第96話 G と オラーコロファミリー。
最近、町を歩いているとよく絡まれる。
多分オラーコロファミリーとやらなのだろう。
あとよく虫のようなものが頭に突っ込んでくるのだけど
気のせいだろうか。
よく見れば町にはゴミが結構落ちている。
綺麗にして、清潔を保って欲しいと思う。
私が手を出せば、すぐにでも捕まえるように
手筈が整っているのか、衛兵っぽい人達が
すぐ近くに居るのを既にミニゴリラが伝えてきている。
私の居た宿の部屋を襲撃しておいて
その連中が王都に連れて行かれた事に対する
報復行動っぽいけど、それにしてもショボい。
というか絡み方からしてダサい。
何しろ刃物を取り出すとかですら無く
ただ道を塞ぎに来るだけと言う状態だからだ。
少なくとも下手に仕掛ければ
自分達も同じように捕まる可能性があると解っていて
こうネチネチとした嫌がらせに徹底しようとしている。
そんな所かね……。
まぁ陰湿極まりないけど、やった事は忘れない。
私の所持金目当ての強盗だったのか
それとも女性だからと襲いに来たのか、誘拐、拉致監禁。
そもそもの目的自体は知らないものの
オラーコロファミリーとやらの動きは
ミニゴリラ達の情報で把握できている。
ただ特にここ最近、世界的に神殿排除の動きから
このミラブアの港町も例に漏れず
神殿排除が既に終わっていて
その分このオラーコロファミリーとやらが
急激に幅を利かせてきているようだった。
『最早マスターは何か禁制品とお友達か何かですか?』
せめて運が悪い、程度に納めてくれない?
「禁制品の申し子」とか言われてないし
「禁制品が友達」などと宣った事すら無いんだからさ……。
そしてその陰湿な嫌がらせは
日に日にエスカレートしていったのです。
宿は現状、冒険者ギルドの簡易宿泊所を利用している事から
そこに冒険者が押しかけてきて
通路を塞ぐといったものから、少し依頼をなんて思えば
依頼が貼られる掲示板を塞いだり、受付全てに
冒険者が入り、受付してもらえる窓口が無くなったり。
解体する魔物を持ち込めば、追い越して割り込んで
無駄話をし始めたりと、陰湿極まりない内容が非常に多く
法的に触れない形での嫌がらせばかりが続いたのです。
市場にいけば物を売ってくれない、露店で物を売ってくれない。
まぁその我慢もやっと終わる日がやってきたのです。
冒険者ギルドのノストラギルドマスターから連絡があり
ウィンガード王国王都デンドルドア本部の連絡があったと言う事で
冒険者ギルドに行き、魔導無線機を再度借りる事に。
流石に魔導無線機の妨害、ともなると
必要な金額があまりに高い為に断念したらしい。
そしてハンナさんから聞いた内容は
少々思っていたものと違った内容だった。
まず双魚宮のビスケッティについて。
オラクル聖王国の国軍、オラクル騎士団の中の
精鋭中の精鋭、聖道十二宮神の
序列12位にあたる人物だとソニックさんからの返答があったらしい。
オラクル聖王国とオラーコロファミリーについては
現状関係性があるかどうかは解らない、とした上で
オラーコロファミリーの最も上に立つ頭とされる人物は
ガングレリと言う人物なのだとか。
正確な名前はガングレリ・F・ラブアセタデユ。
このラブアセタデユ領の領主であり爵位は子爵だそうだ。
それも最近、代替わりしたのだとか。
それも両親が他のマフィアとの抗争により亡くなり
唯一の嫡男の為、まだ9歳と未成年ながらも
既に爵位を継いだのだとか。
「まぁ9歳のガキンチョがそこまで全て指示して
マフィアの全てを操れるか、っつーとその可能性は低いってよ。」
「まだ未成年であるガングレリを
操っている人物が居るとか??」
「ああ、ソニックのやつはそう考えているらしいが……。
何しろ大陸が違えば流石に危険度が下がるからな。
特に東オーディン大陸は中小国ばかりな事から
情報収集に難儀していて、オラーコロファミリーについての
情報はそこまでなんだとさ。」
「そうですか。しかし内容はほんとそっくりなんですけどね……。」
「だがソニックが言うには神殿排除の動きに合わせて
台頭してきている可能性が高い、とは言っていたから
元々敵対していた可能性もあるんじゃねぇか?」
「どうなんでしょうね……。
それに冒険者ギルドにもその手のが多くて
中々尻尾も出さないのでどうしようかと思っていたんですよね。」
「何、どうせもうそこに居るつもりは無いんだろ?
別の町いきゃ良いんじゃねぇか?」
「別の町にもミニゴリラを先行させましたけど
どこもかしこもオラーコロファミリーの息が掛かってますから。
まぁ、どうするかは既に決めてあるんですけどね。」
「まぁ、あたしにゃあんたの考えは解らないが……。
気を付けろよ?」
「おや、ハンナさんが私の心配だなんて……。」
「あんたが死ぬと、冒険者ギルドの儲けが減るから
困るんだよ。さっさと他国にでも移動して
まずはBランク昇格試験をとっとと受けろ。
下手やらかしてDランク落ちしても知らないぞ?」
「はは、気を付けます……。」
訂正、私の心配ではなく
冒険者ギルドとしての心配だった。
「うーん……。」
私は魔導通信後に考えた。
但しそれはどちらかをいうとヲタ脳な考え方だった。
「未成年で貴族になれるの?
個人的には邪推しか出来ないんだけどさ……。
それに抗争で両親は亡くなったのに
ガングレリが生きているってのが気になる。
将来的な禍根を残しておくものなのかな?
それに神殿排除の動きに合わせて台頭してきているとか
疑問が尽きないんだけどね……。
抗争で破れたって事は大半の縄張りみたいなものは
奪われた、と考えるべきでそれをまだ9歳の身で
奪い返したりしている??」
『ミニゴリラ達の集めた情報から言えば
そういう事になります。』
「9歳で……?」
『ですから後ろに誰かがついていると
ソニックさんは疑っているのでしょう。
真偽の程は現状では解りませんが。
明確な事はそのオラーコロファミリーに
マスターが狙われた事。
そしてマスターに対し、嫌がらせをしてきている事。
そして大半の町が既にオラーコロファミリーの
手の中、と言う事です。』
「抗争以前と以降に違いは無いのかな……?」
『禁制品等についても伝統的なものらしく
流通などに違いは無さそうです。』
「元々そうだったと……。」
『むしろマフィアってそういうものでは?』
「さぁ……私にとっては映画と漫画の世界
だけでの話だから……。
でも気になるんだけど他のマフィアとやらももしかして
貴族だったりするのかな……?
でも領主が自らってのはどうなのかと思うけど。」
『そもそもファミリーネームに家名すら使われていない時点で
お察しされているかと思ったのですが。
堂々とやられるならラブアセタデユファミリーとでも言うでしょうし
同じような理由で他のマフィアも
表立ってやられていないのでは?
そこまでともなると、今のミニゴリラ達の頭数では追いつきません。
ミニゴリラは良くとも、ミニミニゴリラともなると
移動速度に懸念があります。
ミニゴリラが付き添う必要性がありますので
せめてもう1レベル上がらなければ
これ以上は大変難しいと言わざるを得ません。』
「ゴリラの数かぁ……。
やだなぁ、またルーレット?」
『そうなりますね。』
「……………。」
この時点で私はミラブアの港町の滞在に拘る必要は無く
町を出て、24時間耐久武器ルーレットに明け暮れる。
その予定がすぐに崩れるのでした……。
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