case3:クロネコの休日
はぁー。
レジ前のカウンターでクロネコが眠たげな表情をしている。
ここは、とある喫茶店。
ただ、普通の喫茶店とはちょっと違う不思議な喫茶店。
今日もその看板猫ことクロは気ままにそして真剣に仕事に勤しむのであった。
おいおい。
変なナレーションはやめろ。
クロが少し怒った感じでいう。
いいじゃん。
暇なんだしさ。
クロ実働録を後世に残そうぜ!
そう言ってクロと戯れあってるのは、ここでアルバイトをしている学生の山方慎吾だ。
別にアルバイトといっても給料が出ているわけではなく。ただのお手伝いだ。
クロー。
クロちゃん?
クロさん?
クロノトリガー?
いやいや、それ違う。
はっ。くだらなさ過ぎて思わず突っ込んでしまった。
それを聞いた山方が更に戯けてくるが、それは聞こえないこととして処理をする。
はぁ。今日も平和だね。
グゥーっと背中を伸ばしレジ横の窓から外へ出る。
そうしてると向こうから彼女のやって来た。
あら?クロお出かけ?
うん。
今日は対象者データも来なさそうだし、プラプラしてくるよ。
天気もいいし。
それを聞いて彼女はそっか。と興味なさげに頷いた。
プラプラといっても特に行きたいところ、行くべきところがあるわけではない。
ただのあてのないただの時間潰しだ。
あれ?
クロネコさん?
当てもなくあるていると小さい子供が俺の方を指さして寄って来た。
子供はあんまり好きではない。
あぁークロネコさんだ。
何してるの?
私と一緒で1人なの?
少女は小学生低学年ぐらいだろうか?
やけにくっついてくる。
ねぇっねば。
1人なの?
私と一緒なの?
少女はずっと横をついてくる。
そんな彼女を改めてみると、少し違和感がある。
ご綺麗だが生活感のない服。
外で遊ぶのに運動靴ではなく革靴。
そして、昼間の時間から一人。
うーん。
あんまり深く突っ込みたくはないが、あまりにもずっと横を歩くので少し情が湧いてしまったのか、気付いたら喫茶店の前にいた。
へぇー。
ここがクロネコさんの家なの?
少女が目をキラキラさせて扉を見てると、扉がガチャっと開く音がした。
どうしたの?
お客さん?
ここの店主でもある彼女が出て来た。
いらっしゃい。
愛嬌ゼロの顔で少女を向かい入れる。
わぁーい。
少女は嬉しそうに店内に入って行き、ちょこんと窓際の席に座った。
クロネコさんはやく。
こっちだよ。
はぁー。
やっぱり連れてくるんじゃなかったと後悔まじりのため息と一緒に少女のテーブルについた。
えーっとね。
私は、ケーキが食べたいな。
お姉さんケーキある?
純粋無垢な表情で少女がオーダーをいう。
はい。
ありますよ。
飲み物はりんごジュースとかでいい?
彼女の問いに少女が更に喜んで答える。
わぁーい!
飲むー!
クロネコさんも一緒に飲むー!
はい。
では、ちょっと待っててね。
彼女はそう言って厨房の方へ消えて行った。
ねぇねぇ。
クロネコさん。
ここは素敵な所だね。
今日は本当にいい日だよ。
彼女は眼をキラキラさせて言った。
ふん。
満更でもないのかクロもその机から離れることはなかった。
クロもクロよね。
彼女は遠目からそんな姿を見て少し微笑んだ。
ケーキを食べてまったりしていると時間というのはあっという間にたつもので、もう4時になろうとしていた。
そろそろかな。
クロはそう思うとにゃーっと鳴いて少女を呼んだ。
少女もごねることなくお辞儀とお礼を言って店を出た。
ねぇねぇ。
クロネコさん。
また会えるかな?
少女がそう聞いてくるがクロはそんな少女に見向きもせずに歩き続ける。
そっか。
もう会えないのか。
何かを察したように少女はつぶやく。
でもさ、もし会えたらまたあのお店に連れて行って欲しいな。
今日はありがとね。クロネコさん。バイバイ。
そういうと少女は家の方向へ走って行った。
うん。また会えたらか・・・
多分それはもう無いだろう。
だって少女は・・・なんだから・・・
僕も人間に感化されちゃった部分があるのかな?
そうポツリと呟いてクロは喫茶店へ帰って行った。。。