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【完結済】G-form-girl  作者: ボブ
第6章 東オーディン大陸編
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第92話 G と 海の王

 それは深夜、魔導客船の客室で寝ていた時の事だった。

 非常警報でもある、鐘の音が船内に響き渡った。

 それと同時に護衛に係わっている人だけが開いている

 伝声管から、次の言葉が聞こえてきた。


  海の王(シー・キング)が出た。


「何、海の王(シー・キング)って……。」


 私は甲板に急ぎながらもニクジュバンニに

 その正体を聞いてみた。


  『シャチの事です。シャチは魚類全般、サメやクジラすらも

   食べ、海の生態系の頂点に居る生物です。』


「でも魔物は寄ってこない筈だから……。普通に哺乳類??」


  『はい、しかしこの世界のシャチはかなり大きいです。

   むしろクジラ並の大きさのものもいるようで

   そういった個体を海の王、と言うそうです。』


 別名シー・キングとかシー・クイーンと呼ぶそうで

 キングならオス、クイーンならメスで

 海の王、という事でオスのシャチではないかと。



「でっか!超でっか!!」

 いやもうクジラなんてものでは無く

 この魔導客船とほぼ同じくらいではないか、と

 思うほどに大きなシャチ、海の王(シー・キング)だった。


 しかもそれがブリーチング。

 ようは海面に自らの身体を打ちつけるジャンプを

 この真夜中に行っていて、魔導客船が右に左にと

 ブリーチングにより発生した波で酷く揺れたのです。



「よりにもよって、興味を持たれたか……。」


「興味?」


 シャチは好奇心が旺盛だそうで

 興味を持ったものには接近して確かめる習性があるとか。


 シャチ自体がこの魔導客船を餌として

 捉えたか、などとは別の問題らしく

 こういう個体が一番厄介なんだとか。



「敵意がある海の王(シー・キング)も怖いが

 敵意が無くともこうして寄ってくる。

 このまま何事も無く去ってくれれば良いのだが

 もし下手に攻撃でもして敵意がこちらに向けば

 今以上に大変な事になる。

 くれぐれも攻撃などはまだしないように!

 ただ海の王(シー・キング)が捕食目的だと解れば別だ!」


 集まった護衛の冒険者、私を含めて全員に

 その場で細かい説明が為され、とりあえず深夜ではあるものの

 魔導客船が大きく揺れている事から

 2手に分かれ、対応する事に。


 片方はこれから船内に入り、1つづつ部屋を回り

 状況の説明に回る班。


 もう片方はこのまま甲板に身体を固定して待機。

 そして海の王(シー・キング)の動向を見守り

 最悪のケースとなった場合に限り

 海の王(シー・キング)と戦う、と言う事になるとか。


 つまり海の王(シー・キング)が敵意を剥きだしてこなければ

 私達はこのまま見守る以外の事が出来ないとか。


 その理由が船員の人から語られた。


海の王(シー・キング)ってのは頭が良い。

 下手に我々が攻撃すると、それを覚えているんだ。

 それに1匹で動く事は少なく、この近くに

 仲間がいる事も確かだ。

 だがこいつらは自らが率先して手を出した場合は

 仲間が助ける事は無いんだ。」


 なんでも海の魔物としての王とも呼ばれる

 クラーケンなども捕食するらしく

 その場合は群れでまとまって連携を取って戦い

 そして倒すらしいが、逆のケース。


 海の王(シー・キング)が襲い掛かった場合に限れば

 それこそ自業自得、自己責任といった性格だそうで

 もし死んだとしても我関せずなのだとか。


「なんか変に人族臭い生物ですね……。」


「だからこそ群れに襲われない為に

 こちらが襲われるまでは何も出来ないんだ。

 何しろ群れともなれば何十頭と居るのが普通だからな。」


「これが何十頭……?」


「時には100頭を超える群れさえ存在する。」

 それでも世界の海に海の王(シー・キング)の群れなど

 そう多くは無く、出会う事自体が稀であり

 今ではそういった生態がある程度解っている事から

 先に手を出さなければ大抵は問題無いのだとか。


 そして海の王(シー・キング)が現れてから

 1時間、2時間と経過し

 私達は甲板に身体を固定したまま、海水を浴び続ける。

 そんな時間を過ごしていた。


 既に船内の通達も全て終わり

 船員の一部と護衛の冒険者が

 ずっと甲板で我慢を強いられる、と言う苦行は

 3時間、4時間と続きまさかの朝になってしまったのです。


「う………眠いけど海水を浴びて起こされるとか

 こりゃきついぜ……。」


 まぁ、私はベーシックフォームで

 バイザーを閉め、こっそりと寝ていて

 元気なのですけどね……。


 ただ話によると船内は阿鼻叫喚に近いのだとか。

 いつまでも大きく揺れる魔導客船に

 酷い船酔いを起こす人、船内の壁に身体などを打ちつけ

 怪我をする人等が増えているとか。



「だからといって甲板に出たら、一歩間違えれば

 海に落ちるからな……。」


「垣根の向こうの草は青い、ってところですかね……。」


 私達は懸命に耐える、それしか選択肢は無いし

 船の中に居る乗客にもそれが伝わっていた筈なのです。

 しかしこの状況に痺れを切らした人物が出てきたのです。


 閉じられた甲板への扉が急に開き

 そこそこ良い服装の男性が叫んでいた。


「貴様のせいだ!」


 この人は何を言っているのか。

 と見ていた所、何を血迷ったのか

 魔力を練り上げ始めた。


 魔法(マギウス)だ!


「止めろ!群れが来てしまうぞ!!」


「こいつのせいで私の娘が!

 こいつを殺さねば気が済まぬ!!」


 そして手から魔法が放たれた。

 しかも最悪だ……。


 雷属性魔法……。


「【稲妻(ライトニング)!!】」

 それと共に甲板にも稲妻(ライトニング)が走った。

 稲妻(ライトニング)海の王(シー・キング)へと向かわず

 全体が濡れた甲板を走ったのです。


 そして私達、甲板に身体を固定していて

 全身が濡れた全員に稲妻(ライトニング)が走り。


 稲妻(ライトニング)を放った本人にも走り。


 海を稲妻(ライトニング)が走り。


 海の王(シー・キング)にも走ったのです……。


「があああああああああああっ!!」


「きゃああああああああああ!!!」


 私はすぐに身体を固定していた革バンドを

 身体から外し、雷属性魔法である稲妻(ライトニング)

 放った馬鹿なおっさんが甲板から落ちる前に捕まえ

 そして開いた扉の中へと叩き込み

 扉を回すように再度閉じたのです。


「キュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!」

 そして海の王(シー・キング)の鳴き声が聞こえた。


 それと共に、遠くの海上に次々と海の王(シー・キング)

 それと海の女王(シー・クイーン)が現れたのです。


 どれもこれも、この魔導客船を目指し

 それまですぐ近くにいた個体に負けず劣らない

 巨大シャチ達が一斉に向かってきたのです。





「またんかい!!」

 その言葉が聞こえると同時にシャチ達が一斉に止まった。


 甲板から覗き込めば、海の上には

 あの褌一丁、カツオ頭の三平が立っていたのです。


「あんさん達、まさか長く付き纏っていて

 相手が怒りもせんと本気で思ってるんやないやろな?

 悪いのはどっちか位、あんさん達なら解るやろ?

 それとも………わいと殺るか?」


 三平の言葉に、巨大シャチ達が一斉に海の中へと潜り

 海はあっという間に静かになった。


 三平はそれから魔導客船の甲板に上がってきた。


「いやぁ、災難やったなぁぁぁぁぁぁ!?」

「無賃乗船してんじゃねぇ、この魚野郎!!」


 結局最後は甲板に上がってきた所で

 ゴリラストレートで殴り飛ばし

 3回目の遭遇となった三平とやらには

 強制的に下船していただいたのです。


 え?助けてもらってないかって?

 やだよ、褌一丁の変態カツオとかさ……。


「げ………解せんわぁ……。」


 三平は程なくして海の中へと沈んでいった。


星5点満点で「面白い」や「面白くない」と

つけていただけると、作者が一喜一憂します!

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