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【完結済】G-form-girl  作者: ボブ
第3章 サンディング王国編
33/178

第33話 G は その顔色を知っている。

 にゅるん、にゅるん、にゅるん、にゅるん!

 にゅるにゅるにゅるにゅる、にゅるにゅるにゅるるん!


「この擬音みたいなオノマトペが五月蠅い!!」


 バナナックルを使ってあの小さなゴブリン狩りを

 私はあれから続けている。


 まぁ未だバナナックルで芯を捉えて

 殴る事が出来ていないので

 ゴリラコンテナで出し入れしながら使い分ける事で

 小さなゴブリンの攻撃を滑らせて()なす事が出来ていて

 戦い易くもなっていた。


 そしてついに打ち止めとなったのか

 小さなゴブリンすら見かける事は減り

 1日辺りの討伐数も4桁が3桁、そして2桁へと減り

 ついに1匹も見かけない日が出てくるようになった。



「はぁ……疲れた……。

 けどやっぱり職員さんの視線が痛い……。」


 冒険者ギルドキホーテ支部に

 ここ最近のゴブリン耳を提出し、討伐位置などを知らせたけど

 まぁそれどころではないのだろう。


 どう見ても耳を数えるのに職員さんが総出で行っていて

 黙々、そして延々とゴブリン耳を数える状況が

 通夜のように見えて仕方なかったし

 何より貯め込んできた事から、これまで以上にきつい視線が

 私にザクザクと刺さっている気がした。


「リラさん、ギルドマスターがお呼びです。」





「ついに元凶でも見つけましたか?

 ここの所、やけにゴブリンの数が減りましたし……。」


「それはお断りした筈です。

 それにここ最近のゴブリンの多くは前のゴブリンより小さいですし

 何より強さが異常でした。

 オークより素早く動いて、力もあるゴブリンの発生源の調査とか

 受けなくて良かったと未だに思っている位です。」


 マルッスギルドマスターはこう言っているけど実際。

 あの時受けていたとしたらどうなっていた事か。


 場合によってはこれまで倒してきたゴブリンに

 一斉に襲われるなんていう非常に怖い事態に

 なっていたかと思うと断って良かったと思うし

 私的にはゾッとする。


「そういえば森の木々が大量に切られていた事件を知っていますか?」


「耳に挟む程度には。」


「そうですか……。

 ところでやはり調査はお引き受けしてくれませんか?」


「そもそもホーレルヒ王国にも冒険者ギルドが

 存在していますよ?」


「はい、あります。」


「そこが行うべき事なのでは?」


「ホーレルヒ王国の冒険者ギルドは本部だけしかありません。」


 ギルド本部、と言うのは1つの国に1つ存在し

 王都にあるものを本部、と呼び

 それ以外を支部、と呼ぶのだとか。


「冒険者ギルド、と言う括りでは確かに同じものですが

 国と言う括りも存在しているのです。」


「つまりサンディング王国側の冒険者ギルドが

 ホーレルヒ王国の冒険者ギルドに対して

 何かを頼むのが(はばか)られると?」


「正確にはサンディング王国側の支部が

 ホーレルヒ王国側の本部に、ですね。」


「ならサンディング王国の本部を経由するのは?」


「それも難しいです。」


 なんでもこのゴブリン騒動はこの辺りだけのもので

 サンディング王国の本部はこれを重要視していないのだとか。


 さらにホーキテの町にとっては問題でも

 すぐ近くのアブラハムナカの町ですら、思った程

 同じような現象が見られていない上に

 ハリーバードの港町は特殊な状況ではあるものの

 魔物被害、という一点で言えば海の魔物の被害が多少ある位で

 陸の魔物に襲われたと言う話すら存在していない。



「つまりほぼホーキテの町だけの問題?」


「そういう事です。」


「おかしいね……、アブラハムナカの町の方にも

 どのくらいかゴブリンは進んでいたし……。」


「それは現状、リラさんが倒しているからこそです。

 それにアブラハムナカの町にはゴブリン討伐の常駐依頼も

 貼られていない筈です。

 討伐証明の納品はここだけになるでしょうから

 どうしてもこのホーキテ支部にしか情報が集まっておらず

 それをアブラハムナカ支部に流したとしても……。」


「被害が無いから、実感がない?」


「恐らくある程度の冒険者がぶつかっている可能性はあります。

 しかしゴブリンの討伐証明を持ち帰る位なら

 そのまま燃やしてしまい、もっと強い魔物の素材を

 持ち帰る方を優先させるでしょう。」


 ああ、強いからゴブリンを見かけた位では

 問題視しない上に、証拠の持ち帰りもしない。


 だから問題視しているのはホーキテだけになるのかな……?


「しかも他の支部や本部に流れる情報はこちらで出した討伐数だけの上に

 それを確認出来るのは上層部だけです。

 ギルドマスター、サブギルドマスター。

 それとフロアマスターと呼ばれる各階の責任者クラスまでで

 1職員が知る事はありません。」


「よくそれで成立してるんですね……。」


 ようは上層部の数人の1人でも問題視し

 情報共有していかなければ、この問題はあくまで

 ホーキテ支部だけの問題、と捉えられるのだとか。


「それに私は元Sランクですが、私が調査に行く訳にもいきませんし

 一応調査員の要請も本部にはしたのですけどね……。」


「問題ではない、と一蹴された?」


「はい……。

 かといって調査に出せるようなランクの冒険者は

 このホーキテ支部には中々立ち寄らないですし

 立ち寄ってもアブラハムナカが目的地で

 あくまで経由地として立ち寄るくらいでして……。」


「依頼出来そうな人が居ないと?」


「ええ、私の中ではリラさん以外には居ないと思っていますが?」



 なるほどね……、だから私なんだって言いたいけど

 それでも駆け出しですよ?

 Eランクには先日上がったし、あとは推薦を取れば

 昇級試験に進めるってだけで

 他の冒険者とは違う、って言われてもね……。


 ニクジュバンニはどうするべきだと思う?


  『現状であれば「ゴリラグナロク」を使えば

   何とか出来ると思われます。』


 却下、却下、却下ぁ……。

 あんな物騒な武器、誰が二度と使うか!!


  『しかしバナナックルでは不安要素が強すぎます。

   未だ大半の力がレベルアップしていない事や

   ゴリラアーマーのレベルアップすらしていない事を

   鑑みれば、時期尚早と言わざるを得ません。』


 ふむ……。


「だけどもし調査をしたとして。

 これまでの流れと話が本当であれば、誰も信じないのでは?」


 今回の懸念点の重要な部分はここだと思った。

 他が把握したとしても、これを問題視しなければ

 もし私が出向いたとして、調査をしてきても

 無駄骨を折りに行く行為であると共に

 正直ハイリスク、ローリターンにしか思えない。


「そもそもホーレルヒ王国にあるっていう本部が

 問題視していない事が、一番の問題な気がするんですけど……。」


 いわゆる裏付けをするなら、ホーレルヒ王国にある

 冒険者ギルド本部、と考えるべきだと思う。


 そこが噛み合っていないからこそ、サンディング王国側の本部も

 問題視していないのではないかと思うのですよ。


「そう言われてしまうとそうなのですよね……。

 ホーレルヒ王国では問題が無いのに、キホーテの町ばかりが

 ゴブリンの被害にばかり合い続けている。

 まったくもって、変な話ですよね………。」


 でも私はそれが事実だと知っている。

 これまで何万のゴブリンを屠ってきたのか

 知っている、唯一の人物だろうし、それをここの職員も知っている。


 そして私は1つ。

 マルッスギルドマスターの顔を見て

 それを受ける事にしたのです。


「おお、受けてくださいますか!!」


「ただ、あまり期待はしないでね。」


 そう言って、私は1階に降りて

 ホーレルヒ王国内から次々と湧き出ている

 ゴブリンについての調査を正式に依頼として受領したのです。



  『何故受けることにしたのですか?』


「あー、私もなんていうか覚えがあってね……。」


 それはマルッスさんの顔、特に黒い目の(くま)だ。

 前見た時には無かったけど、急激に出来ていた。


 ま、あれは十中八九「睡眠不足」だろう。

 それだけ悩み、M眠れない夜を過ごしているのかもしれない。


 少なくともマルッスさんは

 この件を本気で悩んでいるだろうと、そこで判断したのです。


「鬼が出るか邪が出るかは知らないけどさ。

 何とか出来るならしてあげたいじゃない?」


  『睡眠不足の解消、ですか?』


「それ以外に何か?」


 私自身にも寝不足と言う覚えがある。


 36時間ぶっ通しで働いて、寝にだけ家に帰るも

 寝る時間なんて3時間も確保出来れば良く

 休憩時間すら食事もせずに睡眠に割いていた

 2、30代の地獄を今でも夢に見る。


「それが自分で何とか出来ないと言う大変さを

 私は知っているからね……。」


 そして私はホーレルヒ王国へと向かったのです。

星5点満点で「面白い」や「面白くない」と

つけていただけると、作者が一喜一憂します!

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