表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/21

case2:荒井牧子(真相)

仕事をいつもより早く終わった私は、いつもなら通らない道を無意識に歩いていた。


あれ?

ここどこ?


不安になりながらも答えを知っているかのように私は一心不乱に歩き続ける。


何だろ。

でも不思議と不安感などはない。


また一歩そしてまた一歩。

ゴールがあるかのように突き進む。


こんばんわ。


そうしているうちにいきなり誰かに話しかけられた。

そこには透き通るほど白い綺麗な女性が立っていた。


あっこんばんわ。


私の返事はいきなりのことだったので、籠ってしまった。


ここには良く来るの?


彼女はどこか寂しそうな顔をして私に問いかける。


ここには?

気付いたらオフィス街の雑居群ではなく、高台の夜景が綺麗なスポットに変わっていた。


うん?

あれ?

さっきまで普通の道を歩いてはずなのに?


私は混乱した。

そんな私を見て彼女笑いながら話を続けた。


何かあったの?

なら、少し落ち着く?


彼女はそう言って私の後ろを指差した。


そこにはこじんまりした喫茶店が一店だけあった。


カランコロン


彼女に誘われるままお店に入った。


あれ?

ここ、私知ってる?


入った瞬間にそんな感覚になった。


そんな私を無視して、彼女は席に着いた。


コーヒーを二つ。


彼女は落ち着いた声で注文を行う。


席に座ったら?


はい。


言われるがままに席に着いた。


それからどのぐらいの時が経ったのかわからないけど、会話はなくともとても心地いい時間だった。


お待たせしました。コーヒーになります。


アルバイトかな?

学生さんぐらいの人がコーヒーを運んできてくれた。


綺麗なコーヒーだった。

なんてことないコーヒーのはずが私にはとても綺麗に見えた。


綺麗でしょう。

ここのコーヒー。


私の考えを見透かしたかのように彼女が話しかけてくる。


ここのコーヒーはね。

他のとは一味違うの。

あなたが今、望むことが映し出されるの。

変だと思うでしょう。

でも、本当。

騙されたと思ってコーヒーの水面を覗いてみて。


私は半信半疑ではあったが、言われるがままコーヒーを覗いてみた。


次の瞬間、視界がまたさっと変わった。


あれここは?


私は気が付いたら会社の前に立っていた。

だがいつもとは違う。

みんな私には気が付かず、私を通り過ぎていく。


あれ?

これは現実?


不可解な現象に混乱してると、何と私が奥からやってきた。


えっ?

私はさらに混乱した。


そこから私は何かの映像を観ているかのように、私の日常の1日を俯瞰的に遠目で見た。


何だろ。

この人生。


私はただただその映像をどこからかくる虚しさと一緒に見続けた。


映像を見終えた瞬間、また先ほどの喫茶店に戻ってきた。

そして私の眼にはほんのり涙が浮かんでいた。


どう?

あなたが望んでいる今の生活は?


彼女は少し悲しそうな顔をして私に話しかけてきた。


望んでない。こんな生活は。望んでなんかいない。


私は声を荒げて、年頃にもなく泣いてしまった。


きっと私は気付いていたんだと思う。

こんな生活をしたい訳ではない。そしてそれを誰かに言って欲しかったんだと思う。

頑張ってるね。ではなく大丈夫。

その一言を。


年柄にもなく大泣きした私はそのまま泣き疲れて眠ってしまった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ