第83話 G vs 双魚宮のビスケッティ 後編
「あ゛……あ゛……あ゛………。」
ビスケッティの顔は顎が左に曲がっていた。
その為か、言葉をキチンと発する事も出来なければ
「あんたさ、攻撃はそこそこ重いけどさ。
身体が完全にガリッガリじゃん。
素早いし、攻撃も良いけどどう見ても打たれ弱そうな身体してるよね?
もしかしてSTR―AGIってやつ?
それでもちょーっと攻撃軽めな感じもしたからAGI>STR?」
「なっ……ばはっ……。」
「いいねぇ、血の華が見たかったんだよね?
ドレスを血で染めたかったんだよね?
夢が叶ったね、あんたの血だけどさ。」
ビスケッティの顔は大量の鼻血が出ていた。
それによって白いドレスは赤く染まり
地面を抉る様に滑り倒れた事もあって
茶色くもなっていた。
『マスター!一体何をしてたんですか!!』
「え?自動芋だよ、自動芋。
まぁ手動だけどさ……。」
『自動芋?』
自動芋とは某MMORPGで
一番最初に登場した便利系ツールの事。
HPが減ると、自動で指定のHPまで回復アイテムを使用してくれる
大変便利なものではあったが、運営がツールに対する見解を公表した為
消滅した外部ツールでもある。
「魔法ってディレイがないんだよねー。
つまりそれだけに集中して連射すると
まぁ痛いは痛いんだけどさ、最終的には
無傷で居られた訳なんだよね……。」
『マスター、貴方馬鹿ですか!?
それ心臓破裂したら終わりじゃないですか!!』
「そう?成功したんだし?
これはこれで良いと思うんだけどなぁ……。」
『良い訳無いじゃないですか!!
何を馬鹿な事を相談も無く始めてるんですか!!』
「まぁまぁ、とりあえずあの処理が先だよね。」
私が視線を向けると、ビスケッティとやらは
無理矢理身体を起こし、まっすぐに走る事も出来ず
フラフラと走り、私から遠ざかろうとした。
「いや、逃がす訳ないでしょ?」
私はゴリライアット・ショットガンを出し
ビスケッティへと撃った。
すぐにフォアエンドを引き、そして気絶が
解除されるのに合わせ、再び撃ち
徐々に距離を詰めていったのです。
「ひ………あ゛………がぁ………。」
「んー、なんか違うなぁ……。
さっきまで色々と宣っていた筈なのに?
『ひ』とか『あ゛』とか『がぁ』とかじゃなくて色々言ってたよね?
ああ、そうだ。思い出したわ。死ね。」
そう私は言い放ち、ショットガンを1発。
気絶が解除された所にもう1発。
「死ね。」
そしてそれを次々と続けていく。
「死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。
死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。
死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。……。」
「わぶっ……ばぉ………ぁ゛はっ……わ゜ぎゅ……。」
「何言ってるか解んないから死ね。」
「あ゛……がぁ……。」
「むかつくから死ね。」
死ね、と言うワードに合わせてショットガンを撃つ。
「飽きた………。」
「あ゛………ぁうぁ……………。」
何やらとんでもなく酷いものが出来た。
つーか、こいつ女じゃなくて、やっぱ男の娘……。
いや、これ多分おっさん娘って言った方が良いかもね。
化粧が下地とかじゃなくてほぼ仮面状態。
完全に化粧がバリバリに「割れて」むさいおっさん顔がでてきたし……。
色々な体液から、色々な物駄々洩れてるし……。
最早、女性要素が欠片も見当たらない。
顔は顎が歪んで、全身自らの血と
地面の土色泥色で、大体の出せるものは
全部出した、って感じ?
私ですらバイザーを閉めてても
嫌悪感しか懐けない程の状態へとビスケッティおじさんは変わった。
まぁ耐えるのも大変だろうからと
指折り数える代わりに、全ての指を折ってあげた。
「嗚呼、みっともない……。
殺しに意気揚々とやってきて、這いつくばってでも
帰っていこうとする、というか逃げようとする
その根性だけは認めてあげるよ。」
何故……。
何故、私がこんなガキに……。
私は……双魚宮のビスケッティ……。
聖道十二宮神が1人……。
すべてこのガキが……。
我らは母なる核心なる
この世界の12の聖遺物を体内に宿した存在……。
全ては聖王様の為に、これまで尽くしてきた。
しかし唐突に神殿の秘密が世界に露呈した。
これもあの憎たらしいウィンガード共の仕業。
そう思っていた。
しかし聖王様は、これはウィンガードの仕業であるものの
その根源たる存在をすぐに探し当てた。
それがこのゴリラとかいう猿だ。
中身はチビガキだと聞いていた。
そして今はまだ強くはない、と……。
神殿を軸とし、各国に混乱を招き
懐柔した者達による、暴動、乗っ取り。
そんな私の発案があっという間に崩され
我らオラクル聖王国は今や多くの国から敵対された。
その落ちた私の価値を払拭すべき簡単な任務。
聖王様は私を想い、その責を根源、原因、元凶たる
このゴリラとやらを殺す事で許してくれると仰った……。
だというのに……。
私は何をしているのだろうか……。
こんな簡単な事を……。
私の攻撃を受け、その素早さについてきた。
しかしほんの僅か、ちょっと力を籠めただけで
すぐについてこられなくなった。
本当に弱い、弱すぎる……。
こんなチビガキに神殿を潰され、各国を
我らが聖王様の為に捧げるつもりが……。
我らのような者達に、聖遺物と言う国家の重要機密を
くださった聖王様の為ならば……。
我らはどんな事でもやりとげる、やりとげねばならない……。
だというのに、たった1発。
たった1発で私がここまでにされるなど……。
あってはならない……。
我らが死ぬ事は無い。
例えこの身が朽ちようと、我らは決して死なない。
それがこの聖遺物の力なのだから。
聖遺物である母なる核心は
決して滅びない。
出直せば……今は惨めな姿だとしても……。
出直せばこの程度のチビガキに負けはしない……。
今度こそ、今度こそ油断1つ無く
徹底的に壊滅的に私の気が済むまま……。
地獄と言う地獄を見せてやる……………。
だから……。
お・ぼ・え・て・ろ……。
「私のこの手がゴリゴリ咆える!」
何かが聞こえた。
振り向けば、あのチビガキの手が……。
なんだあの手は……銀色に輝いている……?
「母なる核心を潰せとウホウホ哮ける!」
か……か……輝きが増した!?
「覆滅っ!!Gデストロイ!!」】」
あ……………。
私はビスケッティの背中を右手で貫いた。
貫いた先の右手には「母なる核心」。
ビスケッティの体内にあったそれを掴んでいる。
よかった……睾丸じゃなくて……。
おっさんと知って、何気にそこが一番の心配どころだったんだよね……。
「あ………わた……あた………。」
「これはあんたのものじゃない。
これを悪用するデメリットをあんたが知ってるかは知らない。
だけど最後に1つだけ良い事教えてあげるよ。
初志貫徹、って言葉があるんだよ。
初志は思い立った時の最初の志。
貫徹はやり通す、貫き通す事!
だから言っただろう!
あんたにだけは負ける気がしないってね!!」
「や……やめ……。」
「ロアー・エンド!!」
私は最終詠唱と共に「母なる核心」を
粉砕すべく、一気に握りつぶした。
母なる核心ガタガタと私の手の中で
震え、抵抗するようだったけど最早手遅れ。
一気に握った手の中でパン!と弾け飛んだのです。
ビスケッティはサラサラと砂のように崩れ
私の手の中の母なる核心は
光の砂のように、空へと風によって運ばれ
そして消えていったのです……。
「ところで聖道十二宮神って何?」
『今更ですか!?
……聞いておけば良かったですね……。』
そしてこの日、世界のどこかで
ビスケッティの死と共に、7つの命が同時に消えた………。
【ゴリラアーマーがスキルポイント17を獲得しました。】
スキルポイント合計:28
残りの核心 あと90個。
残りの母なる核心 あと11個。
邪神の復活まであと3700年?
星5点満点で「面白い」や「面白くない」と
つけていただけると、作者が一喜一憂します!