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【完結済】G-form-girl  作者: ボブ
第4章 ホーレルヒ王国編
46/178

第46話 G、荷物の届け先を知る。

 朝、私にあのファンファーレが聞こえた。


  【ゴリラの神様からの贈り物がゴリラコンテナに入りました。】


「はい?」


 ゴリラコンテナに??

 私はすぐに手を入れて、探してみると

 何やら分厚い本が入っていた。



「何これ………動物図鑑?

 っていうかゴリラばっかりじゃん。

 しかも何で全員斜め45度なの?」


  『それお見合い写真ですよ?』


「誰がするかぁ!

 あと昨日の夜の事引っ張るな!

 話数が違うんだから、違う話から始まろうよ!!」


  『あ、それ今話題の東山動物園在住のシ〇バーニさんですね!!』


「マジ、ゴリラの見合い写真とかいらんわ!!

 っていうかなんで空知〇秋さんの写真が混ざってるのさ……。

 あ、でも結構イケメンだね……。」


  『ですよねー。』


「って違う!王都デンドルドアの方に北上予定でしょうが!!」


  『チッ、折角イケメン成分が補充出来ると思ったのに……。』


「あんた絶対、ヲタ気質あるよね?」



 ちなみにお見合い写真とやらは燃やしたかったけど

 ニクジュバンニが反対した挙句

 捨てたらボイコットすると言うので、仕方なく収納し

 私は再度、王都を目指して駆けた。



「そもそも色恋沙汰とか良いんだよ。」


  『ご両親は何も言わなかったのですか?』


「嗚呼、私の趣味を知って諦めてたから………。」





  『マスター、問題発生です。』


「問題とは?」


  『2つの馬車のうち、1つが襲撃されています。

   賊と思われますが、違和感があります。』


「詳しく。」


 ミクロゴリラが張り付いている馬車2つのうち

 1つが賊に襲われている。


 この世界ではなんら不思議は無い事だそうで

 野盗、夜盗、山賊、海賊、空賊と

 なんでもござれで、大抵は冒険者や軍人崩れだったり

 生活苦の果て、農民からジョブチェンジする者も居るとか。


 ニクジュバンニ曰く、軍人崩れと言うより

 軍人らしい。


 揃いの剣に革靴、何よりそれらが綺麗なのだとか。



「綺麗?新品ならなりすましとか……?」


  『手入れがされています。』


 新品と言う事ではなく、定期的な手入れがされていて

 綺麗、と言う事だとか。


  『賊が手入れをするなどそう頻繁な事ではありません。

   しかし軍ともなれば身だしなみまで求められますから

   油を縫ったりなどの定期的な手入れをするものです。』


「へぇ……。」


 さらに使っている剣も国の紋章などは外されていても

 剣の手入れが行き届いているそうで

 賊がしようにもそれらはお金が掛かるか

 腕が求められる事から、賊はあまり手入れをしなかったり

 使い捨てに近い形で使うのだとか。



  『神器などは例外ですが、本来剣等は血濡れていくと

   滑りやすくなる為、切れる人数と言うのは限界があるのです。

   こちらの映像のように、定期的に布を持っていて

   軽く拭きながら戦うと言うのは軍属に多く見られる特徴です。』


「ほほぅ」


  『さらにここです。』


「何かな?この手の形。」


  『いわゆるハンドサインと呼ばれるものです。

   冒険者も使いますが、軍のハンドサインは種類が多く

   複雑化させている為により多くのハンドサインを使い

   仲間同士の連携を取ります。

   またこちらの方は護衛の冒険者のハンドサインを見て

   先読みしてから、自分達のものを出しています。

   この辺りも軍人崩れが良く行う手です。』


「でも鎧とか顔とか超汚ったないんだけど?」


  『その程度、現代戦争でも行うでしょう。

   鎧と顔は汚していても革靴は綺麗、と言うのは

   革靴は一生もの、と言われる位手入れ次第で

   長く使える上に、足に徐々に合わせていく事も多く

   違う靴を突然持ち出すなどは難しいのです。

   特に足白癬の問題もありますので。』


「足白癬?」


 いわゆる水虫の事だそうだ。

 特に革靴は指先辺りが最も埃なども溜まり

 汚れやすい部分だそうで、アルコール消毒などの

 概念がまだないこの世界では、最も避けるべき

 軍人や冒険者にとって身近な病なのだとか。


「薬は?」


  『ありますが、なりたくはないですよね?』


「まぁ、そう言われると……。」


  『それにこの戦い方です。

   ハンドサインもそうですが、賊となると

   大抵は頭となる人の指示などで動きはしますが

   比較的戦い方がバラバラになりがちです。

   しかしこれは統率が行き届いています。

   この冒険者等は既に気が付いているようです。』


 そしてミクロゴリラの映像が終わる頃には

 護衛の冒険者、そして荷馬車の御者である

 依頼主、すなわち商人が殺された無残な状態だった。


  『ここからが本番です。』


 賊達は遺体に見向きもせず、荷物だけを奪っていったのです。


  『冒険者の装備、商人の着ているものなど

   お金になるものもあれば、何より革財布などの

   現金にも手を付けない賊などありえません。』


「そこは納得するね。

 それか荷物が高額だと知っているか

 それだけが狙いか……。」


  『ハイエナのようなものですから。

   鉄貨1枚たりとも、よっぽど追われ殺されるような

   リスクと天秤に掛ける事でもなければ持っていくものです。

   そしてもう1つの馬車もどうやら襲われています。』


「はい?」


 それも同じ手口……。

 ニクジュバンニの言った事を中心に見ていくと

 やっぱり同じように荷物だけを持って去っていった。



  『最もな話として、遺体を放置していくと

   追われる可能性が上がります。

   当然、ある程度の距離にあるであろう

   潜伏先が見つかる恐れがあります。

   その為に相手を殺す際は出来る限り

   大きな傷をつけないものですが、この2組の賊は

   どちらかと言うと確実に殺す技術よりも

   連携し、傷を負わせる事に長けていると思われます。』


「その心は?」


  『戦争などで最も厄介なのは中途半端な怪我人です。

   遺体であれば放置なども出来ますが

   生きていれば連れ帰る必要も出てくる上に

   それによって兵站などの消費量も増える割に

   戦場に出てこられる人数は減ります。

   但しここを見て下さい。

   最後の最後に確実に殺しているのは……。』


「目撃者が残ると困るから?」


  『そういう事だと思います。これで襲撃現場は

   ほぼ血の雨が降ったような状態です。

   この状態を放置しても構わない、となると

   この辺りの賊ではない、もしくは

   賊のフリをしているか等……。』


「他にも考えられそうだけど、可能性は低く思えるね。

 だってこれかなり離れた場所だよね?」


  『お互い500キロ程離れています。』


「で、ほぼ同じ時間に?同じように?同じ場所から出発した馬車が?」


  『あと1、2台犠牲があれば確率も上がるのですが……。』


「酷い統計の取り方……。

 にしてもこれだけ血を見て冷静な自分が怖いんだけど?」


  『健康の効果ですからお気になさらず。』


「それか……。

 何か冷血喪女にでもジョブチェンジしたかと思ったよ。」


 ミクロゴリラは荷物に張りついていた為

 そのまま奪われた荷物から再度監視を続けていった。


 そしてついに終点と思しき場所に到着したのです。

 2つの荷馬車に乗せられていた荷物は全く同じ場所へと到着し

 同じ建物へと運ばれていったのです。



  『これですか………。

   世界が変わっても、この辺りは変わり映えしないのですね……。』


「そもそもここ王都じゃん……。

 この偉い仰々しい建物は何?」


  『これは神殿です。

   この世界の神殿は1つの国から派遣される神官が詰めている上に

   1つの国の国土としても扱われています。』


「……………大使館みたいな?」


  『いえ、現代的に言えば病院です。

   神官が無料で癒しの魔法を行使してくれる場所です。』


「へぇ……無料とは随分と気前の良い話だね。」


  『治療費は無料です。

   但しお布施が必要です。』


「……………詐欺じゃん!?」


  『いえ、あくまでお布施ですから。

   それによって非課税対象ともなりますし

   本来のお布施、と言うのは自由意志により行うものです。

   但し半ばお布施の額は決まっているようなものでして

   少ないと「ああ、今日は魔力を使い切っていて」などと言って

   やんわりとお断りするのが最早常套手段となっています。』


「やっぱり詐欺、と言うより脱税か……。」


  『神殿は宗教国家の国土扱いとなる為

   中に入ってしまえば禁制品も取り締まれなくなります。

   それを狙ってのものでしょう。』


「法律って世界法律と国の法律があるんだっけ?」


 この世界の法律は世界法と国法の2つ。

 それらが対立した場合は世界法が優先される。


 世界法は世界の国々が集まって決められた法律で

 適用している国は世界法を優先し

 それ以外の項目は国法で決まる、と言う仕組みだとか。


  『禁制品は確かに世界法で定められたものです。

   しかし他国にそれを理由に攻め込めるような法律は

   世界法に無いのです。』


「ああ、確かに揉め事になりそうだよね……。」


  『ですから現状、ウィンガード王国は

   この神殿を取り締まれません。

   そしてこの映像を見ればお分かりになるかと……。』


 これは酷い。

 酒、女、ギャンブル、違法薬物。

 そんなものが神殿の地下で行われている

 まさに無法地帯、とでも言うべき場所だった……。



「溜息しか出ないわ……。」


  『ここで吸われている煙草みたいなものが

   先程の紙を使っているのでしょう。』


「まさか使う場所で加工しているとは……。

 これ踏み込みようが無いよね?」


  『そんな事はありませんよ?キチンと私が

   こういう計画を立てました。』


「……………鬼か悪魔の所業?」


 ニクジュバンニの計画、とやらは

 私が見て、雑というかなんというか。


 法の抜け穴を利用した、かなりの被害が出るのではないかと

 思ったりもしたのですけどね……。


「ま、怪我するのは自業自得だから良いか……。」


  『流石マスター!』


 関係ない人に被害が出そうも無いので

 その計画とやらを「一応」案の1つに加える事にしたのです。

星5点満点で「面白い」や「面白くない」と

つけていただけると、作者が一喜一憂します!

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