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【完結済】G-form-girl  作者: ボブ
第4章 ホーレルヒ王国編
58/178

第58話 決戦、ゴブリンクイーン。

「てぇー!」


 それは太陽がジリジリと照る真昼の事。

 晴れ渡る空と白い雲の下、灰色の王城が崩れた際の

 細やかな土煙などにより、まだ王城の周りが

 灰色の世界に覆われている中。


 空に待機していた魔導戦艦からの一斉射撃から

 ウィンガード王国軍とゴブリンクイーンの戦いが始まったのです。



「続き、魔導射手用意!!」


 魔導銃と呼ばれる、火薬の変わりに魔力を爆発させて

 銃弾を飛ばす銃を持った騎士達が、ホーレルヒ王国の

 王城を取り囲む城壁上から次々とゴブリンクイーンへと

 銃弾を浴びせ、砲弾を浴びせた。


 そしに対し、灰色の世界の中から

 触手のようなものすら飛び出てきた。


「第一、第二騎士隊前へ!!」


 魔導射手に襲い掛かる触手に対し

 魔導射手は一気に後方へと下がるのに合わせ

 今度は剣と盾を持った騎士達が前面へと出た。


「密集陣だ!」


「「「「「「「「「「応!」」」」」」」」」」


 第一騎士隊は重厚な鎧を纏い

 重そうな盾を構え、その触手の一撃を受け止めた。



「続き、殲滅!!」


 続いて第二騎士隊が第一騎士隊が受け止めた触手へと

 次々と刃を入れていく。


 盾は小さなバックラーと呼ばれるものを持ち

 背負うほどの大剣持ちが揃っていて

 太い触手が次々と切られていった。



「装填報告!」

「完了!」

「続き、魔導射手用意!!」


 掛け声に合わせ、第一、第二騎士隊が下がり

 再び魔導銃がゴブリンクイーンへと

 銃弾、砲弾を浴びせていた。





「てぇー!」

 それに合わせ、空を染める多くの魔導戦艦が

 巨大なゴブリンクイーンへと砲撃を加える。


 そのゴブリンクイーンの姿は最早、厄災と言っても

 王城並みの大きさを持つもので

 1国が戦う相手としては非常に巨大だったにも係わらず

 指揮の乱れも無く、1つ1つ確実に攻撃を加えて

 徐々にゴブリンクイーンを追い詰めていた。



 しかし厄災、と呼ばれる街や村、国すら1体で

 滅ぼせる存在がその程度で追い詰められていく光景に

 ウィンガード王国軍は首を傾げていた。


 そしてその正体が現れ始めた。


 王城を取り囲む城壁上に、新手の魔物が現れた。

 それはゴブリン、としか見えないが

 どれもこれも、これまでのゴブリンを遥かに凌駕する存在だった。



「こいつら……レッドキャップだ!」


 レッドキャップ。

 ゴブリンの近縁種で極めて危険性が高い妖精、悪鬼。

 人を見れば殺意を剥き出しに襲い掛かってくる

 残虐な存在で、殺した相手の血を帽子へと塗り

 恍惚さえ覚え、その帽子が赤錆色をしている事から

 レッドキャップ、と名の付いた魔物。


 特に素早さに特化した魔物で

 斧を用いて素早く獲物を狩っていく存在……。



「こいつら素早いぞ!」


「第一騎士隊!前へ!第二騎士隊、魔導射手隊と続け!!」


「「「「「「「「「「応!」」」」」」」」」」


 被害は出ているが、城壁上の騎士達も

 軍属である事に違いはない。


 日頃の修練の成果を発揮し、状況は拮抗していた。

 しかしそこに、さらに触手が伸びてきた。




「援護射撃、てぇー!!」

 それを援護するように、魔導戦艦が砲撃を行う。


 しかしその触手が次々と増えていく。

 2本、3本、4本、5本と……。


「なんとしてでも抑えるのだ!

 ここを制圧されれば、ゴブリンクイーンへは届かなくなる!!

 ここは陸軍の最前線!なんとしてもこの場だけは譲るでない!!」


「「「「「「「「「「応!」」」」」」」」」」





 徐々に陸軍の居場所が減る中

 今度はウィンガード王国の新手が現れた。


 揃いの白い鎧を纏った、空を狩る騎士達。

 ウィンガード王国、屈指の近衛である

 空竜近衛騎士団が土煙が収まり、ゴブリンクイーンの全体が

 見え始めた頃、空から現れた。


 彼らはワイバーンと呼ばれる魔物を使役し

 それに乗り、空を自由に飛び回り戦う。


 ワイバーン自体はドラゴンとは違う存在であるものの

 この世界では飛竜、と呼ばれている。


 その為、彼らは竜騎士と言う立ち位置になる。

 空から投擲槍を投げたり、交錯時にはランスで戦い

 時には爆発物などを落下させる、人族にとっての

 空の王でもあった。


 そしてそれをまとめるのが

 空竜近衛騎士団団長、ソニックだった。


 彼らはハンドサインを使い

 声を出さずに次々と伝令を行い

 そしてゴブリンクイーンへと次々と槍を落とした。


 その槍はゴブリンクイーンへと当たると

 バチバチバリバリと音を立て始めた。



「空竜の気絶(スタン)槍だ!

 今のうちに触手を排除するぞ!!」


「「「「「「「「「「応!」」」」」」」」」」


 さらには魔導戦車などが地上に現れ

 次々と魔導砲撃を開始し始める。

 海が無い為、海軍の出番はなくも

 ウィンガード王国の陸軍、空軍の多くが

 この極めて小さな国であるホーレルヒ王国へと集まっていた。


 ほぼ総力戦、と言っても過言ではない戦いが繰り広げられ

 それは日が暮れ、夜になっても

 サーチライトに似た魔導具を用いて、攻撃が続けられていた。


 ウィンガード王国軍は、この攻撃に対し

 ほぼ全軍を投入した上で、部隊を6つへと分けていた。


 そして交代制で2つの部隊を戦わせ

 残りは交代で休ませる戦略を取っていた。


 しかしほぼ半日が経過した今。

 その戦略に疑問を持つものも出てきた。



 ゴブリンクイーンに攻撃が殆ど効いていない。

 触手を破壊しても、また新たな触手が出てくる。

 レッドキャップに至っては、倒せど倒せど次々と現れ

 このまま長期化した場合、レッドキャップの遺体の放置による

 アンデッド化の危険性さえある。


 そう、見る者も少なくなかった。

 それがたった半日で、だ……。



「ソニック、下らん事言ってる奴を片っ端から黙らせろ。

 士気にかかわる。」


「既に対応済みです。」


「しかし強ぇな、厄災ってのは。」


「おや、ウィンガード元帥は初めてでしたか?」


「てめぇみたいに暇じゃねぇんだ。

 これで3度目だ。」


「そうでしたか、1回目は冬将軍。

 2回目は南海鮫でしたっけ?」


「知ってるじゃねぇか……なら聞くんじゃねぇよ。」


 そして1日、2日と経過していく中で

 交代をしているにも係わらず

 ウィンガード王国軍には疲労以上に

 精神的な負担が増えていた。


 何しろいくら倒せど次々と現れるレッドキャップ。

 そして倒せどすぐ増える触手。


 砲撃なども叩き込まれていると言うのに

 その勢いが衰える事は無く、むしろ増していると

 思えるほどになっていた。



「で、どう思うよ。」


「どう、とは?」


「この戦、勝てると思うか?」


「はい、勝てると思います。」


「予測はどのくらいだ?」


「最短であと3日、長く見て8日程。

 処理などを含めますと……。」


「そいつぁどうでも良い。

 あのゴブリンクイーンを倒すまでの話だ。」


「でしたら3日から8日の間程度で。」


「随分と楽観視な日数だが……。

 てめぇの事だ、ソニック大将。あてがあるんだろ?」


「はは、そこまで読みますか。」


「そりゃそうだ。本来暗部ってのは俺の直属だ。

 てめぇだけに情報を持ってくる連中じゃねぇんだぞ?」


「知っているなら聞かなくてよかったのでは?」


「何、お返しってやつだ……。」


 この日、ウィンガード軍が

 終戦までの予告を全てのウィンガード王国軍に出した。


 その大半が3日から8日で終わる。

 しかしそれを通達したのは

 ウィンガード王と、空竜近衛騎士団団長のソニックの

 連名であった事もあり、騎士達はそこまで耐えれば

 勝てる、と下がり始めていた士気を一気に上げたのだった。

星5点満点で「面白い」や「面白くない」と

つけていただけると、作者が一喜一憂します!

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