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女神ミスラ

 「へ?」


 俺の間抜けた声が部屋にこだます。


 [誰だ?]


 [女神ミスラでございます]


 [はぁ・・・・]


 今の俺にはそう応えるので精一杯だ。


 (女神ミスラ? なぜ今頃? まさか、グレアの魂か何かがまだ残っていて、いたづらしてる? それとも・・・・)


 考えても考えても、答えは出そうにない。


 [私は、普通に女神ミスラです。ご主人様が考えている様なことはないかと]


 [あなたも、俺の考えが読めるのか]


 [はい、迷惑でしょうか?]


 [いや、いい。それより答えてくれ、なぜ今頃出てきた?]


 [申し訳ございません、グレアという男にお願いされていましたので]


 そう言われた途端に、あいつの顔が脳裏に浮かぶ。


 [そうか。まだ質問はある。俺に記憶の様なものを見せていたのは誰だ?]


 [はい、あれはグレアです。魔法『メモリームーブ』を使っていました]


 [そうか]


 あいつが俺を手助けしたと言うことか。


 グレアが言っていた『真意』には近づいてきているのだろうか。


 [もう一つ、女神ミスラ、この世界での君は一体何だ?]


 [この世界での私の存在について・・・・ですか。申し訳ございません、そのことについて私から言えることはございません。また、ご主人様がお考えになっている、私がご主人様の中にいる理由についてもお話しできることはございません]


 [そうか]


 きっと、女神にも複雑な事情があるのだろうと思い諦めかけた時だった、女神ミスラからこんな言葉が飛び出す。


 [ご主人様、一つ良いことをお教えします。聞きたいことや、お願い事をする時には何か代償を払うことによってスムーズに事が運ぶ事がございます]


 [なるほど・・・・ その代償とやらを聞いても良いか?]


 [もちろんでございます。代償は、私が助けを求める時に一度だけ助けてください。もしも私が一度も助けを求めなかったとしても、代替案などはございません]


 俺はその案を聞いて少し考え込む。


 女神ミスラが俺の中にいる以上助けを求める時は、俺に関わっていることがありそうだ。それに、もしかしたら助けを求められる事がないかもしれないといった、俺にやや有利な条件だと思う。


 [分かった。その条件を受け入れる。だから、俺の質問にも答えてくれ]


 [ありがとうございます。では、まず一つ目の質問の私の存在についてですね。私はこの世界の創造主です。そして、この世界に数多あまたとして存在している神のいただきでもあります]


 すごい人だとは思っていたけど、まさか創造主とは思いもしなかった。それに、数多の神が存在しているとはどういう意味だろうか。この世界に存在しているのか、それとも遥か遠い世界の果てにでも存在しているのだろうか。


 [もう一つの質問、私がなぜご主人様の中にいるかについてですが、それは簡単な理由です。私がこの世界に来た事がなかったからです。なので、この世界に突如として現れたご主人様の中に入って、この世界の視察に来ました]


 [ありがとう、おおよそは理解できた]


 女神ミスラが言ったことを要約すると、この世界の創造主だからこの世界の視察に行くときに寄生先としたのが、ちょうどこの世界に来た異分子ということだ。都合よく利用されている気もするが、別にそんなことは気にしない。俺がハッピーエンドになるためにはどんな手でも尽くすのと同じ様なものだろう。


 俺はそう結論付けて、明日からの莫大な時間を何に使おうかを考えながら眠りについた。




 翌朝、綺麗な音色を奏でる小鳥のさえずりで目を覚ましたのではなく、国王陛下の皇太子様直々の目覚ましで起きることになる。


 「起きろよ、ライト!」


 正直言って、誰も起こしに来なかったらいつまでも寝ているつもりだった。朝食から逃れるために・・・・


 そんな感情を抑え込んで俺は目を開く。


 「ライト、おはよう。早くしないと今日から学校だよ」


 「あぁ、おはよう」


 今グレアが学校と言ったの気がしたのは俺の空耳だろうか。一応聞き返しておく。


 「今、学校って言ったか?」


 「うん。昨日、父上が言っていたじゃないか。僕の従兄弟いとことしてライマイに編入させるって」


 そんなこと聞いていないと言いたいところだが、思い当たる節があるのも事実だ。昨日の夕食の時にグルジアが何か言っていたの俺は適当に応えていたから、おそらくその時に言っていたのだろう。学校に行くこと事態は別にどうでも良い。それ以上に問題なのが、こいつの従兄弟ということだ。昨日、あれだけ目立った男の従兄弟というだけで嫌な予感しかしない。


 俺が黙り込んで考えていると、グレアが何か読み取ったようだ。ニヤニヤ笑っている。


 この男の性格も分かってきた。


 ここで駄々をこねても一向に事態は変化しないと考え、とりあえず朝食を摂ることにする。




 「では、グレア様、グリント様、ライト様、学校へと向かいましょう」


 結局俺は、何もする事ができずに学校へ行くことになった。グレアからの悪い笑みと、グリントからの邪魔者を見る目を一身に受けながら。

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