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【完結済】G-form-girl  作者: ボブ
第4章 ホーレルヒ王国編
53/178

第53話 G、無意識の中で。

「ウガァァァァァァァ!!」


「………キャアアアアアアアア!」

「………まっ、魔物だぁ!!」



  『マスター……。』


 あれからマスターは瓦礫の中から

 人々や馬すら助け出し、ゴリラによる癒しの魔法(マギウス)

 巻き込まれた人々を癒した後、叫び脅し始めたのです。


 逃げられる先、と言えばこれまでマスターが歩いてきた

 下水の浄水槽側になるように立ち位置を変えていた事で

 彼らはその方向へと逃げる事となるように……。


 だけどそこにマスターの意識は無いのです……。

 どうしてこうなっているのかも解らない。

 何故動けているのかも解らない。


 私にこのゴリラアーマーの制御すら出来ていない……。

 そして地面が陥没した王都では

 当然の事ながらこの事件が露呈し始め

 次々と武器防具を装備した騎士達が

 地下水道へと流れ込んできたのです。


 マスターはそれらを相手にもしませんでした。

 いくら地下水道が次々と壁を閉じていっても

 それすら壊そうともせず、ただ歩いていく。


 それはどれだけの騎士達が攻撃をしようとも

 どれだけの騎士達が目の前を塞ごうとも

 止める事が出来ないものでした。


 マスターは一切手を下さず、ただ歩くだけ。

 それだけで騎士達は塞いでいた場所から

 どんどんと奥へと押され、そして瓦解していく。


 回り込んで抑えようとしても、塞ごうとしても

 その歩みを僅かでも遅くする事すら出来ていなかったのです。


 攻撃を行ったとしても、その剣は、槍は折れ

 押さえ付けたり進路を塞ぐ盾は(ひしゃ)

 最早、私達を止められる人等誰も居なかったのです。


 そして地下水道を抜け、ついに王城へと

 足を踏み入れるかという時。


 どこかで見たような白い鎧の騎士に

 黒い鎧の騎士達がその進路を塞ぎ始めたのです。


 周りには様々なウィンガード王国軍と思しき人達からの

 矢や魔法の雨が降り注ぐ中。


 マスターは歩みを止める事は無かったのです。

 そして本来、ゴリラアーマーにあるべきではない事も起きたのです。


 ゴリラアーマーの目から、赤い涙が流れていたのです。

 このような仕様はゴリラアーマーには存在していません。

 何故流れたのかも解りませんし、マスターも

 涙を流している様子もありませんでした。


 矢も魔法も、今のマスターの前には

 その歩みを止めるだけのものとはならなかったのです。


 そして白い鎧の騎士達に黒い鎧の騎士達。

 あの白い鎧はミスリィルの合金、黒い鎧はオリハルコンの合金でしょう。


 地下に居たあの男のものより、他の金属や魔法金属を

 混ぜている分、質は劣るでしょうが

 それでもここまでで最も優れた装備の持ち主達でした。


 揃いの鎧に、これまでにない統率された騎士達。

 恐らくこのウィンガード王国軍の中でも

 かなりの精鋭、と思われます。


 あと少し、マスターが進めば衝突は避けられない。

 そんな王城へと続く、橋の上での事です。



 私達が突然、爆発に巻き込まれたのです。

 それは魔導戦艦、と呼ばれるものからの砲撃……。


 魔導戦艦は魔力を動力とした魔導飛空艇を

 軍用にしたもので、魔法や砲撃が出来る

 空の砦とも呼ばれるもので、大国はこれを多く

 持ち合わせているものです。


 それは効果的であり、王城へと繋ぐ橋を落とした事で

 マスターは王城の濠へと落ちたのです。


 これがただの賊等であれば効果もあったでしょう。

 しかしゴリラアーマーは水には浮きませんが

 濠の水の底を歩く事は出来るのです。


 ミニゴリラ達はこのルートも事前に調べているので

 マスターにとって、たいした障害とはならないでしょう。


 そしてマスターは王城にある

 地下と濠を繋ぐ部屋へと辿り着いたのです。


 結局、ここからまた騎士達が

 自らを壁にして抑え込んだり塞いだりする事になりましたが

 マスターには関係の無い事です。


 今のマスターは既に私ですら止められない存在なのです。

 そして王城の中に入っても、矢や魔法が飛び交ってくる。

 止められる訳でも無いのに放つだけ放ってくるものですから

 二次被害も発生し始めていました。


 王城の一部に火がついたり、雷属性の魔法(マギウス)

 火災の原因となり得るのに……。


 そして聞こえてくる都合の良い解釈。

 まるでマスターが火付けをしたかの如く

 全ての責任を被せようとする、愚かな人族達……。


 その光景を見ても、マスターは意識が無くとも

 決して傷付ける事はしなかったのです。


 そしてついにマスターは目的の場所へと辿り着いたのです。

 事前の調査では、ウィンガード王は自らが

 先頭に立って戦う人であり、恐らく何か問題があったとしても

 逃げ出すような人物ではない、と言うのが

 マスターと私の考えでした。


 その目的地、それは謁見の間。

 恐らく、ここを目的地として歩めば

 王はそこに居るだろう、と私が考えたものでした。


 それこそマスターが賊だとしても

 謁見の間を荒らされるなど、王家として、国として。

 あってはならない事態なのですから。


 しかし本来の目的地は実はその手前。

 謁見の間の入口なのです。


 ここには恐らく王を護る最後の砦となる人物が

 立ちはだかると予測していました。


 王が最も信頼を寄せ、護れるだけの強さを持つ人物。

 その人物との邂逅が最大の目的だったのです。

 そしてその人物は予想通り、その扉の前に立ち塞がったのです。





「おやおや、それでは近いうちにとは確かに言いましたが

 これほど早く再開するとは思ってもみませんでしたよ?

 お嬢さん……。」


 その最後の砦となっていた人物。

 かつてフォルコメン砦で遭遇した、白い鎧の騎士。


 近衛空竜騎士団団長兼ウィンガード王国大将「ソニック」


 マスターは恐らく、この人物が最後の砦となる人物であり

 この人物と合う事が目的だったのです。


 恐らく、この人であれば

 託しても大丈夫では無いか、それこそ王族を諫める上に

 大将と言う階級はそれこそ上に元帥か大元帥しか存在しない。


 軍の中でも上層部、と言える中に居る人物。

 それでいて王族にあの物言いが出来るのであれば……。


 直接、ウィンガード王に言えずとも

 この人物に言えれば……。


 しかし奇しくもマスターは意識が無いのです……。



「どうされましたか?

 以前のように、その面を外して会話したいと思っているのですよ。

 何故、貴方がこのような事をしでかしたのか。

 貴方の目的は何なのか、を私は知りません。」


「…………………。」


「…………………。」


「…………………。」


「黙っているのであれば、私としては

 この先に座しているウィンガード王の手前。

 貴方を捕獲しなければなりませんが?」



 マスターには意識が無い……。

 会話なんて出来る訳がありません。


 ホーレルヒ王国について、ウィンガード王国における

 神殿の実態等、それらを話し

 証拠となるものは少なくとも、その情報を開示し

 ウィンガード王国の助力を得る事が

 マスターにとっての最終目標……。


 会話が出来ない今、それも叶わないのです……。

 そう思っていた私に反し、意識の無い筈のマスターが

 ゴリラコンテナから、今回の情報を綴った

 革紙を取り出し、ソニックに投げつけたのです。


 それをソニックは剣で切る訳でも無く

 地面に落ちたところを拾ったのです。


「これは革紙ですか……、中を見ても?

 それともこれを我が王に?」


「…………………。」


「…………………。」


「…………………。」


 マスターが喋る事は無いのです。

 今でも意識が無いのですから……。


「そうですね、どうやら事情がありそうです。

 このまま無言を貫くのであれば

 私が見ても良い、と言うのはいかがでしょう?」


「…………………。」


「…………………。」


「…………………。」


「肯定と取り、私が中を見させていただきます。」


 ソニックが革紙を開き、1つ1つを見ていった。

 その1枚1枚を見るたびに顔色が変わる訳ではなかったけど

 眉がその度に動くのが見えたのです。


 そしてソニックが全てを読み終わった時。

 マスターは膝から崩れて倒れたのです。


 その時には毛の色が全て黒に戻っていて

 ゴリラの顔も元通りになっていたのです。

星5点満点で「面白い」や「面白くない」と

つけていただけると、作者が一喜一憂します!

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