第86話 G、犯罪奴隷となる。後編
トッペンテット監獄鉱山の朝は早かった。
「起床!起床ぅぅぅぅぅ!!」
起きるのは朝の4時。
まだ日も昇らないうちから、起きるのです。
寝床なんてものは無く、鉱山のガッチガチに硬い
石のような地面での雑魚寝。
そして順番に顔を少量の水で洗い
しっかりと目を覚まして4時半から朝食。
朝食のメニューは旅で食べるよりも硬い
ガッチガチに焼き固められた、歯も立たない様な小さなパン1つに
野菜のやの字も具として見当たらず、塩味すらほぼ解らないスープ1杯。
5時からは鉱山労働が始まるのです。
鉱山はいくつかの役割に分かれていて
鉱山を掘る人、堀った鉱石を運搬する人等に分かれていて
その作業は午後5時までぶっ通しで続けられます。
そして午後5時半から夕食。
メニューは朝と一緒。
そして鉱山内には様々な場所に灯りの魔導具が設置されていて
消灯、就寝が午後10時。
翌日の朝4時までの6時間が睡眠時間で
労働時間は1日12時間。
休日は無、というのが
このトッペンテット監獄鉱山での刑なのだそうです。
と、言ってもこの鉱山は国営で
その利益は全て帝国に入るだけであって
そもそも私を含めてここに居る人たちは全員
犯罪を犯した人達ばかりであり、奴隷。
奴隷の所有者も国であり、これを刑期が終わるまで
続けていき、刑期が終了すれば解放される。
なぁんて口で言うのは易しってもんでして。
そもそも12時間の肉体労働に対して
鉱山でツルハシを振るって、レールの無いトロッコみたいなもので
鉱石を運び続けるなんて肉体労働なのに
食事は延々と筋肉にもなりそうもないようなもので
倒れ、死んでいく人の方が多いようです。
しかもこの鉱山、監獄鉱山という名前だけあって
鉱山そのものが監獄として機能していて
しっかりと様々な場所に鉄格子などがつけられ
外に出る事は叶わないし、まぁする事自体は鉱山仕事だけ。
しかも男女が分けられていないのです。
男も女も雑魚寝で、自動的に男性と女性が
固まって寝る事が多いのです。
何故って言われても。
そりゃ女性が1人で寝ていたら
襲われる可能性がある訳ですよ。
まぁ男性がTDNされるケースもあるらしいですけど。
そんな中、私はまぁ新人いびりとでも言うのでしょうか。
1人だけ囚人服を着ておらず、目立つ事も多かった為
ネチネチとした虐めのようなものを多く受けたのです。
朝の顔を洗う水は私は新入りなので一番最後。
その頃の水はまぁ汚いのなんの。
だって1つの桶で順番に古い人から洗っていく。
これが汚くない訳が無いのです。
そこに輪をかけて、土の様なものなどが入れられ
私に回ってきた時にはまぁまっ茶色の泥水状態。
「………………。」
まぁ私の場合は無限水樽があるので
問題なし、と言う事で。
食事は取りに行くと、私の分が無いか
あったとしても食べられないものが入れられていたり
もしくは帰り際に足を引っ掛けられたりと
まぁ、陰湿さは男性より女性の方が高いと言うけどさ……。
まぁ私の場合は無限バナナがあるので
問題なし、と言う事で。
それ以外にもゴリラコンテナに食べるものは一杯あるので
わざわざ美味しくない食事をする必要性も無いのです。
作業中は危険な場所をやらされたりだの
壊れたツルハシなどで掘れ、と言われたり
車輪の壊れたトロッコに大量に鉱石を詰まれて
1人で押していけとか。
そもそもツルハシで掘るより、私の場合
殴った方が圧倒的に速い。
さらに多少車輪が壊れていようとも
普通に押せるし、車輪が完全に壊れていようとも
持ち上げて持っていけば済んでしまい
最早、いびりがいびりになっていなかった。
まぁそれ以降も酷かったのです。
危険な坑道に押し込まれて、わざと天井を崩されたり
寝ている最中にどこから持ってきたのか油をかけられ
火を付けられたりだの
変な男が寄ってきて、襲われそうになったけど
ぶん殴ってそのまま寝たり
天井が崩れても自力で脱出は出来るし
そもそも燃やされてもゴリラアーマーの性能上は
熱くもなく、火傷を負う事もなかったのです。
まぁどんどんとエスカレートし
つるはしで襲われたりなどは最早、日常茶飯事でして。
「同じ犯罪奴隷同士で殺し合って何が面白いんだか……。」
そう思っていたけど、どうやら面白い面白くないの
話では無いらしい。
いわゆるくだらない面子の問題らしい。
こういう場所では古くから居る、いわゆる無期懲役などの
顔役がのさばるのが普通だそうで
その面子的な問題なのだとか。
「面子で刑が軽くなったり、美味しいおまんまが食えるってなら
解るけどさ……。」
それでも少数ながら周囲からは隠れつつ
私に良くしてくれる人も居て、そこから聞けば
まぁ最もな理由としては
私がその顔役の下に付くのを断った事が最大の理由だとか。
「馬鹿な事を……なんで私が私の能力でバナナなんかを出して
その顔役の為に動く必要性があるんだか。」
水が出せる、バナナが出せる、ココナッツが出せる等
他の人は技能、魔法、能力が
封じられているにも係わらず、私は自由に使っているし
鉱山労働についても、私程ハイペースで働いている人物も居ない。
一時期は私の着ているこのゴリラスーツが要因だと思われたようで
男達が寝ている所に襲い掛かってくる事すらあったのです。
まぁ、全部殴って黙らせたけどさ……。
「っていうか時代劇の牢屋みたいだね。
顔役だのなんだのとJ〇Nみたいな……。」
『世界がいくら違おうと、そういう事を
考える者達が居るのですよ。
それとこの世界にペニシリンはありませんからね?』
「ま、もう暫くの辛抱だと思うけどね……。」
私はミニゴリラを1匹放っていて
ウィンガード王国には既に到着している。
ここはベーコンエッグ帝国の中でも
既に帝都すら通り越した、かなり奥の方だし
いくらウィンガード王国が大国とは言え
国境関のように、簡単に来られるとは思っていなかった。
だけどミニゴリラを通して解っている事は
やはりあのホンダワラの町の事が
原因だと既に判明はしているのです。
あの登録証の情報を引き継いでいない事もあって
私に不正使用、と言う罪がついたものであって
ウィンガード王国としての落ち度、と言うよりは
冒険者ギルドの問題だとか。
一応は王都デンドルドア本部のギルドマスターのハンナさんと
副ギルドマスターのメロディさんが
その為の対応に動いているとか。
どちらにせよ私は後々、解放される事は
間違いは無いだろうけど、そこにはベーコンエッグ帝国との
関係性と問題もあるらしく、早々にというのは難しいとか。
『要約すると、マスターがデンドルドアで
Dランク昇格試験を受けていれば
全て丸く収まっていた、と言う事ですね。』
「言い方ぁ……。」
私がここから出るには、まだ時間が掛かるようです。
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