第8話 G、食事に困る。
「バナナ飽きた……。」
私の現在の食事事情。
朝食がバナナと水。
昼食がバナナと水。
夕食がバナナと水。
間食もバナナと水。
「おかしいよね!?ゴリラってバナナしか食べない訳じゃないよね!?」
『むしろ動物園のゴリラしかバナナは食べません。』
「なんですと!?」
ゴリラの生息地にはそもそもバナナは生らないらしく
野生のバナナは食べない、と言うより食べられないのだとか。
『基本的にゴリラは植物食傾向が強い雑食に分類されます。
果実、植物の葉に芽に樹皮や根などの繊維質も取りますし
アリやシロアリなどの昆虫も食べます。
食糞も行いますが、これは摂取や消化されていない食物の栄養を
再吸収する為であり、ゴリラでなくともウサギやチンパンジーなども
同じ理由で食糞を行います。』
「すみません、私ゴリラではなく人間なんで
私が食べられるものベースで話をしてもらって良いですかね?」
『あとは土も食べます。』
「食土する人は非常に稀だからね!?
世界的には居るけど、私は食べないから!」
動物園ベースであれば果物としてバナナ、リンゴ、オレンジ、ブドウ、パイナップル等。
野菜はキャベツ、トマト、ニンジン、サツマイモ、白菜等。
他にも食パン、ゆで卵等も食べるほか、人間の赤ちゃん用ミルクが
与えられる事もあるのだとか。
他にもタケノコ、セロリ、アザミ、グレープフルーツ
草や木の葉(イタリアンライグラス・牧草)、ブロッコリー、キャベツ、小松菜
キュウリ、インゲン豆、トウモロコシ、ヨーグルト、プチトマト、煮干し
ピーナッツ、レーズン、ほうれん草等々。
『このような感じに基本は菜食と言って良いでしょう。
動物性のものに関してはほぼアリから摂取しているのです。
また変わった所で腐った木材も食べます。』
「なんでまた腐った木材……。」
『ナトリウム、つまり塩です。ゴリラが必要とする大半の塩は
そこから摂取しているのです。
つまり食木と言う行動もキチンと理由があっての事です。』
「なるほど……で、私の食事上の改善に関係あるかね?」
『頑張れば無限〇〇としてひらめく可能性はありますが
問題は一切肉や魚は摂取しません。
下手に摂取すればお腹を下すだけではなく、リウマチの原因となったりと
ゴリラは繊細な生き物なのです。』
「私のお腹も繊細なんで、バナナだけと言うのは困るんだけど……。」
『バナナは甘いものが好きなので仕方ありません。
マスターのそれは繊細さが理由ではなくただの「飽きだと」
自ら言いましたよね?』
「で、私はバナナと水しか摂取していないんだけど?
ゴリラでもこれだけで生きていけるとお思いで?」
『マスターの食事情を支援する必要性を感じないのですが?』
「動物性たんぱく質や脂質は必要だと思うのだけど?」
『では頑張って探しましょうか』
「ご都合主義!ご都合主義さんはいらっしゃいませんか!?」
『そんな都合の良い事は創作物の中だけでお腹一杯なのでは?』
昔、読んでいてそんな事を口走った事もあったけど
それは他人事、絵空事だからこそ言えた事であって……。
「自分の身に降りかかるとなりふり構わない訳ですよ……。
何しろバナナの甘さがそろそろ
気持ち悪さに変わり始めてるからさ……。」
『ならG虐めではなく
可食可能な魔物狩りにでも移行しましょうか』
「どうやって肉だけ取り出すの?」
『魚なら焼けば良いのでは?』
「火は……?」
『……………。』
「……………なんでこんな所で詰まるの!?」
『そもそもゴリラは加熱したものを食べる食習慣が
存在しませんから……。』
「ゴリラを理由にいつまでも逃げられると本当に思ってる?」
『イェス・マム!』
ニクジュバンニと揉めていても解決にならないので
とりあえず肉や魚を入手する事。
それから火をどうするかを考える事にしたのです。
森を駆け、可食可能な魔物を探していると
それっぽい魔物を見つけるも
神様はまたしても私に難題をつきつけるつもりなのだろうか。
『中々見られない稀有な光景ですね。』
「あの豚頭人体ってオークってやつだよね?」
『半分当たりで半分外れです。』
「……………?
じゃあゴリラ鑑定魔法で……。」
見た目はそっくりで、どう見てもオーク同士が争っている。
そんな光景は、ニクジュバンニの言う通りで
半分がオークだった。
そしてもう半分はオークでは無かったのです。
「オークビッツ……?
〇ークビッツの間違いでは?」
『マスター、それではどっちも同じものになってしまいます。
せめてポー〇ビッツと言うべきです。
あとオークビッツは魔物のオーク種ではなく獣人の一種です。』
オークが豚頭人身の魔物であるのに対し
オークビッツ族は豚頭人体身の獣人。
「違いが判らない……。」
『ゴリラを大猩猩と言うようなものです。』
「もっと解らなくなった!?」
この世界にもゴリラが獣として少数居るらしい。
それと同時に魔物としてのゴリラは大猩猩と呼ばれるのだとか。
ちなみにオランウータンが獣として
魔物としては猩猩と呼ばれているように
似ているけど非なる者が居るのだとか。
違いは魔物は濃くなった魔素からも生まれれば
子を成して増えもするけど
獣は普通に子を成して増える以外なく
獣人は必ず二足歩行等の人に近い特徴を持っている上で
子を成して増える事もあると同時に
言語を理解し、喋る事が可能なのが獣人なのだそうだ。
但しオーク語と呼ばれる言語があるらしく
どちらもオーク語を理解した上で
オークビッツ族は世界共通語のアース語と呼ばれる
言語も理解出来ると言う違いある、とするの正確なのだとか。
ゴリラの獣人も居るのだとかなんとか。
「大抵の創作物だと獣人の扱いが酷いとかあるけど?」
『残念ながら人族至上主義国家などではそのような事が多く
人族と獣人にはまだまだ壁が存在しているようです。』
「じゃあ次、助けると碌な事にならないと思う?」
『オークビッツ族はオークのがらくた、とも呼ばれ
オークからも下に見られる傾向があるようです。
オークビッツ族は自分達は魔物ではなく
獣人だと言う「気高き誇り」がある種族とされています。』
「どっちもどっちで面倒臭い連中だね!?」
面倒臭い、と思いつつもニクジュバンニ曰く
人の服に近いものを着ている4人だけがオークビッツ族で
残りの30程のオークは魔物のオークだとか。
「まぁ、あれじゃどちらかと言うと
弱い者虐めに近いよね……。」
理由は知らないけど、流石に戦力差がありすぎるのと
見ているともうオークビッツ族の方は
戦えず、殆ど大勢決しているにも係わらず
殺さないように痛めつけている感じがしてならなかった。
「じゃ、ちょっとゴリラとして参加しますかね……。」
私はその戦いに横入りする事を決めたのです。
「そのお肉!私がいただく!!」
『面倒臭さよりお肉を選びますか……。』
「当然!」
それはブランド豚のような美味しさ。
ゴリラ鑑定による表示に、私は一気に距離を詰めたのです。
星5点満点で「面白い」や「面白くない」と
つけていただけると、作者が一喜一憂します!