ガッツリ雪が積もったのに、ノーマルタイヤで来店する猛者
今年の冬は各地で大雪が降り、苦労された方も多いのではないでしょうか?
ニュースで報道されていた、大雪による高速道路での立往生。
燃料を切らしてしまえば自動車は走行不能になるので、燃料節約のために極寒の中、エンジンを停止してヒーターが使えない状況を耐え忍ぶ。
自分がそんな事態に陥ったらと想像すると、ゾッとしちゃいますね。
私の住んでいる地域は寒冷地なので、シーズン前になると自動車のドライバーはスタッドレスタイヤを装着するのが常識なわけですが、ズボラな人はいざ雪が降ってから焦って交換することが多いんです。
厄介なことに、そういう人種が一定数存在するので、雪が降ると我々自動車屋の店舗には、タイヤ交換の客が押し寄せてくるのです。まるで蜘蛛の糸に群がる罪人達のごとく。
――と、比喩で言ってますが、控え目に言って、彼等は罪人予備軍だと思うのです。
自動車は便利な反面、正しく活用しないと、人殺しの凶器になり得ますから……。
でも、彼等もその危険性が分かっているからこそ、焦ってタイヤ交換をするのであって、まだマシな方なのかもしれません。
驚くべきことに、中にはいるんですよ。何が危険なのかを理解すらしていない猛者が……。
大雪が降ったあくる日、ノーマルタイヤで来店した車検のお客様がいたのですが、道路状況は路面に雪が残っていますし、場所によっては溶けた雪が凍結していて、危険な状態でした。
私も通勤時に慎重に運転してきたものですから、“よく来れたな”と、ある意味感心してしまいました。
そのお客様は、シックなスーツで決めた見た目30代の女性で、いかにも仕事ができそうなキャリア・ウーマン、といった風体でした。加えてどこか冷たい印象です。クールと言い換えてもいいかもしれません。
ですが残念、ノーマルタイヤで運転してきた時点でリスクヘッジができていない、“仕事できない・ウーマン”にイメージダウンです。
そんな失礼なことを考えながら、私はお客様に車の状態を説明しつつ“運転大丈夫でしたか?”と、表面上は気遣うふりをしました。
するとそのエセキャリア・ウーマンは何と答えたと思います?
“え? 何がですか?”ですよ。
いやいや、“え?” はこちらの台詞ですよ。
因みにその時の会話を要約すると、以下のようになります。
「そんなタイヤで大丈夫か?」
「大丈夫だ、問題ない」
「でもノーマルタイヤですよ?」
「え? そうなんですか?」
……“そうなんですか?”じゃねーよ(笑)
どうやらその女性は、現在装着しているタイヤがスタッドレスだと思い込んでいたらしく、“秋にお父さんが交換してくれたと思ってました”などと供述しており――。
……これはイメージを変更せざるを得ませんね。
“クールなエセキャリア・ウーマン”改め、“頭ゆるふわ箱入り・ウーマン”あたりが妥当でしょうか。
……それにしても、知らぬが仏とでも言いますか、私は思い知りましたね。プラシーポ効果、或いは平常心が如何に大切なことかを。
つまり逆説的に考えれば、平常心を保つことさえできれば、この女性はノーマルタイヤで凍結した路面を走破することが可能な、優れた運転技術の持ち主ということになります。
……はい、仕事できないなんて言ってごめんなさい。見た目の印象通り、貴女は凍結を支配“できる女”かもしれない……。一緒に仕事したくはないけど(白目)。
因みに私は仕事ができないから、仕事中にこんなことをしちゃいます。
お客様の車に積もった雪を下ろして不凍液(緑)をかければあら不思議。
お祭りで廃棄された汚いかき氷(メロン味)の出来上がりですよ。
ピンクの不凍液を使えばイチゴ味、青ならブルーハワイもできますよ。
勿論、使用済の廃棄する不凍液を使っているので心配ご無用です。
そういう問題か?