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【完結済】G-form-girl  作者: ボブ
第4章 ホーレルヒ王国編
44/178

第44話 G、偶然の再開。前編

「これであと2つかぁ……。」


 ミクロゴリラからの位置や情報によって

 現在ウィンガード王国内に残っている馬車は2つ。


 その馬車の動きに合わせて私は王都デンドルドアのある

 北へと歩みを進めていた。



「で、偶然見つけたこれはなんだろうね……。」


  『何、現実逃避しているのですか?

   どうみても食料(タブロク)ですよね?』


「…………今、本音と建前が逆だった気もするけど…。

 ま、いいか。」


 馬車などが通る道、街道の端にある大きな木。

 その根元に息絶え絶え、と言うか特に外傷も無いけど

 ぐったりしているタブロクを見かけてしまった。


 ゆさゆさと揺らすも起きる気配も無いので

 鑑定してみると…………空腹?


  『ただの餓死寸前というやつでしょう。』


「餓死寸前を『ただの』と言い切るのはあんただけだよ……。

 まぁまずは水だよね。」


 私は水を被るのは御免被りたいと

 バイザーを閉めて、無限水樽を1つ出した。


「どぉっせい!」

 その水を思いっきりタブロクにぶっかけた。


「プギャアアアアアアアアアアア!!!」

「あ、起きた。」


 すぐにバイザーを開け、動向を見る。


「て……てめぇ……なにしやがる………。」


「五月蠅い、この餓死寸前野郎。

 いいから黙ってバナナを頬張りなさい。」


 タブロクの口を無理矢理開き、皮を剥いたバナナを

 捻じ込んで食べさせた。


  『マスター、流石にこの状態で固形物を

   飲み込むのには些か無理があるかと。』


「チッ………。

 そうだね、ニクジュバンニ。

 『ゴリゴリ』するものとかひらめかないかな?」


 するとファンファーレが鳴った。



  【ゴリラアーマーがゴリラ能力(アビリティ)「すりばちセット」をひらめきました】

  【ゴリラアーマーがゴリラ能力(アビリティ)「薬研セット」をひらめきました】



「おまけまでついてきたよ……。

 ま、狙いはすり鉢だったんだけどね。」


  『流石です、ひらめかせ方に慣れてきましたね?』


「慣れたいとは思わないけどね……。」


 バナナを柔らかくするなら()ったりした方が良いだろうし

 オノマトペ(擬音語)的にゴリゴリだろう、と考えて

 狙い通りすりばちをひらめかせる事が出来た。


 ミキサー、と言うのもありだと思ったけど

 そもそも電源も無ければ、ミキサーがゴリゴリ音を立てるとか

 間違いなく仕様範囲外の使い方でもしなければ

 しないだろうと思い、イメージしなかった。


「で、ヤシの(ココナッツ)の汁を入れてバナナを入れて

 ゴリゴリしていくと……。」


  『ゴーリゴリゴリ、ゴーリゴリ!!』


「うん、その擬音は要らないわ……。

 この位なら流し込めるかな?

 おら!この(オークビッツ)野郎!

 やれ飲み込め!さっさと飲み込め!!」


「ゴブブブブブブブブブブ!?」


「何!?オークビッツ族の癖にゴブゴブ言うとか

 ゴブリンに謝れ!!というかさっさと飲み込め(オークビッツ)畜生!!」


  『何気に介助しているように見えないから

   驚きですよね。』


「少なくとも襲われた恨みと多く(オーク)のオーク肉と言う

 私のお肉に逃げられた恨み自体は忘れて無いからねー。

 オークビッツ族なんて言い方じゃなくて

 (オークビッツ)野郎と(オークビッツ)畜生で十分だよ。」


  『〇田くん、座布団全部持っていってください!』


「私、その時間帯はニュース見てたから……。」


  『ところでマスター。』


「何?」


  『タブロクがバナナ汁で溺れかけてますが?』


「ぬわっ!?」





 とりあえず吐かせてから

 少しづつ飲ませた事で

 遭遇時は非常に悪かったタブロクの顔色が少しは良くなった。


「手間のかかる豚野郎(オークビッツ)だね……。」


  『「黒」とはつけないんですね。』


「霧島に敬意を込めて?つか、なんでこいつ(タブロク)

 こんな所で死に掛けてるんだか……。」


  『ここはマスターが初期に流され始めた場所から

   300キロ程度の場所ですよ?』


「ん?そういえばそんな事あったね。

 こいつ(タブロク)と遭遇したのも流される前だっけ……。

 で、あんたその2本の短剣を持って

 私に襲い掛かるつもり?

 オークビッツ族とやらは助けられた恩も40秒で

 忘れるのかな?」


「……………。」


「っていうかあんたオークの連中が

 集落をって勝手に飛び出していったじゃん。

 それがなんでこんな所に居るのさ。」


「オークの連中は……俺が着いた時には

 既に殺されていた……。」


 はて、何か時系列が合わない気がする。

 あそこは確か冒険者とやらが潰していた気がするんだけど……。


「着いた時には殺されていた?

 距離的に考えても、十分間に合った気がするんだけど?」


「………………………だ。」


「はい?聞こえないんだけど?

 それにここも結構あの集落から遠い筈なんだけど

 なんでこんな所に居るのかね?」


「…………………なんだ。」


「は?もう少し大きな声で。」


「俺は方向音痴なんだ!!」



 ……………方向音痴?

 つまりオークの集落に向かった筈が

 辿り着いた頃にはオーク達は冒険者の討伐に

 合った後だと??


「あんたどうやって普段狩りしたり

 集落に行き来してるのさ……。」


「………方向音痴なだけで

 地理に疎い訳じゃねぇ……。」


 何言ってんのこいつ、って感じなんだけど。

 方向音痴で地理に疎くないって……。

 

 私を集落へと連れて行ってくれた時には

 すんなりと案内された筈なのにさ……。。



「集落の位置だけは解るけど、それ以外が疎いとか

 そんな感じなのかな……。」


「解んねぇ……、昔からこんな感じだ……。

 それがあの後からだ……。

 俺は集落にすら辿り着かなくなった……。」



 なんでもオークの集落が潰れた後

 いい気味だと思ったけど、その後集落に着く事が

 出来なくなっていたのだとか。



「あいつらの墓も作ってやれなかったし

 今頃は……。」


「アンデッド化でもしてると?」


「……………かもしれねぇ。

 俺がやった訳じゃねぇからな……。」


「ふぅん………。」


 方向音痴ねぇ……。

 集落の位置が解るなら、オークの集落まで

 一直線にいけば迷わない気もするんだけど。


 それに集落に戻れなくなったってどういう事だろうね?

 だけど「俺がやった訳じゃねぇ」??

 つかあんた絶対、集落に1度戻ってるよね??


  『まぁ嘘でしょうね……。』


 嘘をつく理由は?

 ニクジュバンニの推測を聞き、私は確認した。



「ちょ、待て!!何するんだ!!」


 私はタブロクを寄りかかっている木から

 引き剥し、背中側を見ると

 そこには多くの怪我の跡が見られた。


「あんた、実はオークの集落いったんじゃないの?」


「……………。」


 タブロクは暫く、何かを語る事も無く

 周囲が暗くなり始めた為、私は焚火の用意を始めた。



 パチパチと爆ぜる音がする中。

 タブロクはあれからずっと黙ったまま

 木に背中を隠すように座ったままだ。



  『傷の状態的には今は問題ないでしょう。』


 ま、鑑定の結果にも出なかったのだから

 私も問題は無いと思っている。


 だけどその傷は様々な刃物でつけられた傷に見えた。



「はぁん……そういう事か……。

 さてはオークの集落に自信満々で攻め込んで負けたね?

 総出でボコボコにでもされた?」


「そっ……そそそそそそそそそそそんな訳あるか!!」


「なにそのドモり……。

 つか負けたのが恥ずかしくて言えないとか

 こんなのに私、圧倒されてたとか

 むしろ私の方が恥ずかしいわ……。」


「負けてねぇって言ってんだろうが!!」


「はいはい、解った解った。

 で、集落には戻れなかったんでしょ?」


「……………。」



 私は地面に「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」と書いた。


 それを見たタブロクの顔の驚いた表情を見て

 集落に戻った事を確信した。



「私が遺体を集めて焼いて埋めたんだよ。

 上にあった岩にこう書かれてたでしょ?

 これ亡くなった人が神様の恩恵を与る事が出来て

 無事に天国へと行けますように、って意味の

 私の故郷の言葉だからね。

 あんたも読めなくても、形は覚えてるでしょ?

 周りに花も植えたんだし。」


「お前が……やってくれたのか……。」


「そうだね、あと集落を襲った本当の犯人も

 3匹のオーガで、私が倒したんだけどね。」


「………………オーガだと!?

 あれはオークの仕業だろうが!!」


「何言ってるのさ、まだ息のあった人が『オー』まで言った所で

 あんたがそれをオークだと思い込んで、早とちりして

 勝手にオークの集落に向かっただけでしょうが。

 あの後、オーガが戻ってきて死ぬかと思ったんだから……。」


「そんな………俺は騙されないぞ!?」


「あっそ、そういうだろうと思ってこれだけは

 冒険者ギルドで売ってないんだよね……。」


 私はタブロクの前に2つのものを投げた。

 それは赤オークと青オークの頭だ。


 こんなものを持ち歩くのはどうかと思うけど

 タブロクと遭遇した際、事実を伝えるには

 首があるのが最も解りやすいだろう、と

 売って欲しいと言う冒険者ギルド側の跳ね除け

 これだけは残しておいたのです。



「もう1匹居たんだけどさ、そっちは跡形もなく

 砂のように崩れたから残せなかったけど

 これだけは残しておいたんだよ。

 それとあんたさ……。」


「……………。」


 赤オーガと青オーガの頭を見て

 何か震えて声も出さないタブロクに

 これだけは言うべきだと思った。


「私を襲ってきた時もそうだけどさ。

 頭に血がのぼったりだの、早とちりもそうだけど。

 あの時、もっとする事があったんじゃないの?」


「………する事?」


「あの時、集落のうちの1人は生きていて

 あんたに話しかけたよね。

 そしてすぐに復讐だかなんだか知らないけど

 オークの集落に向かった。

 なんでまだ生きている集落の人達に目を向けてあげなかったの?

 もしかしたら彼らのうちの何人かでもあの時

 すぐに助けようとしたら何とかなった可能性とか

 全く考えもせずにただ飛び出したの?」


「……………そ、それは……。」


「私は癒しの魔法が使える訳でも無いし

 持ち物に魔法水薬がある訳でも無かった。

 それに戻ってきたオーガと対峙するだけで手一杯だった。

 そしてオーガを倒し終わった後、あの集落に

 生きている人は誰も居なかった。

 あんたがあの時すべきだったのは復讐じゃなくて

 集落の人達の命そのものじゃなかったのかな?」


「お………お前に……、お前に何が解るってんだ!!」


「解る訳無いじゃん。

 私にとっては所縁もない人達だもの。

 だからこそ、あんたがするべき事だったんじゃないの?

 復讐云々なんてのはその後でも良かった話だし。

 私が解るのはあんたがその場の感情で動いた事。

 それによって助かる可能性のあった命が

 失われたかもしれない事。

 私が集落を襲ったオーガを倒し、全員をキチンと埋葬した事。

 オークの集落は冒険者が殲滅して、片付けた事。

 最後にオークビッツ族を助けた私にあんたが刃を向けた事。

 私はあんたじゃないから、あんたが何を考えているかなんて

 知る訳も無ければ知りたくも無いね。

 どう?あんたがやった事をこうまとめてみると

 随分な話だと思うけど?」


 私の話を最後まで聞いたタブロクは立ち上がって

 2本の短剣を抜いた。

星5点満点で「面白い」や「面白くない」と

つけていただけると、作者が一喜一憂します!

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