第65話 G、新たな土地を目指す。
『うう………ぐすっ……。』
「解ったから泣くなぁ!!」
王都デンドルドアから旅立って暫くして。
ニクジュバンニが「また」泣き始めた。
『えぐっ……えぐっ……ゴリラが、ゴリラがぁ……。』
「そんなに普通の服を私が着るのが嫌とか
どういう了見さね!!」
『よく考えてください……。』
「何を?」
『私はゴリラアーマーに宿っているのですよ?』
「知ってる。」
『そして常にマスターとほぼ一心同体のようなものですよ!?』
「それは超否定したい。
ゴリラアーマーに宿ってるってだけで
私の身体は私だからね?」
『つまりマスターが普通の服を着ると言う事は!
すなわち私も普通の服を着させられていると言う事なのですよ!?!?』
「あんたは溺愛されてる犬かっ!!」
『犬に服など不要であり、それは飼い主のエゴなのと同じで
ゴリラに服など不要なのです!!
それを、それを……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!』
「解った解った!ライトフォームにするから!
それで妥協して!?」
『………ベーシックが良いです…チラ…。』
「却下、ライトフォームね。」
『えぐっ……えぐっ……。』
「これゴリラアーマーでしょ!?ライトなだけで!
一般的に売られている服じゃないからね!?」
『仕方ないですね、1日1時間なら我慢します。』
「それただの名人の閃きだし、科学的根拠も無いからね!?
時間を区切るってのは間違ってないと思うけど
1時間は絶対短いよ!?
永遠にフ〇ミコン版のフ〇イナルフ〇ンタジーⅢとか
クリア出来なくない!?私2時間以上掛かったよ!?」
『DS版では駄目ですか?』
「あれは完全な別ゲーだと認識してる。」
『でも一番好きなのは?』
「DSのF〇TA2、プレイ時間カウント超えても遊び続けたし
一部の入手制限アイテム以外ALL99とかまでやり続けたし
セーブ出来なくなってソフト使い潰したと思って
中古で買い直したくらいハマった。
ちゃんと考えていないと羅月伝武とか初期で取れなくて
二刀流が……」
するとファンファーレが……。
【リラ は ゴリラ武器「ゴリ羅月伝武」を てにいれた!】
【新フォーム「ニンジャフォーム」が誕生しました。】
「ふぁっ!?」
『どこから手に入れたのでしょうか……。』
「さぁ、そう言えば過去ログに何か無かった?
謁見の時にファンファーレが鳴った気がするんだけど……。」
『何かありますね、再表示してみましょう。』】
【ゴリラアーマーがゴリラ能力「無限ゴリラ印の……」をひらめきました】
『また変な能力ですね……。
この無限ゴリラ印とやらはマニュアルが存在しません。』
「えー……じゃあ武器と新フォームの方は?」
『フォームの方もマニュアルがありませんが
武器の方にはありました。』
「お?なんてなんて?」
『装備する事でゴリラ能力「二刀流」が使えるそうです。』
「ゲームじゃないんだから、それぞれの手に武器を持ったら
二刀流だよね……?」
『装備し続ける事でゴリラ能力「二刀流」を覚えるそうです。』
「うん、だから能力じゃなくても出来る事だよね?
他に何か無いの?」
『新フォーム「ニンジャフォーム」を覚えるそうです。』
「何故、武器から……。で、あとは?」
『以上です。』
「ゴミみたいな忍者刀だよね!?」
『え?普通に武器として使えますよね?』
あれ?
そういえばそうだ。
これまでのゴリラ武器とかまともに使えないものばかりだったけど
むしろ極々普通の武器。
「あれ、もしかして初めてまともな武器手に入れた?」
『そういう事になります。』
無限ゴリラ印とやらとニンジャフォームについては
とりあえず解らないものにやたらと触れない、触れると危険な
可能性もあると言う事で一旦保留。
『つまり私もベーシックフォームが一番好きって事なのです!!』
「唐突に話し戻したね……。つまり私が〇FTA2が好きなのを知っていて
エンドレスで遊べないデビルサバイバ〇2を勧めている?」
『そもそもメーカーが違いますよね!?』
「で、私の旅立ちをこんな話で潰すのかね?」
『なら、ゴリ羅月伝武以外の検証をするのはいかがでしょうか?』
「うーん、その前に『羅月伝武』って何て読むの?
公式的にルビがあった試しが記憶に無いんだけど……。
先頭はラ、だよね?」
『マスターの知識に無いものは解りません。』
「まぁとりあえず無限ゴリラ印の!!」
【ゴリラとはっ! 最後まで、決して……諦めない者のことです!】
「……………。」
『……………。』
「何このゲーム臭い表示……。」
『発動条件を満たしていないのでは……?』
数分頑張ったけど、何も起きなかったので
今度はニンジャフォームとやらを試してみた。
「何かユーチューバーみたいになり始めてない?」
『市場でお会計前に果物を食べて
洋裁店で偽物だと叫んでみたらいかがですか?』
「それで選挙に出て、ってこの世界に選挙無いよね!?大半王政だし!!
民主主義な国あるのかな!?そもそも誰が動画見るのかな!?」
『目覚めてから少々調子が悪いようでしたけど
絶好調なようで安心しました。』
「雑談が私のバロメーターにされるのは
何か違うと思うけど、これもうただのゴリラが
真っ黒い布に包まれてるだけじゃない?」
ニンジャフォーム、と言う名の
目の部分以外が全て真っ黒い布に包まれる。
まぁ、忍者服なんだろうけどさ……。
『何か違いはありますか?』
「うーん……。」
私は近くの木を殴ったり、飛び跳ねたり
走り回ったりした結果……。
「全体的に素早さが勝ってるね、力が落ちてる感じがする。
あと非常に高くジャンプ出来たり、ナックルウォーキングとか
結構早くない?」
『垂直跳びは8メートルくらいは飛び上がってましたから
10倍くらいでしょうか。ナックルウォーキングは
普通快速並みの速度ですよ?』
「私、電車は守備範囲外だから……。」
『え?このマスターの記憶にあるダイヤの〇と言うのは……。』
「ダイヤ違い!野球の方!!
盗塁とか1分刻みで走るとかゲームになんないからね!?」
『やっぱり絶好調ですね、ちなみに時速約80キロです。
早駆けの馬くらいでしょうか。』
「殆ど忍者服だかの布で覆われててゴリラに見えないけど??」
『許容範囲です、折角なので海でも見に行く勢いで
大陸の端まで行ってみるのはどうでしょう?』
「え?ハリーバードの港町まで戻るの……?」
『南ではなく、東か西に進めば良いのでは?
敢えて北でも良いと思いますけど
恐らく碌な事にならないと思われます。』
「じゃあ東行こうか……。」
私は東へと素早く駆け出したのです。
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