第64話 G、前に進む。
「つぅ事だ……。」
「またなんつー面倒の種を……。」
この場にわざわざやってきた理由。
それは私の登録証の更新、なのだそうだ。
その為に副ギルドマスターのメロディさんが
手に小さめの機械っぽいものを持ってきていた。
まずは最優先事項として
サンディング王国ホーキテ支部のギルドマスター、マルッスさんが
私に依頼したゴブリンの調査依頼についての処理。
これによってまず私はEランクからDランク昇級試験の
推薦を得る処理をする事。
その次にゴブリン・マザー・クイーン討伐について。
これは依頼では無いので、特に報酬が出る訳では無いけど
厄災を倒すような冒険者をいつまでもEランクにしておく訳にはいかないと
Dランク昇級試験を受けた後、ハンナギルドマスターの権限で
Cランクまでの昇級、それと同時にBランク昇級試験の推薦を
この場で登録証に記録する事。
そして最後がこの登録証に
サンディング王国のサンディング王
ウィンガード王国のウィンガード王
この2人の後見情報を記録する事の3つが理由だとか。
「1つ目はまぁ実際マルッスギルドマスターから
直接受けた依頼だから解るよ?
2つ目のは何ですかね??」
「お前さん、厄災をたった2発で倒しておいて
そりゃねぇだろ……。
そんな奴がまだ初級のEランクとか示しがつかねぇだろ?」
そうハンナギルドマスターが言うけど、それは違う気がする。
「そりゃただの冒険者ギルドの都合、ってやつじゃないの?」
「そうだ。お前さん、冒険者だろうが。
ちったぁこっちの都合ってもんを考えてくれよ。
最初からオーガは持ち込むし、表向き全てウィンガード王国が
倒した、って事になってるから冒険者ギルドとしちゃあ
その損失の穴埋めに四苦八苦してるっつーのによ……。」
「何、損失って……。」
「私が説明します。
冒険者が単独で厄災級を倒したと言うのは
冒険者ギルドとしては本来は誇るべき事なのです。
それによって、リラさんには依頼が殺到し
冒険者ギルドも営利組織である以上
それによる仲介手数料、そして素材の買取、販売による
利益と言うものが生まれる訳です。
それを本来、国家とは関係の無い独立機関である
冒険者ギルドが例えウィンガード王国と言う
大国の依頼であったとしても表向き隠蔽すると言うのは
営利組織としては非常に不健全な状態なのです。」
「嗚呼、言っている事は良く解るよ……。
確かに冒険者が依頼を引き受けて、それを達成する事等で
利益を出さないと、職員さんのお給料も出せないからね……。」
「はい、しかし今回は特別な事情を鑑みた結果として
表立たせない事を総本部との会議の結果
決定したのです。」
「それと引き換えに、お前さんには是非とも
上級まで駆け上がってもらわないと困るんだよ。」
「損失ってそもそも厄災って冒険者ギルドが
対応するものなのですかね?」
「そういう場合も一応はある。
但し今回は厄災と言っても素材は無いし
何よりその討伐という最大の益が取れなかったんだ。
その分、他で補えってのが総本部の言い分だ。」
「悲しいかな、中間管理職……。」
「つぅ事でさっさとBランクまで上がって
ガンガン魔物倒して、素材をサクサク
解体所に持ち込んでくれ、って事だ!
解るだろ!!この苦労が!!」
「なんかマルッスさんみたいに
目の下に隈出来てますね……。」
「まぁ、一応冒険者ですから?
冒険者ギルドの益が、と言われれば
無縁な話でも無いだろうから、妥協したとして……。
最後の後見って何ですかね?」
「もしSランクに上がる場合は必ず王侯貴族1人以上の
後見が無いと上がれないんだよ。」
「へぇ……。」
「まぁそれとどっちかって言うと王侯の信用ってのがあるだけで
横暴横柄な貴族が、お前さんに何かしようとしても大抵避ける。
何しろ後見人がウィンガード王国と言う大国と
サンディング王国という中規模国だ。
お前さんに喧嘩を売るって事は、この2国に喧嘩を売るのと同義だ。」
「なんという虫除け結界状態……。」
面倒事から避けられそうな感じがしたので
それらを受け入れる事とした。
そしてその数日後。
私は王都デンドルドアを旅立つ事にした。
特別に北門から出してもらえた上に
ホーキテの町へと立ち寄る必要も無くなった事で
私は気ままな旅をする事としたのです。
北門を利用する事になったのは
どちらかと言えば出迎えに
ウィンガード王は来るし、ソニックさんにパーシヴァルさん
そして冒険者ギルドギルドマスターのハンナさんに
副ギルドマスターのメロディさんまで来る事になっていたからだった。
まぁ、それまでの間に少々王都のお高めなお洋服店などで
洋服を買ってもらったりだのと
たまにはゴリラアーマー以外を着ろ、と言われ
ゴリラアーマーを腕時計型にし、ごくごく普通?の
町娘スタイルで出発する、と言う
むしろこれこそが異世界だよね!?って感じを初めて味わったのでした。
少々ヒラヒラながらもドレスも着たし?
あ、なんでも私のサイズに合うものが
王女様とかの余りで沢山あったうちの1つだとかで
着られないものもいただきましたよ??
そしてリラが見えなくなるまで見送った北門では
ニヤケが止まらない人々が居た。
「行ったか……。
それにしちゃ、ハンナ。
お前ら、思った程損してねぇだろ?」
「何の事だい?」
「新種のゴブリンにレッドキャップの大群。
お前ら大量に持ってったじゃねぇか……。」
「何言ってるか解らないね。
そもそも王都の外側は冒険者が担当するって事で
お互い納得しただろ?」
「そりゃ違えねぇが、新種にレッドキャップと
それこそ数年分は余裕で稼いだだろ?
どの口が損失だなんて言うんだかな……。」
「そりゃウィンガード王も同じだろ?
Sランクの為の後見だの、貴族も避けると
まぁ間違いではない支援をしただろうが。
そもそも後見なんざ、ギルドマスターか国位しか
知る事ぁ出来ねぇんだからな。
それに後見につく以上、あのリラって子の行動は
逐一報告が上がる様になるんだ。
監視がそんなにしたかったか?」
「いや、ただありゃ少々間が抜けてる気がしてな。
他所で何かやらかしそうだからつけただけだ。」
「それにあんた、ウィンガード王貨渡しただろ……。
何枚くれてやったんだ?」
「……………1万枚だ。」
「……………メロディ!この王様、頭おかしいぞ!?」
「はて、今の相場であればウィンガード王貨1枚で
白金貨1万枚(1兆円)以上の価値はあるかと思われますが?」
「ウィンガード王貨なんて2万枚あったが
これまで100枚と使ってないからな。
そんな価値があるとは思わなかったぜ。
折角だから半分くれちまったよ。」
「やっぱこの王様頭おかしいぞ!?
1枚でも一生遊んで暮らせるんだぞ!?!?」
「良いのではないでしょうか。」
「メロディ!?」
「彼女に一般的な流通貨幣を渡せば
すぐにその価値に到って
恐らく受け取る事は無かったでしょう。
ウィンガード王貨、と言う流通量や信用に応じて
価値が変わるともなれば、基準を知らなければ
その価値が解らないのですから受け取るだろう。
と言うウィンガード王の考えか心意気かそれとも……。
感謝の気持ちなのではないですかね?」
「良い勘してるな、冒険者ギルドなんて辞めて
デンドルドア王城で働かねぇか?
今の10倍は出すぞ?」
「10倍っ!?その話、もっと詳しく……。」
「駄目だ!駄目だ!駄目だ!このデンドルドア本部は
メロディが居て持ってるんだ!!
居なくなったら収拾がつかなくなっちまうよ!」
「それはハンナギルマスが仕事を溜めに溜め
いつもサボってるからですよね?
丁度良い機会ではないですかね??」
「メロディ!そこをちょっと思いとどまってくれないか!?
なっ!給料なら見直すからよ!!」
「20倍出す。」
「20倍っ!?すぐにでも詳しく伺いたいです!!」
「やめてくれぇぇぇぇぇ!!
メロディを引き抜くな!!
デンドルドア本部が真面目に潰れてしまう!!」
ハンナの叫びがメロディに届いたのか。
それはいずれ知る事になるか、ならないか。
期待するだけなら貴方次第!!
【ゴリラアーマーがスキルポイント8を獲得しました。】
スキルポイント合計:11
残りの核心 あと97個。
邪神の復活まであと2900年?
星5点満点で「面白い」や「面白くない」と
つけていただけると、作者が一喜一憂します!




