も足りない。

 結局は、全ての人々が自衛しなくてはならなくなり、一時は人口が半分にまで減った。




 魔物は、無限に湧き続けてくるからだ。

 ただひとつ良い点があるとすれば、魔物は食料や生産素材になること。


 動物のような魔物は肉や油に。

 植物のような魔物は野菜や木材に。

 鉱物のような魔物は金属などに。


 倒せば手に入るそれらを、せっせと解体して食料や材料にするのだ。

 畑や森を管理する時代は終わった。

 魔物を倒す人手が足りないからだ。

 その代わり、倒せばそれらが手に入る。




 ただし、大量生産など出来はしない。

 自転車操業で、きっと、いつかは今のバランスが崩れ、人は滅ぶのだろう。

 私はそう思う。

 皆も、きっとどこかでそう思っている。


 けれど、今が良ければそれでいい人たちには、楽しい世界でもあるらしい。

 強ければ持てはやされ、何をしても許されることもある。

 でも、弱者が虐げられ奪われるという、私にとっては嫌な世界。

 



 今の主な武器は、刃物や鈍器だ。

 銃火器が無くなれば、人が持つ武器はおのずとそれになった。


 ひとつ、人に大きな変化が起きたのは、魔法を使えるようになったことだ。

 ――まるでゲームだ。

 そう言って喜んだ人も、昔は居たらしい。


 ただ、ふたを開ければ、魔法と言っても生活に使える程度だった。

 それでも研究を重ねた人たちが居て、一応は魔物相手にも使えるレベルまで進化した。




 ――これで、女でも戦える。

 そう言って喜ばれるくらい、世界は、人々は、追い込まれている。

 それが今の世界だ。


 もう後が無い。

 世界中に人が住んでいたのは、とっくに昔のことだ。




 刃物や鈍器で、原始的に戦い続けるしかない世界。

 人の思考も、振舞いも、原始的になってしまった世界。


 一部のお金持ちは、懐に銃を持っているけれど……魔物には使わない。

 それは、人を脅すための道具だから。


 魔物に使うには弾が足りないけれど、人に使うには足りる。

 最も脅威的で恐ろしい武器は、結局は、人に向けるもののままだった。


 全部、なにもかも、嫌な世界だ。

 いっそのこと、悪人もろとも、みんな死んで滅びればいいのに――。


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