第43話 G、新たな力について問い詰める。
「はぁ、極楽極楽……。」
刃物が、と思っていたけど良く良く思い出せば
オークビッツ族の集落でそこそこ手に入れていた事を思い出した。
そして折った木を杭のように削って周囲を覆って囲いを作り
やっとの事、この世界に来て初めてのお風呂を堪能していたのです。
当然、ミニゴリラ達が周囲を警戒。
覗きを含めてやってきた時はすぐにでも
ゴリラアーマーを着る予定です。
「いやぁ、やっぱ日本人はお風呂だよね。
と言うより亜熱帯だっけ?
そういう風土には欠かせないものだと思わない?」
『全く、濡れるなど正気の沙汰とは思えません。』
「汚れてもそのままな方が私的に正気の沙汰とは思えないけど……。
それにしてもゴリラアーマーもこの腕時計型だっけ?
この状態で効果があれば良いのにね……。」
『……………。』
「ニクジュバンニ?」
『……なんでもありません。』
何この僅かな間は……。
「あ」
『どうされましたか?』
「そういえばあの辺境砦でのアームドフォーム!」
『それがどうかされましたか?』
「なんであれがあったの?
私、ファンファーレも通知も見かけてないんだけど?」
『それはマスターが寝ていたからです。』
「寝ている間にもファンファーレが鳴って、会得していたと?」
『はい。』
「……………。」
『……………。』
「もしかして他にあったりする?」
『……………。』
「何故答えない……。」
『……………黙秘権を行使します。』
「あるんだね?」
『……………黙秘権を行使します。』
「あるんだよね?他のフォームが。」
『……………黙秘権を行使します。』
「黙秘権ってのは無理矢理自白をさせる事を防止する目的であって
私の知る権利を阻害するってのは違くない?」
『……………黙秘権を行使します。』
「むぅ……なんで他のフォームを知るのを
そんなに嫌がっているのやら……。」
それを私が知らないで死んだとしたら
あんたの責任って事だよね?
多分アームドフォームも知られたくなかったけど
死にそうだから使わせたとか、そんな所でしょ?」
『……………黙秘権を行使します。』
何があるのか解らないけど
この黙秘を続けるのは、多分私にとっての
デメリットではない気がする………。
多分だけど私にとってはメリットだけど
ニクジュバンニにとってはデメリット?
……………。
私は考えに考えた結果。
「多分、フォームの中にゴリラとは
到底思えないフォームでもあったな?」
『……………黙秘権を行使しみゃす。』
噛んだ……。
今まで噛んだ事の無いニクジュバンニが噛んだ……。
「解った解った、1つだけ質問。
到底ゴリラに見えない訳ではないフォームに
ついてだけ教えなさい。
それで妥協したげるから……。」
ニクジュバンニは諦めたように話し始めたのです。
まず現在知っているアームドフォームについて。
制限時間は3分間、再使用にかかるクールタイムは30分。
制限時間内は全ての能力が3倍に跳ね上がる。
特に制限時間後のデメリットも無いのだとか。
そしてもう1つがへビーフォーム。
こちらは姿はそのままで、全身が青いパーツのようなもので
覆われはするものの、遠距離攻撃が可能になるのだとか。
「ココナッツ弾?」
『はい、秒間60発射出出来るようになります。』
「ゴリラとココナッツ……?」
どうやら動物園などでココナッツをこじ開けて
食べたりする所が元ネタらしい。
そしてファンファーレが鳴った。
【ゴリラアーマーがゴリラ能力「無限ココナッツ」をひらめきました】
「……………あんた……。」
『………てへ♪』
てへ♪、じゃないよ……。
これ結構重要な能力じゃないの??
無限にココナッツが出せる?
これ投げれば投擲武器になるじゃん……。
そしてやってみた。
「怖っ!?」
何の気なしに木にぶつけてみたら
木がそこそこ凹むような傷はついたものの
ココナッツの方が爆発するように割れたのです。
『普通のココナッツですから。』
「まぁそれは解ったよ、ココナッツの中の水分は確か飲めるし
固形部分は水を足せば確かココナッツミルクになるし
ヤシ油もこれ取れるよね?」
『そういう事になりますね』
「そして知った事でひらめいた訳だ……。」
『……………黙秘権を行使しみゃむ。』
「別のフォームからひらめくかもしれないよね?
ゴリラの神様は黙ってろと言ったかな?
それとも黙っているのは嘘がつけないからかな?」
『……………これだけはご勘弁を……。』
「勘弁しなければならない理由を400字詰め原稿用紙
100枚以上、1000枚以内で述べよ。」
『……………黙秘権を行使しみゃふ。』
「なんでもかんでも黙秘権で済むと思うな!!」
最終的にはニクジュバンニは
3つめのフォームについて渋々ながら吐いた。
「ほぅ、これがライトフォーム……。」
見た目ゴリラのベーシックフォームと同じ性能で
かつ制限時間の無い3つ目のフォームが
このライトフォームと言うものだそうだ。
「何か開放感が段違いだ……。」
標準的なベーシックに比べて非常にゴリラ感が……。
「薄くは無いね、所々ゴリラ感は残ってるじゃない?」
『そんな可愛い服装のゴリラを私は認めません!
ゴリラは猛者猛者していてフサフサしていて
ゴリゴリしていてこそゴリラなのです!!』
「なんとなく言いたい事だけは解るけど
これも十分ゴリラじゃない?」
まぁゴリラの着ぐるみからゴリラを模した服に
なったのがライトって事なんだろうけど……。
『そもそも手足の長さがゴリラではありません!!』
「あー、服になったからか……。」
そう言われると確かにゴリラっぽくない。
今まではゴリラアーマーに私が引っ張られていて
体形が完全にゴリラ・ゴリラしていた。
それが逆で私にゴリラアーマーが引っ張られていて
手足の長さが元々の私そのものの比率になっている。
「もしかしてこれが嫌だったとか?」
『当然では無いですか!私はゴリラの神様の眷属であり
ゴリラなのですよ!?
ゴリラ美を失ったゴリラなど最早ゴリラではありません!』
「確かにゴリラアーマーを着てはいたけど
私は人間だからね?」
ニクジュバンニは私がこのライトアーマーを
普段着にする事を懸念していたらしい。
しかも酷い事にゴリラアーマーのレベルが1から2になっていた事や
それによっていくつかの制限が撤廃されている事すら黙っていたのです。
ゴリラアーマーのレベルがレベル2になった事で
私はベーシックの状態でバイザーを開けなくても
アース語で会話出来るし
そもそも腕時計型の状態でもゴリラアーマーの力を
十全に使えるようになっているのだとか。
「……………あれ?
もしかしてライトアーマーでなくても良くない?」
腕時計型にして身に付けていれば
正直ゴリラアーマーを着ているのと差が無い。
その事実に気が付いた時、ついにニクジュバンニが泣きだした。
嗚呼、そうか。
本命はこっちか……。
腕時計型だけではゴリラ要素のゴの字も
無くなるけどさ……いくらなんでもゴリラ愛溢れすぎじゃ??
とも思ったけどニクジュバンニをゴリラヲタクだと思えば
理解出来なくは無かった。
ま、ゴリラ布教も1つの愛の形かとも思い
当面はベーシックの状態で過ごす事を約束し
なんとか機嫌を取り戻す事に成功したのです。
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