第93話 G、東オーディン大陸へ。
あれから稲妻を喰らった船員と冒険者。
濡れた水を伝ってきた稲妻だった事で
威力が周囲に分散していたらしく、程なくして目覚めた。
稲妻を放った人物はどうやら
御貴族様らしく、娘さんが頭を打ち
血が滲んだ程度の事に腹を立てての
怒りの行動だったとか。
「それで危うく全滅し掛けたとか笑えないわ……。」
「まぁそれでも無事についたんだから
良いじゃねぇか。あれが東オーディン大陸だ!」
船員さんの指さす方向に見えたのが
私が居たウィンガード王国のある
西オーディン大陸の東隣となる大陸、東オーディン大陸だった。
水平線に僅かに見える程度ではあるけど
目指す大陸が見えた事でワクテカが止まらなかった。
ちなみにあの後、3回ほど魚人?の三平が
甲板にやってきてはぶん殴り落とすという事があったのだが
見た目のキモさに、恐らく私を含めた全員が
忘れたい悪夢として記憶から消そうとしている事だろう。
そして4回目があったのでもう面倒臭くなり
甲板の上に縛って放置する事にした。
「わいの扱い、酷くないか!?
ってやめてくれへんか??
日光に当てるとか、カツオ干しても鰹節なんかにならへんで!?
なぁ、このままだと顔が腐るで!?
バ〇キ〇マ〇にやられたア〇パ〇マ〇みたいになるで!?」
やっぱこいつ転生者か何かだね?
この世界にバ〇キ〇マ〇もア〇パ〇マ〇も無い訳で
そもそもテレビに近いものはあれど
アニメなんてやってる訳もなく………。
『どう考えても転生者でしょう。
転移者の頭がカツオと言う事は無いでしょうし。』
いいんだよ。
同郷だからと別に慣れ合うつもりもないし
大抵厄介事の種にしかならないんだからさ。
船員の人には帰りの航路で海の王にでも
また遭遇したら生贄として使えば助かる、と言っておき
三平をそのままにして、私は東オーディン大陸へと上陸したのです。
「あんさん鬼や!悪魔や!ゴリラや!ラッパや!パンツや!」
あーあー、聞こえない聞こえない。
あとゴリラなのは自負してるけど
ラッパとパンツはただのしりとりでしょうが……。
ここ東オーディン大陸には思った程大国と呼ばれる国は
無いらしく、大半が中小規模国で構成されているとか。
その中のワサビンディング王国という国のラブアセタデユ領。
その港町となるミラブアの港町に辿り着いたのです。
「中々人が多い港町だね。」
『そうですね、ハリーバードの港町や
帝国のラハイハサンの港町に比べると
非常に大きく感じられます。』
喧噪が止む事も無い、賑やかかつ
活気のある港町についた事もそうだけど
何より市場の広さや売られているものの種類の多さにも
目を見張るものがあった。
「おおお!念願の米に醤油に味噌が!!」
しかしもっと東方の大陸のものだそうで
ここはそれを輸入したもの、だとかでまぁ高い。
「ふふふ、しかし今の私には無理はない……。」
「ソニックさんのお陰でたんまりとベーコンエッグ帝国から
慰謝料ぶんどりましたからね……。」
そりゃあ仕方ない。
危うく冒険者ギルドも商業ギルドも登録抹消の上に
丸々冬という1季節、働いていたんだし??
『しかしよくゴリラ鑑定して購入してください。
この世界は「騙される方が悪い」と言った
風潮の方が強いのですから。』
騙される方が悪い……?
『主に穀物の麻袋などはその典型です。
麦などはどうしても採取の際に現代的な方法で
籾を取っている訳ではない分、僅かに砂などが
混ざったりするものです。
それすら丁寧に取り除き、入っていないものもあれば
そのままのものは平均で4パーセント近くは
混入しているものが普通です。
そして物によっては嵩を増す為に
わざと多く混入させているものがありますので。』
まさかー、と鑑定すると酷いものだった。
わざと入れられているのか、偶然入ってしまったのか
そこまで解らない1割程度が土や砂のものもあれば
あからさまに入れただろう、と思われる
2割前後含まれているものまで。
様々な割合の米が置かれていたのです。
それから市場を見て回るとまぁあるわあるわ。
それこそ魔法水薬、ポーションと呼ばれる
回復薬なども、本当に水増ししたものもあれば
野菜なども下の方が腐っているものが入れられていたりと
悪意を感じるものが多々あったのです。
『市場が大きくなる程、こういうものは増えます。
必ずゴリラ鑑定をして買うべきです。』
確かに。
事実かどうかは知らないけど、地球でも
お米の形をしたプラスチックをお米に混ぜて
売っている、なんて話すら聞いた覚えがある位だからね。
西オーディン大陸では見る事が出来なかったものなどを中心に
市場で大人買いを決め込んで、宿に1泊して
翌日には港町を去ろうと思っていた矢先の事だった。
深夜。
私の部屋の前へと非常に静かに、物音足音を立てずに
次々と人がやってきていた。
そして私の部屋の鍵がスッと開けられ
一気に人が入り込んできたのです。
「チッ、いねぇぞ!?」
「どこいった!?」
まぁ、目の前に居るんだけどさ……。
ニンジャフォームで認識阻害納涼をオンにしているだけで
それこそ顔が当たるかどうかまで接近しなければ
ほぼ気が付かれる事は無いと言う能力で
ずっと部屋の角に立っているだけなんだけど……。
超誰も気が付かないんだけど!?
それとよく見ると、宿屋の人間が
混ざっているジャマイカ………。
『治安の悪さも宿選びに考慮するべきでしたね。』
まぁ個室で少々安めの宿があったからと
飛び込みで1泊したのは少々警戒心が足りなかったのか。
まさか宿屋の人間までグル、とか
どれだけ治安が悪いのだか。
まぁ、どこぞの誰だかは知らないけど
女性の部屋に踏み込んで何をしようとしたのかね。
私は認識阻害の状態から一気に動き
部屋に入り込んだ連中の頭にバナナ売りのハリセンを叩きつけ
気絶させながら全員を捕まえた。
「いやぁ、まさか雑貨屋で買った縄が役立つ日が来るとは……。」
「チッ……このガキが!この縄を解きやがれ!」
「と、仰っていますがそもそも縄で縛るような人が
解いてくれると本当に思ってるのかね?」
「はっ!このまま衛兵に突き出した所で
俺達が捕まる事なんざねぇんだよ!」
「ほぅ、なら試してみる?」
俺達は捕まらない。
と、訳の解らない事を言っているので
私はそのまま全員を縄に縛ったまま繋ぎ
最早、引き摺る様に詰所まで、と思ったのですが……。
「こういう時こそ冒険者ギルドの方が良いよね。」
「なっ!?ちょっ、やめっ、痛っ!
擦れる擦れる擦れてるって言ってんだろうが!!」
「知らない。」
私は地面を引き摺り、冒険者ギルドへと出向き事情を説明したのです。
星5点満点で「面白い」や「面白くない」と
つけていただけると、作者が一喜一憂します!