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case2:荒井牧子(その後)
ミャー。
ここはとある田舎街。
辺りをみわしても高い建物などはなく、家が数軒と海沿いということもあり潮の匂いがする。
何年ぶりだろ。
あの件をきっかけに私は仕事を辞め田舎に戻ることにした。
昔はあんなに嫌っていた何もないこの街が、今はとても落ち着く場所で、かなり居心地が良い。
この潮の匂いと殺伐感も今思うとなのかな?
そんなことを思いながらぶらぶら歩いていると、ふと目の前から見覚えのある女性と黒猫がこっちに向かって歩いてくることに気付いた。
私の記憶の片隅うっすらとある記憶。
すごく短い時間だけど忘れていけない何か大事な記憶。
一瞬、彼女が微笑んだ気がした。
そして、振り返った直後、もう彼女はいなかった。
がんばって。
最後に彼女がそう言ったように思えた。
うーん。
大きく一つ背伸びして、私は誰もいない海に向かって駆け出した。