第66話 G、魚を釣る?
「と、言う事でまたもや大きくて流れの速い川だね……。」
『と、言う事でと言われても
かなり前の話ですからね?
もう川に流されるとか勘弁ですからね?』
「いや、今日は食べられる魚でも手に入れようと思って。」
『ハリーバードの港町でとっくに腐っていても
おかしくない程には大量に買いましたよね?』
「海の魚と川の魚は別じゃない?」
『そうなんですか?』
「長野県生まれだから、スーパーのつ〇やとか行ったら
普通に鯉とか鮎とか虹鱒とか売ってたし?
むしろ海の魚なんて船上で塩漬した鮭位しか
見た覚えも無いし?」
『マスター、鯉嫌いですよね?』
「あれは父が目の前の千曲川で釣ってきたのを
泥抜きも碌にしないで調理してたからだよ……。
虹鱒とかは大好きだよ?
まぁ釣りとかは竿も無いから、こういう時は
アブラマシマスと同じようにすれば良いだけだよね?」
私は川に手を入れた。
これに多分魚が噛み付いて……………。
『マスター、かれこれ1時間は経過してますが……。』
「おっかしいなぁ……。
川って魔物も居るよね?なんで噛み付いてこないのかな??」
『そのニンジャフォームに問題があるのでは?』
「………まさか見つかり難いとか?マサカー!」
『念の為、ベーシックフォームでやってみたらいかがですか?』
ニクジュバンニの助言に従って
ベーシックフォームになって川に手を入れてみる。
「40秒で食いつかれるとは思わなかったよ………。」
『やはりニンジャフォームが原因ではないかと。
その魚はクサイフグですね。』
「臭いフグ??」
臭いフグ、ではなくクサイフグ。
フグ科トラフグ属で、クサフグと呼ばれるフグの変異種。
川魚ではなく遡上する海魚だそうです。
『食用になりますが、魚臭さが強く有毒です。』
「はい、リリース!」
すぐに手を川に入れると
今度は指1本1本に1匹づつ魚が食いついていた。
『チョウオオガタスジシマドジョウですね。
骨だらけで、食べる所が殆ど無い上
そもそも絶滅危惧種です。』
「はい、リリース!」
『判断が早いですね。』
「絶滅危惧種かどうか以前に食べる所が殆ど無い時点で
獲る意味が無さすぎるからね。
…………ってなんかでかいのが食いついた!!
っていうか超重いんだけど!?」
『なんでしょうね、マスターが重いと感じる程
巨大な魚とは……。』
私が腕を懸命に川から引っ張り出すと………。
「なんでカツオが……。」
何故かカツオが獲れた……。
「カツオって回遊魚で遡上しないんじゃなかったっけ……。」
『マスター、それカツオでは無いようですよ?』
「え?」
腕に食いついていたカツオだと思っていた魚は
そのまま川から上がってきたのです。
カツオが丸々1匹、首から上の頭の部分になっていて
その下は人の身体でしかも何故か白い褌一丁……。
「………魚人?」
『魚人は魚頭人身の事を言うのではなく
人型の魚を指す言葉です。
首から下だけ人間なんて魚人は居ません。』
ゴリラ鑑定すると種族が「魚人?」と出た。
何故疑問符がついているのだろうか。
「なぁ、嬢ちゃん。」
「しゃ、喋ったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「何や、魚が喋ったらあかんのか?」
「い、いえ……。
そういう訳では……。」
「まぁええわ……。
で、焼いて食うんか?それとも煮るんか?」
「………は?」
「わいを釣り上げたんやから、食うんやろ?
なら焼いて食うか、煮て食うかやないんか?」
『嫌な予感しかしません、リリースした方が良いのでは……。』
私もそう思う。
「今、さっさとリリースせな。とか思ったん違うん?
まさか食いもしないもん、釣り上げたんちゃうんよな?
嬢ちゃん、命っつーもんはな?無駄にしたらあかんのやで?
『ふぃっしんぐすぽーつ』つーんか?
あらあかん。針が刺さっただけで傷負ってるんやで?
食べもんは食う分だけありがたくいただいて
無駄な殺生とかしたらあかんのやで?」
「ウダウダ言わないでさっさとリリースされろ。」
私は殴ってそのまま川の中へと落とすと
何かバタフライで川の流れに逆らいながら戻ってきた。
「何すんねん!」
「私は川に腕を入れただけで、釣っていない。
食いついたのはあんた。
むしろ怪我するのはこっちだけなんでリリースするんだよ。
っていうか既に火傷してる気分だわ……。」
「んな殺生な!!」
「仕方ないね、そんなに言うなら調理してあげるよ……。」
私は鋼鉄製樽にアブラマシマスの脂を入れ
そこに謎の魚人?を入れ、下から火を付けた。
「おっ、揚げるんか?揚げるんやな?」
「じゃあこれ持って?」
「なんやこの端に火の付いた薪は……。」
「まぁいいからいいから。」
そして私は鋼鉄製樽の下についた火を
ジーっと見つめ続けた。
「嬢ちゃん?」
「……………………。」
「嬢ちゃん?そろそろカラっと揚がった時間ちゃうかな?」
「なんでカラっと揚がった魚が喋ってるのさ……。
まだまだ生って事でしょ?」
「…………………せやな。」
魚人が油でグツグツされている間に
私は川にまた腕を突っ込んで
川魚を採りつつ、火が耐えないよう
薪を追加し、グツグツし続けた。
「なんかニジマスっぽいね………レインボーマス?」
『七色に光るマスですね、味はニジマスそのものです。』
「やった!早速塩焼き塩焼き……。」
私は内臓を取り出し、お腹につっかえ棒のようなものを入れ
木で作った串に刺して、塩をして焼きつつ
レインボーマスがまた採れないかチャレンジし続けた。
「なぁ、嬢ちゃん。
レインボーマスとわい、両方食べられるんか?」
「その前にあんた、いつ揚がるのかね?
川魚を生で食べたら寄生虫が怖いじゃない……。」
「…………………せやな。」
その日、レインボーマスが大量に獲れた。
1匹が大きく、食べ応えがあったので
1匹食べるのが限界で、残りはゴリラコンテナに仕舞った。
「なぁ、嬢ちゃん。
どうみてももう腹一杯やな?
わい、食べないつもりか??」
「そう思ったらいち早く揚がる努力の1つも
してみたらどう?」
「…………………せやな。」
そして私が見ていると
魚人?が持っていた薪の火が消えた。
「はい、おわりー!」
「…………………なんやて!?
まだ全然揚がっておらんのやで!!」
「いいんだよ、ただの〇塾名物の油風呂だから。」
「…………………なんやてぇ!?」
私はさっとアブラマシマスの脂が煮えたぎった鋼鉄製樽と
火のついた薪を収納し、ニンジャフォームになって
さっさとその場から逃げたのです。
『あれでよかったんですかね?』
「あれ地球人だよね?」
『なんでそう思ったんです?』
「そこら中の国が絶えず戦争していて魔物も多いし
ましてや水場にすら魔物も出るって世界に
『フィッシングスポーツ』なんて概念があるとは思えない。
あと『リリース』と言う概念もあるとは思えない。
だけどあの魚人?はすんなり受け入れてたから
多分そうかな、と……。
なんで死にたがってるのかは知らないけどさ……。」
『その前にあの油風呂?とかで火傷もしてなければ
手に持っていた薪でも火傷してませんでしたね。』
「それとあの似非関西弁っぽいのがね。
厄介事は極力避けたいんだよ……。」
「どこいったんや!!
釣り上げといて捨ててくとかどういう了見や!?
世界には食べられない子供すらおるんやで!?」
夜の間中、私はニンジャフォームで木の上で寝ていたけど
一晩中、あの魚人?とやらは大声で私を探し回ってて
うるさくて寝られなかった……。
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