表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結済】G-form-girl  作者: ボブ
第4章 ホーレルヒ王国編
59/178

第59話 駆けつけし黒きもの。前編

「てぇー!」


 ゴブリンクイーンが王城を破壊し

 地上へと現れて4日目。


 ウィンガード王国軍の士気は高かった。

 きっとこの先に勝利がある事。

 それだけを信じ、彼らは厄災と戦っていた。


 しかしそこには1つのミスが大きな被害へと変わる。



「9時からレッド4!」


「第二で補うぞ!」


「3時からレッド7!」


「そっちも第二で補え!」


「12時からからレッド9!」


「第二!」


「人数が足りません!」


 その声に、後ろから銃撃が鳴り響いた。


「お前らだけで戦ってんじゃねぇんだ!

 ちったぁ、後ろにも回せ!」


「すまん!」


「上から触手2!さらに3!」


 流石に手が足りない処では無かった。

 ゴブリンクイーンは24時間、休む事も無く

 戦い続けているにも係わらず

 日に日にその手数が増え続けていた。


 レッドキャップの数、触手の数。

 そしてついに更なる手数が現れた。


「12時!オーガです!」

「何だと!?」


 ただでさえ数が多く、手が足りない中

 巨大で力の強いオーガが現れた。


 その一撃は、防御を担当する第一騎士団を

 簡単に吹き飛ばした。


 そして返す腕で、大剣を持つ第二騎士団の攻撃を

 腕で受け止め、そして吹き飛ばした。


「さらに9時と3時、オーガです!」

「撤退だ、退くぞ!!」

「しかし部隊長!」

「やむを得ん!撤退が優先だ!!」


 オーガの攻撃に、すぐに起き上がれない。

 そんな騎士達が倒れたままの状況で

 撤退を判断した。


 しかし彼らを置いての撤退

 それが出来ない騎士が現れた。


「今、助けるぞ!!」


「待て!撤退だと言っているだろうが!!」


「仲間を見捨てて撤退など出来ません!」


 それはとても美談かもしれない。

 しかし戦いにおいて、それは撤退の為の人員が減り

 結果としてマイナスとして働く事もある。


 軍人とは言え、1枚岩でなかった

 ウィンガード王国軍の悪い部分が

 ここに来て、出てしまった形になった。


「馬鹿者が!!」

 助けに入った騎士は、倒れていた騎士諸共

 オーガによって、城壁の淵へと拳で叩きつけられ

 そのまま潰されてしまった。


「小隊長!!」


 そしてそれが負の連鎖を生み出した。

 僅かな気の逸れが生まれた所にレッドキャップが突っ込んでくる。

 切られ、削がれ、次々と騎士達の撤退は

 本来あるべき形から、大きく逸れ始めた。


 それが城壁に居た陸軍の瓦解の始まりとなった。

 次々と犠牲となっていく騎士達。

 その恐怖にある者は喚く様に我先にと逃げ出す。

 その恐怖は伝播していくのであった。


 空から攻撃している空竜近衛騎士団が

 地上に降りて支援するにはあまりにリスクが高く

 その混乱ぶりに手が出せずにいた。


 さらには魔導射手隊にもそれが伝播した。

 狂ったように魔導銃を手に、ところ構わず撃った事で

 味方を撃ち、それがさらに動揺を誘った。


 魔導銃は弾頭を撃ち出すのに魔力が使われているだけで

 実際は1発づつの弾を込める作業が必要な旧式を

 大半の者が用いていた。


 しかしごく僅か、精鋭とされる騎士達には

 弾頭を発射するものでは無く

 魔法そのものを発射する新式が与えられていた。


 魔力さえあれば、弾を込める作業が不要。

 その精鋭ですら混乱によって、味方を攻撃してしまう

 いわば同士討ち、フレンドリーファイアが起こり

 混乱に次ぐ混乱で、城壁上は収拾がつかなくなっていた。



 そこに大きな声が響き渡った。


「沈まれぇ!!」


 その言葉に、城壁上の騎士達は一斉に止まった。

 それと同時に、城壁の(へり)の上を素早く駆ける生き物がいた。


 グランドドラゴン。

 トカゲの魔物、ではあるがこの世界では陸竜と呼ばれ

 馬よりも速く駆ける事が出来て

 さらに体力も多く、長距離を駆け続けられる魔物。


 その上には揃いの黒い鎧の騎士達が騎乗しており

 城壁の(へり)を駆け、大きく飛び上がり

 殿(しんがり)となる部分へと飛び降りると

 手に持ったランスが素早くレッドキャップやオーガ、触手へと伸びていった。



「陸竜近衛騎士団!これより参戦する!」


 それはかつて、リラと対峙した男。

 陸竜近衛騎士団長、パーシヴァル率いる

 陸竜近衛騎士団だった。


 ソニックが率いる空竜近衛騎士団と対極の近衛隊で

 陸戦特化の精鋭部隊が駆けつけた事、そして

 パーシヴァルの声によって、正気を取り戻し

 城壁上はあっという間に流れが変わった。


「我らが先陣をきる!お前らは立て直しを図れ!!

 陸竜近衛騎士団!一気に圧すぞ!!」


「「「「「「「「「「応!」」」」」」」」」」



 第一、第二騎士隊も騎士である以上は精鋭だ。

 しかしその騎士達からさらに絞り込まれた精鋭中の精鋭である

 陸竜近衛騎士団が現れた事。


 そしてその陸竜近衛騎士団があっという間に

 それまで迫ってきていた魔物達を一蹴するだけでなく

 元々の場所よりも押し返した事で

 第一、第二騎士隊や魔導射手隊は

 救われ、立て直しを図るだけでなく

 それまで魔物に襲われていた騎士達も救われる格好となった。



「先頭構え!!」


 パーシヴァルの一言に、先頭の陸竜近衛騎士団員達が構えた。

 それはかのパーシヴァルの構えと同じで

 その身体の周囲には黒い靄が湧き出していた。



「てぇ!!」


「「「槍術奥義『勇往邁進(ゆうおうまいしん)』!!」」」


 技能(スキル)の中でも最上位に入る超級技を超える奥義。

 それをこの陸竜近衛騎士団は全員が使えたのだった。


 真っすぐと飛ぶような黒い渦のような奥義。

 放った彼らもそのまま奥義の後を追うように走り

 彼らの進攻の最前線の魔物達を次々と吹き飛ばしていった。





 彼らは何故この状況からの参戦となったのか。

 それは後々判明する事となるだろう。


 しかしそれはウィンガード王国軍として

 期待されていたものだった。


 そして残った騎士達は、これで力が絞りだせるようになった。



 それはあの通達……。

 ウィンガード王と、空竜近衛騎士団団長のソニックの連名で

 耐えれば勝てる、と下がり始めていた士気を一気に上げた

 戦争終結を示していたあの言葉。


 それがウィンガード王国軍の騎士達全員に過ぎったからだ。


 そしてそれはたった今、目の前で

 陸竜近衛騎士団が、圧倒的な速度でゴブリンクイーンへの道を

 あっという間に切り開いていく姿。


 それを目の当たりにしているのだから

 これこそが待ち望んだものであり、そして戦争は

 俺達の勝利で終わる!


 これが終われば国に帰れる!

 大手を振って、王都へと戻れる!

 家族に会う事も出来る!


 そう思えば、これまでの疲労も苦労も

 あと少し、自らの力を振り絞っていけば

 夢ではない、現実のものとなる。


 そしてそれは全軍の士気をこれまでになく

 最高潮にまで上げる事となった。

星5点満点で「面白い」や「面白くない」と

つけていただけると、作者が一喜一憂します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ