第49話 G vs 丸くて黒くてつるっとしたまもの。
「虫やだぁぁぁぁぁぁ!
長野生まれだけど虫嫌いぃぃぃぃぃぃ!!
許されるのはヒゴロモソウについてる
ちっちゃな虫だけ!!」
『花の蜜が幼少の頃の貴重な甘味、ですか……。
しかし同じ幼少期にバッタやコオロギやハチノコとか食べてますよね?』
「あれはおじいちゃんに勧められて泣く泣く食べたの!!」
『中々興味深い食志向の御爺様ですね。
生の松茸に味噌を塗って食べるとか……。』
「私も食べたけど、即お腹壊したからね!?美味しくないし!!」
『どちらにせよ戦闘は避けられませんよ?』
「っていうかさ!超見難いんだけど!!」
下水道の中は所々に灯りのようなものが点々と
一応はあったものの、殆どが暗く
特に汚水の中に半分以上浸かっている
ダンゴムシとやらが見づらい……。
『すぐに見やすくなります。』
「はい?」
ニクジュバンニの言う通りだった。
ダンゴムシ、と言ってるけどこれはおかしい。
何しろ丸かったダンゴムシが縦に伸びたかと思うと
私の身長よりはるかに大きいのに
横幅は握り拳程度の幅しか無いのですから……。
「絶対ダンゴじゃないよね!?ロールケーキか巻き寿司!?」
『どれも思った程巻かれていないですよね?
せめて伊達巻というところではないでしょうか。』
「蚊取線香並の巻き加減かも!!」
『来ます!』
「なんの!おいでませミニゴリラ!!」
ふふふ、私は触りたくないので
こういう時こそミニゴリラ達に任せるべきだろう。
「ああっ!ミニゴリラが逃げた!!」
『ミニゴリラ達はマスターの思考を参考としているので
マスターが嫌な事はミニゴリラ達も嫌なのですよ?』
「そういうのは先に言おうよ!?」
仕方ない、自分で戦うしかないと思うも
ダンゴムシは強かった。
素早く私の身体に絡みつき
そして蛇のように締め付けてきたのです。
「ぬぐぉおおおおおお!?ちょ、きつっ!!
つか私が戦ってるんだからミニゴリラ達も来なさいよ!!」
『『『『『ウホッ!』』』』』
『「だが断る!」だそうです。』
「ゴリラ語だから解るよ!!
翻訳も要らないし、重要な事だから2回言いました的なのも
要らないからなんとかする方法プリーズ!!」
『えっ、そのくらい自分で考えましょうよ』
「どいつもこいつも私含めて
使い物にならないのばっかりだね!?」
『自覚はなされていたんですね。』
「そうじゃなかったら助けなんて求めないよ!!」
何しろ身体全体で巻きつかれて
力が上手く出ないんだからさ……。
『無限バナナの皮で出れば良いじゃないですか。』
「それだ!無限バナナの皮!!」
ぬるるるるんっとバナナの皮に
私が滑り、あっという間に飛び出た。
いや、確かに出られたけどさ……。
「バナナの皮ってこんなに滑るものだったっけ……。」
『これがご都合主義です。』
「そう、ご都合主義なら仕方ないね……。」
うん、そういう事にしておこう。
「と言う事で反撃!ゴリラストレーっ!?」
私の伸ばしたパンチに今度は巻き付かれた。
「のぉぉぉぉぉぉぉぅっ!!
腕の途中にバナナの皮なんか出ないって!!」
『考えなしに攻撃するからですよ……。
ゴリライアット・ガンで気絶させれば
一気に緩むでしょう。』
「ゴリライアット・ガン!
うりゃうりゃうりゃりゃりゃりゃぁ!!」
『連射しても気絶中は固定ダメージ以外
発生しませんからね?』
「その仕様、初めて聞いたんだけど!?」
『あと弾は岡〇三郎商店の「ゴリラの〇くそ」なので食べられます。
撃てば撃つ程売り上げに貢献出来て
島〇県と動物園とゴリラの知名度が爆上げされます。』
「まさかの甘納豆!?」
ゴリライアット・ガンと
ゴリライアット・ショットガンは
当たれば100パーセント、1秒間気絶するけど
気絶効果の重複はしないとか、初耳。
弾が甘納豆なのも初耳……。
ニクジュバンニに言われた通り、1発づつ発射し
ダンゴムシとの距離を保ち、どうするか考えた。
「1固定ダメをずっと入れ続ければ!!」
『今のペースだと倒すのに数年掛かりますよ?』
「辞めとくわ。
なら細かく刻んで!ゴリラジャブ!ジャブ!フック!フック!」
ストレート程では無く、短く刻むように叩き込まば、と思ったけど
今度は左右にクネクネと揺れる様に
私の攻撃を避けだしたのです。
「甲殻類の癖に!!」
『軟甲類でもありますので。』
「だから殻を殴らせないようにくねってるのか……。
ならこういう時こそゴリ光!!」
私は足を上げ、ダンゴムシに光を浴びせた。
「暗い所では活発に動けても、明るいと駄目でしょ!!」
『マスター、それだとマスターも動けませんけど?』
「はっ!ならゴリライトからの
ゴリライアット・ガンからのぉ、ゴリラフック!」
ダンゴムシと言えば、石を持ち上げると出てくる位に
暗い所が好きだった筈。
ちょいと明るくしたところで気絶させて
その間に足?を避けるようにフック!
私の拳が入ると、殻が僅かに歪み
そして手ごたえを感じた。
「からのぉ、スイング!」
スイングパンチは腕を振り回しながら殴る
大振りめのパンチの事で
放射線状に上から下へと向かっていくのです。
オーバーハンドとも言い、私は右のフックを叩き込んだ事で
歪んだダンゴムシの頭に近い辺りを左のスイングで振り抜いたのです!
私から見て「く」の字に折れ曲がっていたダンゴムシが
さらに折れ曲がり、流石に限界を超えてしまったのか
「く」の字の真ん中から真っ二つに折れたのです。
「っしゃあ!!」
いやほら、やっぱボクシングとか?プロレスとか?
筋肉見放題じゃない??
自然と覚えるって言うか?
『かなり特殊な例だと思いますが……。』
「土日の夜中とかプロレス観るのが普通じゃ無いの!?」
『それよりまだ一杯いますよ?』
「っしゃあ!ばちこーい!!」
『何か色々壊れてませんか?』
「さっさと終わらせたいだけ!!虫、嫌いだもん!!
っとパアリング!」
パアリングは掌で相手の攻撃を捌く事。
パリイと呼ぶ方がゲーム的には有名だけど
この時点でボクシングやフェンシングの技として
存在していたから、これが元なのかもしれない。
「からのぉ、オープンブロー!!」
『それ反則では……。』
「ルールが無いのがルール!!」
オープンブローは掌の根元辺りで行う張り手。
ボクシングならグローブの根元辺りで打つ反則技。
掌打、底掌、掌底とも言うけど
基本グローブをつける格闘技では反則。
サミングといって、指先辺りが顔にあたって
目潰しになり兼ねないから、だったかな。
でも相撲なんかでは突っ張りや貼りてにも共通するし
武道などでは一般的だった気がするけどね。
「おお、殻が軟いから中に利いてる利いてる……。」
打った場所がボディ、と言っても
どこからどこまでがボディなのかは知らないけど
オープンブロー1発でべっこり凹むどころか
そのままダンゴムシが倒れて、起き上がってこなかったのです。
そして残ったダンゴムシが一斉に丸くなり
逃げようとした時。
逃げる方向をミニゴリラ達が塞いでくれていた。
「ダンゴムシ、これで進むも地獄、戻るも地獄。
数は多いが小さな私と、たった一人だけど大きな私。
さぁ、私の逆トロッコ問題に挑んでみなさい!
どっちにしても犠牲はダンゴムシ」だけどね!!」
言葉が解るかは知らない。
だけどダンゴムシは方向を変えて、私に向かう事を決めたようだった。
どうやっているのかは解らないけど
ゼロヨン、0から400メートルを駆け抜ける
スタート直前のようなホイールスピン。
ドラッグレースで言う「バーンアウト」のように
空転を始め、回転が徐々に速くなっていく。
「それはこの汚水の中で役に立つのかね……。
あれ(バーンアウト)はタイヤを加熱するものだってのに。
それともあれかな?バーンアウト一歩手前?」
さらにダンゴムシは回転を上げてきた。
「あ、怒った?怒っちゃった?」
そしてダンゴムシ達は一斉に突っ込んできた。
横並びのダンゴムシ達が避けられないであろう
タイミングまで我慢し、私はバナナの皮を一気にばら撒いた。
「ふふふ、これでもう止まらないでしょ。
このまま浄水槽まで一直線!
止められない止まらないチキンレースの開催決定っ!!」
『で、マスターはどうサヴェージ・ウッドライスを
避けるおつもりですか?』
「あ………ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」
ダンゴムシの横並びに逃げ場はなく
ジャンプ力も所詮は人にちょっと足した程度。
当然、転がってくる伊達巻。
じゃなかった、ダンゴムシにぶつかり
そのまま巻き込まれたまま
私も、ダンゴムシもスライムが待ち構える
浄水槽に落ちていったのです……。
そして何故かファンファーレが鳴った。
【ゴリラ魔法「ゴリ光」がレベル2になりました。
今後、掌からも光が放てるようになります。】
「私はアイア〇マンかっ!!」
星5点満点で「面白い」や「面白くない」と
つけていただけると、作者が一喜一憂します!




