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case4:山本咲(認識)

こんにちは。


綺麗だがどこか寂しげな彼女が私にそう話しかけてきた。


どうも。


私はとっさに返事を返す。


今日はいい天気ね。


空見ないで、ただ私の瞳だけを見て彼女はそう言う。


でも、空は曇り。

決していい天気ではない。


私は曖昧な返答をし、その場を濁した。


さぁー。


風が吹く。


一瞬視線を逸らし、また元の場所へ視線も戻した。


あれ?


さっきの女性が目の前からいなくなっていた。


そしてまた少し強い風と共に、私の耳元で。


また会いましょう。


先程の彼女と同じ声色ではっきりと私の耳もとでそう聞こえた。


何だったんだろ。


不思議な感覚にはなったが不快感はなかった。


まぁ、いいか。


そう呟くと私も歩き出した。


暫く歩いていると学生が増える。


通学路


当然だろう。

ここは私の通う高校へ辿り着く唯一の一本道。


ここ以外で私の高校へは辿り着かない。


だなら必然的に集団登校みたいな絵面になる。


山本さん、おはよう。

先輩、おはようございます。

山本、おはよう。


次から次へと挨拶をされる。


それに私は外向きスマイルで答える。


だからこそ、普通の人より校舎に辿り着くまで少し時間がかかってしまう。


そして、またついたら着いたらで挨拶責め。


挨拶自体が悪いことではないけど、勘弁してほしい。


そして、その挨拶を見て賞賛されるたびに私の心はズキズキと痛む。


ほど無くして教室に着く。


そうするといつもの決まった人がいつものように話しかけてくる。


おはよー。


それを私は一歩俯瞰して対応している。


おはよー。


何を話してるんだか、何が楽しいのかはさっぱりだ。

ただただその話を聞いて微笑んでる私が今日もいて、それを俯瞰的に上から眺めている私も今日もいる。


ズキン


まただ。


また、心が痛む。


だけど、それには誰も気付かない。


ズキン。


学校での大半はこの繰り返しだ。


そして、気付いたらまたつまらない授業が決められた通りに決められた時間で行われる。


ズキン。


今日はやけに痛むな。


早く終わればいいのに。


退屈な学校、日常。


不自由ない不自由。


また、この生き地獄をひっそり生きていかないといけないのか。


彼女は悲しそうな顔をして窓に映る自分にそう問いかけていた。


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