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【完結済】G-form-girl  作者: ボブ
第6章 東オーディン大陸編
98/178

第98話 ゴリラ31

 俺の名前は31(サーティーワン)、暗殺者だ。

 俺はゴリラとかいう娘の暗殺を引き受けた。


 だと言うのに未だ俺はゴリラとやらを殺せていない。

 暗殺者ギルドでは腕利き、トップクラスの腕前だと自負している。


 生まれてこの方、暗殺対象(ターゲット)を逃した事等

 一度も無いというのに、なんという様だ。


 俺の相棒であり得物は魔導銃と呼ばれるもので

 金属製の弾丸を魔力を爆発させて飛ばすものだ。


 身体のどこに当たったとしても無事では済まされない。

 それをつい先日、頭金を入れた上で

 30年の月賦払いで購入したばかりだ。


 これさえあれば、どんな相手であろうと

 必ず仕留められる、だからこそ相棒としたのだ。


 しかしあのゴリラとやらはおかしい……。

 頭を狙えど、腕を狙えど無事でいられない処か

 平然とさえしていやがる。


 俺の人生の中で最も厄介な暗殺対象だ。

 そもそもあのゴリラとやらに弾丸が当たっているのかすら

 疑問に持つべきなのかもしれないが

 まだ月賦すら払い始めていないというのに

 捨てる訳にもいかなければ、そもそも俺の相棒だ。


 たった10日間と言う期間を短いと思うやつが

 居るかもしれないが、俺達の友情はこの程度で

 途切れるものじゃない事は俺が一番良く解っている。


 そして暗殺対象であるゴリラは飲食店街を1人で歩いている。

 ここだけ見ればただのカモにしか見えないのだがな……。


 俺は定位置につき、魔導銃を構える。

 覗き込めば十字が見える穴に俺は視線を注ぐ。


 確かこの穴は「レチクル」とか「なんとかサイト」とか

 呼ばれる物らしい。


 俺とした事が忘れてしまった。

 ああ、思い出した。

 デス・イズ・キル・サイトとかで「DIK(デアイケイ)サイト」と言っていたな。


 暗殺者ギルドでその事を話したら

 「シャッチョサンアンタモスキネー」と言われたが

 俺は暗殺以外の事には疎くてな……。


 まぁ今ようやく解った。

 どうやら勇者とやらがこの町に残したレシピから

 誕生した「ラメーン」の話らしいが

 それと魔導銃に何の関係があるのかは未だ解っていない。


 そして今日も俺は引き金を引く。





 96話冒頭のリラ。


「ん?」


  『どうしましたか、マスター』


「いや、ここの所虫がよく頭に当たるなぁと……。」


  『…………………。』


「ニクジュバンニ?」


  『そうですね、少々大き目の害虫ですね。

   駆除しましょうか?』


「?まぁ虫だし、放置しておいていいんじゃない?」


  『そうですか、マスターがそう仰られるのなら……。』


「?」


 つか虫多いなぁ……。

 毎日どこかしらで頭にぶつかってきている気がするんだけど……。





 虫……俺の相棒の一撃が虫だと……?

 しかも程度、放置で良いだと……?


 このゴリラとやら、どこまで気が付いているんだ?

 少なくともここはあのゴリラから2キロは離れているんだぞ!?


 いや、待て……。

 離れすぎているから駄目なのか……?

 そんな筈はない。


 この俺の相棒は「アノトマート・カラシデニコム」だぞ!?

 暗殺者界隈では最新式の暗殺銃だと少し安く売ってくれた

 暗殺武器屋の店長が言っていたんだぞ!?


 有効射程も300万ミリメートルとか

 0が6つも付いているんだぞ!?

 ほぼ無限の射程を持つだろう、この相棒が

 遠すぎて威力が足りない、だなんてありえない!!。


 と、なれば……。

 俺の腕に間違いは無い筈だ。

 このトップクラスで恐らく暗殺者ギルドでは

 5本の指に数えられているであろうと自負している俺の腕の問題で

 外しただなんて事は無い。


 なら相棒は……。

 相棒を疑うなんざ暗殺者のする事じゃねぇ……。


 あの「名相棒」すら命の重さに違いはないと言ったらしい。

 そうだ、暗殺対象に善も悪もあったもんじゃねぇ。

 ただただ目の前の暗殺対象の命を奪う。

 そこに重さなんてものは一切無いんだ!!



 って暗殺対象はどこに消えた!?

 しまった!俺とした事が暗殺対象を見失うだなんて

 なんて素人のようなヘマを!!





 ※リラは現在、95話登場の元祖ゴリラメーンでつけ麺を注文中です。





 どこだ……くそっ……この暗殺者ギルドの

 ナンバー1暗殺者だと自負している俺の視界から

 あっという間に消えるだなんて……。


 まさかあのゴリラ……。

 放置、と言いながら俺の事を狙っている!?


 だからあんな横道も無いような飲食店街から

 一瞬にして……………。

 いや、1分……2分はあったか??


 いや、そんな時間で通り抜けられるような

 そんな短い1本道ではない。


 ならどこに消えたのか……。

 ふふ、そうか……。

 ラメーンでも食べている真っ最中か。

 よく考えればそうだ、飲食店街に来る理由なんて

 食事をする以外に何があるというのだ!!


 流石、世界一の推理力を持つと自負する俺だ。

 普通の暗殺者では到底至る事の無い

 まさに神の如く頭の良さでここに辿り着いてしまったか!!





 ※リラは現在、95話登場の元祖ゴリラメーンで

  机に運ばれたつけ麺のつゆに親指が入っていた事 怒り

  シャッセ―!な店員に説教中です。





 と、なるとだ。

 ラメーンを注文し、作られ、食べて出てきた所を

 撃てば良いだろう。


 それにもう少し接近すれば威力も上がるだろう。


 そうすれば俺の相棒である

 この「AKBー47 アノトマート・カラシデニコム」が

 あのゴリラの頭を貫いてくれるだろう………。


 ところで「(アノトマート)」と「(カラシデニコム)」まぁ解る。

 Bとは一体何の事なのだろうか……。




 ※ここからリラは現在説教中、暗殺者31(サーティーワン)

 リラの声だけを喋るミニゴリラがニクジュバンニによる

 操作で動いている茶番をお楽しみください。

 尚店員の声は『』で表示されます。



「あんた馬鹿だろう!!」


「なっ!?なんでここにゴリラがっ!?」


 すぐに俺は相棒を構え、ゴリラを撃とうとした。

 だが俺はゴリラがとんでもなく小さいかった事に驚いている間に

 相棒の引鉄を引くはずの指をベキリと折られた。


 すぐにでも声をあげたかったが

 暗殺者たるもの、静かに暗殺は行うものだ。

 それが自らに何かが起きたとしても変わりはない。

 


「(つけ麺のつけ汁に)指を入れるとか、そんな(汚い)ものを

 目の前につきつけられる身にもなってみなさいよ!!

 そんな事しているから何時まで経っても(客が来なくて)

 駄目駄目なのよ!この駄目野郎!!」


 ニクジュバンニが操作するミニゴリラが

 リラの説教を部分部分消し、ミニゴリラがさも喋っているかのように

 暗殺者の目の前までやってきていたのであって

 実際リラは、未だ元祖ゴリラメーンで説教の真っ最中だった。


「(シャ……シャッセ―……。)」





 なんだこいつ、やっぱり気が付いてやがったか……。


「だが俺は超一流の暗殺者を自負する男!31(サーティーワン)!」


 彼はすぐに相棒でミニゴリラを撃ったが

 ミニゴリラは微動だにする事も無ければ

 傷1つ負う事も無く、彼は口を大きく開けて驚いたのだった。


 距離とかそういう問題では無かった。

 サイズは違えど、このゴリラと言うものを狙ってはいけなかった。

 何しろ撃たれれば人が死ぬこの魔導銃を目前で受けたにも係わらず

 カチンカチンと飛んだ筈の弾頭がミニゴリラの足元に落ちた。


 このゴリラに魔導銃どころか、まともな武器すら通用しないのでは……。

 彼は決して手を出してはいけない相手に

 手を出したのだとようやく悟ったのだった。


「(シャッセシャッセとまだ懲りてないようだよね?)

 ちょっと、少しは痛い目にあった方が覚えが良くなるんじゃない!?」


 その言葉と共に、ミニゴリラは暗殺者31(サーティーワン)

 ボコボコにし始めた。


 彼の相棒はミニゴリラに粉々になるまで砕かれ

 そして暗殺者31(サーティーワン)も身体中の骨を

 粉々に砕かれ、相棒としてしっかり付き合ったようだが

 それを知るのはニクジュバンニだけで

 リラはそれどころではなく、シャッセ―店員に

 二度とどんぶりに親指を突っ込まない様にと躾けるのに手一杯だった。



 暗殺者31(サーティーワン)はその後、界隈から消え

 その消息を絶った……。


 そして暗殺者ギルドでは31(サーティーワン)

 立ち寄らなくなった事で任務に失敗し消息不明、と

 何事も無かったかのように処理された。


 何しろリラ暗殺の依頼を受けたものの

 彼は今回が暗殺者ギルドでの初依頼だった。


 自負は非常に多かったが、ただの初心者であったが為

 あっさりと彼の登録は抹消された。


「あ、ミー。これ焼き捨てといて?」


「ケイ、なにこれ?

 …………ああ、アイスさんの。

 あの人自信だけは一人前だったのにね……。」


「あの人には無理でしょ。

 だってこのリラって子、これで30人は失敗してるんでしょ?

 まずはこういう訳の解らない相手には

 初心者を送り出して腕前を見て、情報を集めないとね。

 だって私達暗殺者ギルドなんだから。

 少数精鋭、入りたいからって実力が伴わない連中を

 ほいほい入れられる程、甘い場所じゃないんだから。

 それに歳も歳だしね。」


「そうよねぇ……。

 じゃあアイスさんはMIA(行方不明暗殺者)で処理、っと。

 年齢は31か………。」



 こうして常日頃から暗殺者は篩い落とされ

 そして長く初心暗殺者から逃れ続けた者には

 本当の手練れである熟練暗殺者が派遣される事になる。


 そう遠くない未来に、リラの下にもうちょっと

 マシな暗殺者が送られる日がやってくるかも?


星5点満点で「面白い」や「面白くない」と

つけていただけると、作者が一喜一憂します!

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