第79話 G と Dランク昇級試験 特別第三試験
「はい!では特別な試験ですので
本来の第三試験とは違いますが行いますよ!!」
「えっと、あの………。」
「なんでしょうか、リラさん。」
「なんでこんな事になっているんですかね?」
「それはこの8人が納得出来ない、と言うのですから。
まぁ納得させるつもりはなかったのですけど
不満を持ったままでいるというのもあれですから?
折角なので実戦形式で冒険者の実力、とやらを
私が見てみたくなったのですよ。」
「……………解せないわー……。」
その特別な第三試験、とやら。
私 vs 他の8人による実戦形式の模擬戦。
しかも特別ルール採用。
私は私の足元に描かれた円の中から一切出てはいけない。
8人はそれぞれ最も得意とする一撃を打ち込む。
そして実力を示せれば
第二試験の失格を撤回する、などという
私にとって何一つメリットとならないものなのです。
「なんだ、簡単じゃねぇか。俺からいくぜ!」
先程から文句ばっかり言っている男が
剣をもって前に出てきた。
「いくぜ!力斬!!」
剣を両手で握って、上から下へと振り下ろし
圧と呼ばれる臍の下、丹田から力を振り絞って
剣へと纏わせ、それを剣撃に乗せると
同時にニクジュバンニが説明した剣技能。
まぁその剣がまた体格にあってないと言うか。
どう見ても重量が重すぎて、むしろ剣に振り回されている
ロングソードがひょろひょろの振り下ろされるのを
待つまでも無く、私は手で受け止めた。
「ショボい……。」
「なんだと!?」
「いえ、間違ってませんよ。
そもそも剣をそのまま手で掴まれるなど
それだけの実力差があると言う事でしょう。
それが貴方の実力の全てだと言うなら
Dランクへの昇級は考え直した方が良いと思いますよ?」
スニングさんの辛辣な言葉だけど、事実は事実と
受け止めたようで、大人しく引き下がっていった。
「なら私ね。」
うっわ……魔法かぁ……。
しかも氷属性魔法だね。
えらい巨大な氷柱が浮いてるね……。
「氷槍!」
大きくするのに魔力をかなり注いだのかなぁ……。
むしろ大きすぎてあまり速度が出てない気もするんだけど。
私はアイスランスとやらが身体に当たる前に
ぶん殴って、そのまま地面へと叩きつけた。
それと同時にアイスランスとやらはあっさりと砕けた。
「大きくする事に魔力を籠めすぎですね。
大きくするほど、飛んでいく速度が落ちるのですから
氷槍は出来るだけ細く長くして
撃ち出す方が、お勧めですよ?」
「…………なんなのよ、この女!
氷槍がこんなに簡単に
落とせる訳無いでしょ!!
絶対何かインチキしてるでしょ!!」
「インチキって言ってもねぇ……。
跳んでくるのが遅すぎて、簡単に殴れたんだけど?」
「そんな訳無いでしょ!?」
「私も遅いと思いますよ?
氷槍は空気を裂くように進ませるのが
最適とされているのに、形状が太すぎます。
重量が重くなった分、威力は上がっているのでしょうが
その分速度が落ちている上に、形状の悪さも相まって
さらに速度が落ちています。
この程度の氷槍ではフォレストウルフなどなら
8割方通用しません。これが最適だと思ったのならば
少々自己評価が高すぎですね。」
うわぁ……言いたい放題だね、スニングさん。
「ちなみにリラさんは第一試験でビッグバイパーを単独討伐しています。」
「ビッグバイパー!?」
「Bランク魔物じゃねぇか……。」
いや、それやったのミニゴリラだから。
一応、分身体ではあるけど私本人がやった訳では……。
「それを踏まえて、挑戦したい方はどうぞ。」
「なら俺の番だな……。」
嗚呼、受験者の中で最もムキムキな人が出てきた。
絶対格闘系だよね、腕に手甲みたいなのつけてるし……。
「ぉあああああああああああああ!!」
なんか出ちゃいけないものが出てる!?
『圧です、気とかオーラとも呼ばれますが
圧と呼ぶのが一般的です。』
なんかス〇パ〇サイヤ人みたいになってるんだけど!?
まぁハゲてて髪の毛は逆立ってないけどさ。
代わりに髭が逆立ってるし!?
『逆立ちたいお年頃なのでは?
鑑定では17だそうですし。』
エー……見た目年上に見える感じなんだけど?
『元46歳が何か言いましたか?』
いえ、何も……。
「いくぞぉ!」
そういって私に向かって走り込んできた
ムキムキな男性の顔がかなり怖い……。
「豪腕撃!!」
まさかのラリアット!?
いや、これはアックスボンバー!!
いわゆるホーガン・ハンマーってやつだ!!
『良かったですね、プロレス中継を見ていた甲斐があって。』
違う!どっちかと言うと筋肉見たさに見てただけだからね!?
まぁでもラリアット系の返しと言えば
身体を屈めて躱す、は弾き飛ばされる可能性があるから悪手。
腕を取るか、殴られる前に腕を殴るかの2択かな……。
っていうか筋肉重そうだね、かなりドタドタと
走っている感じしかしないよ……。
脇固め……円から出ちゃうね……。
16文キック、って私の場合は9文キックになるし
私、足長くないからなぁ……。
素直にあのアックスボンバーそのものを
パンチングで打ち返す!
「ごぉ、りぃ、らぁ」
私はパンチの為に、右手を引いて力を溜め込んだ。
「ふっく!」
男のアックスボンバーの肘へと
私の右拳がフックで入った。
「すとれぇぇぇぇと!!」
そのまま身体を捻り返して、左拳のストレートを
顔面へと叩き込むと、男は縦に回転するように吹き飛び
そのまま地面を何度か跳ね、うつ伏せに倒れた。
「いやぁ、良いですねぇ!
魔法も徒手空拳も全て拳で返すだなんて。」
ただスニングさんの言葉には続きがあった。
周りに聞こえないであろう程に小さくボソッと。
「流石、厄災殺しですね……。」と。
まぁ、総本部から来たって事だから
知っててもおかしくないのかな?
「さて、まだ挑もうと言う方はいらっしゃいますか?
ちなみに武器などが破壊されても自己責任ですからね?
決して冒険者ギルドは弁済等しませんよ?」
ちゃっかり責任だけは逃れるつもりなのと
あくまで冒険者ギルドは、と
私を含めてない辺りに悪意を感じた。
「いないですか?いませんか?」
流石に3人挑んで、誰も掠りもしないのだから
やろうなんて人も出てこないようだ。
「では、これにて特別の第三試験は終了です。
本来、このDランク昇級試験は
第三試験までの予定でしたので、これにて
Dランク昇級試験は終了、となります。」
ん?終了?
「おめでとうございます!
リラさん、そしてマルクさん、ベルさん、そして
気絶しているようですがゴットンさん。
合計4名がDランク昇級試験の合格者です!!」
「「「「「「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」」」」」」
こうして私達は1時間半くらい前のデジャヴを感じた。
星5点満点で「面白い」や「面白くない」と
つけていただけると、作者が一喜一憂します!