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Number9  作者: 渡橋銀杏
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再会

【王宮内部】


「ねえ、すぐに戦場へと向かって!」


 王女がそう叫ぶ。しかし、そんなことは許されない。


「いけません、敵の少ない西側へと逃げます」


「お願い。お姉ちゃんが……」


 戦場で舞い上がったあの蝶々の群れ。間違いなく、姉のものだ。なんども私を楽しませてくれた、優しいお姉ちゃん。まさか、生きていたなんて。あの日、部族の森を訪れた時に殺害されたと聞いたけれども、それも間違いだったのか。


「会いたいよ。お姉ちゃん」


 姉の死が、レイドローたちの森を焼き尽くす直接的な原因になったのは間違いないけれども、彼女が生きているとすれば不可解なことがある。姉も戦争は嫌いだ。ならば、どうして父が森を焼き払えと命令してからの間に姿を現さなかったのか。


 それとも、姿を現せなかったのか?


 なら、それはどうして?


「いやいや、そんなはずはない。みんな、ミスリルのために頑張ってるんだから」


 籠の中で頭を振り、浮かんだ最悪の可能性を振り払う。それは、近くにいる人間の裏切り。軍として停戦交渉に派遣されていた時にお姉ちゃんは襲われ、亡くなったという情報が流れた。なら、停戦交渉に赴いた文官たち。


 つまり、現在の私に近い位置にいる人間が犯人の可能性がある。


「いや、だめだ」


 みんなを信頼しないと、疑うなんてだめ。王女はそうして、籠の中で怯えるのみだ。やっぱり、お姉ちゃんみたいにはなれないのかと思う。


【北部戦線アストラム陣内】


「グラマン様。敵がつっこんできます!」


「連絡はなかったのか。とにかく、叩き潰せ。大将は?」


「それが、レイドローが先頭です。勢いがとまりません!」


「なんだと?」


 それは想定外だ。ミスリルなら、レイドロー以外にそこまで突破力のある将兵はいないからと陣を薄くした。あくまで、レイドローは銀狼の大将であって一般兵を率いて突っ込んでくるとは想像もしてない。


「とにかく、守りをかためろ。当初の予定通りに、叩き潰す!」


 しかし、銀狼を考慮しなくていいのは楽だ。レイドローのいない軍隊ならば時間稼ぎなどせずとも真っ向勝負で勝てるだろう。決着は近い。

【北部戦線銀狼】


「さて、いよいよね」


 北部戦線でアストラム王都まで銀狼ならばわずかの一日で迫ることができる距離にまで迫っている。王都に立て篭った敵軍は寡兵だが、それでも戦えるだけの訓練は受けているはずだ。なら、時間としては一日からもう少しかかるだろうか。それを終えれば、久しぶりに妹に会うことができる。それは楽しみだった。


「さあ、いくわよ。私の手となり、足となりなさい」


 彼女が蝶々へ命令を飛ばすと、そのまま彼らは動き出す。もちろん、指示をすれば魔法を使わなくても彼女の命令に従うのだがそれでもわざわざ言うよりも魔法で操った方が早い。使役魔法のもっともすぐれている点は、一般兵ですらも操る人間によれば兵書読みに変えられる点だ。


 銀狼の兵士たちは皆、レイドローと現王女への忠誠心が高い。そのおかげで魔法を使われることに嫌悪感がない。そのため、魔力の消費は最低限で済んでいるのもありがたい。元々の戦闘力が高い彼らが自由に群れを成して動けば大陸でも屈指の部隊だろう。それを率いるのだから、やはり魔法はすごい。


「ふふっ、これであなたたちも幸せになれるわよ」


 そう言って彼女は笑う。自分の実力を誇示するかのように。この戦場では自分が最強だと証明するために。強くない私は妹のために悪魔に魂を売った。


 あの。森の中であったことは確かじゃない。ほとんど記憶が薄れているけれども私の首は確かに鋭い矢によって貫かれた。だが、その瞬間に森の奥から声が聞こえたのだ。それはミスリルにしては温かく、そして心地よかった。


「汝、国のために命を捧げることはできるか?」


 私は迷うことなく頷いた。この同じ国で生まれた者同士で争う状況を止めることができるのならば。そして、ミスリルの国がより発展していくのならば。


「なら、この力をそなたに授けよう。しかし、気をつけろ。人間の体に耐えられるほどの柔い魔法ではない。その命をかけて、国のために尽くせ」


「わかりました」


 民草のために、命を懸ける。その決断は難しくなかった。だって、ミスリルのためになるのならば。愛する妹のためならば。たとえ、どんなことでも耐えられると思ったからだ。


「では、面白いものが見られることを期待しているぞ」


 そうして、私は意識を失った。おそらく、毒矢か何かだったのだろう。気がつけばベッドの上に寝かされていた。いや、ベッドと言っても森の中にある自然のベッド。動物の作った巣のような場所に横になっていたわけだ。


 目の前にいた、ふくろう。彼に向かって手を伸ばす。すると、今までに使えなかったはずの力があふれてきた。体の内側からどんどんエネルギーが満ちていく。心臓から指先へ、そして指先から蝶々へと変わり現実世界へと現れる。


「これは、魔法?」


 氷魔法しか使えないはずの蝶々が、ふくろうを襲う。しかし、ふくろうが凍ることは無い。代わりに、ふくろうは思い通りに動き始めた。飛べと思えば、空を舞う。頭を垂れろと思えば、その通りにした。


「まさか、禁じられた第九の魔法。使役魔法?」


 それは、ミスリル国内においては禁忌とされていた使役魔法の力だった。

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