第32話 G と ゴリラ武器(ウェポン)
ゴリラ武器「ゴリラグナロク」。
切れ味万能の武器だけど、まず切れる範囲が広すぎる。
だけどもう二度と使う気は無いのです……。
『ならば別の武器を出せば良いのでは?』と
ニクジュバンニは軽く言ってきた。
なんでもこのゴリラ武器とやらは
ランダムで顕現、つまり手の中に出てきて
それ以降は普通に私専用の武器として
ゴリラコンテナ内に入れっぱなしにしておいて良いらしい。
「つまりゴリラグナロクに比べてもっと大人しい
武器を顕現させれば良いと?」
『Да、Нет』
「何故、ロ〇ア語……。」
『Так、Ні』
「ここでまさかのウ〇ラ〇ナ語!?」
※直訳で「はい・いいえ」、「まぁ、そうだね」的な意味。
「とにかく出てこい、ゴリラ武器!!」
『武器ルーレット!ジャカジャン!!』
「何か前回見たルーレットと違う……。」
前回は普通によく見るルーレットだったのに
今回は何故か内側と外側が逆回転してる。
外側にゴリラとバナナが描かれていて
何故か内側に人みたいな形がしたものがあって
頭が矢印になっていた。
『だ〇いじょ〇ぶだぁ~!』
「ル〇レ〇トマンとか知らない人、多いと思うよ!?」
『さぁ、当たるのはけんち〇ん賞でしょうか!
それともマ〇シー賞でしょうか!!』
「絵柄は2つなんだけど大分違う!?」
『それともココ〇岡のダイヤモンドでしょうか!』
「最早、武器じゃないものが!?」
あと真ん中の矢印が回転に苦しんでいる姿が
今のテレビ業界では流せない絵面にしか見えなかった。
『ジャン!残念賞のバナナでした!!』
「武器じゃない……?」
『マスター、よくご覧になってください。』
外周の絵柄を見るとゴリラとバナナが半分づつ………?
『ここです、よくご覧になってください。』
ニクジュバンニに言われて見た場所は
確かに超小さくゴリラとバナナが描かれていた。
多分全体の1%にすら満たない位、小さく……。
『ここが武器です。』
「え?じゃあ残りは?」
『残念賞のバナナとゴリラです。』
何、残念賞のゴリラとか思っていたけど
何故かこの武器ではないゴリラ部分を引き当てると
ミニゴリラかミニミニゴリラかミクロゴリラの数が増えるとか。
「あ、なんかちょっとやる気出てきた。」
つまりほぼ半分が武器で無くとも
ミニゴリラとかが増やせるなら戦力として期待が出来る。
手のひらサイズの割に、私と遜色ない力を持ってるし
小さいながらも分身体みたいな扱いが出来るから
むしろ武器より嬉しいかもしれない!
なんて考えは甘かったのです……。
『はい!本日101回目のプロ……バナナです!!』
またバナナだ……。
と言うかゴリラにすら止まらないこのルーレットに
そろそろロマンティック、じゃなかった。
イライラが止まらなかった。
「こいっ、そこじゃない!違う!もっと先!!」
何かギャンブル熱が入り始め
せめてミニゴリラ系か武器の1つを手に入れたいと
躍起になってルーレットをし始めて108回目。
【ゴリラ武器「バナナックル」が顕現されました。】
「きたぁぁぁぁぁ!!って………バナナ?」
『バナナックルです。』
殴る場所がバナナの形をしたナックルでバナナックル……。
ってこれどうみてもメリケンサックだよね?
他にもカイザーナックルとかナックルダスターとか言うらしいけど
私的にはメリケンサック、の方がしっくりくる。
『広義的には籠手などの防具もナックルダスターに含まれますので
名称的にも問題はありません。』
「そうなんだ……。
だけど殴る部分がバナナなのもそうだけど
これつけなくても普通に殴れば良くない?」
『ゴリラ武器にただのバナナがくっついた
ナックルダスターが出てくる訳がありません。』
「なのかな……。」
半信半疑で装着。
ジャブ、ジャブ、フック、ストレート、アッパーと
シャドーボクシングの真似で拳を突き出しても
特にこれといって変わりがあるようには思えなかった。
『武器なのですから当てなければ意味が無いかと。』
突然、ニクジュバンニに真っ当な事を言われた。
そう言われればそうか、と近くにあった木に
全力で拳を当てた。
にゅるんと何故か聞こえる擬音でしか
見る事が無いような音が聞こえた……。
私は間違いなく、木のど真ん中に拳を当てた筈。
だけどこのバナナックルが滑り
木の左側に思いっきり倒れ込んでしまった。
「なにこれ……。」
流石に全力はまずいと、軽く木へと次々と殴っていくけど
必ず左か右に拳が流されていった。
「……………不良品?」
『違います、マスターの扱い方が間違っているだけです。』
「ナックルなのに殴って間違ってるとは……。」
ニクジュバンニの説明はこうだった。
まずバナナックルの特性は「滑る」と言う事らしい。
なら「バナナックル」ではなく「バナナの皮ナックル」では?
と抗議するも「語呂が悪い」という1点を理由に却下された。
そしてこのバナナックルが滑るのは、何も殴るのは
木や魔物だけではない、と言う事だった。
『まず魔物の攻撃、武器でも拳でも魔法でも
このバナナックルで殴る事で滑ります。』
「ほう!」
魔法が滑る、と言う部分だけで私は興味を持った。
つまりこのバナナックルは相手の攻撃を滑らせて逸らす事が
主な利用方法なのだとか。
「……………ゴリラは足短いから、拳が滑ったら
どう攻撃すべきなのか気になるんだけど?」
『真芯を撃ち抜けば滑りません。』
「はい?」
私が木を殴った際に左に右にと滑ったのは
芯を捉えていないからなのだとか。
芯を捉えれば、全く滑らず
芯を外せばなんでも滑る、そういう武器なのだそうだ。
『審判のジャッジが完璧な野球のようなものです。
フックだろうとアッパーだろうと、セルフジャッジではなく淡々とした
メカジャッジ式で間違いなく真芯を捉えなければ滑りますし
捉えれば滑らないだけです。
拳の挙動や感情などに左右される事は一切ありません。』
「ピッチャーなら大歓迎だろうけどさ……。」
『ゴリラコンテナに入るのですから
真芯を捉えなくても、装着状態での出し入れをすれば
これほど有用な武器は無いと思われます。
魔法はものにもよるでしょうが、単発系なら
滑らせる事が出来る訳ですから。』
「そだね、まぁ自分の足に当てないように滑らせる必要性は
あるかもしれないけど……。」
『大丈夫です、キーパーがグラウンドの左ラインに向かって
投げたサッカーボールが「ボールに加わった右回転」と
「風の影響」でグラウンドの右ライン際に落ちたのを見て
監督にキーパー交代を告げられるよりはマシです。』
「人の恥ずかしい記憶を覗くな!!
横投げしか出来なかったから
回転が掛かっちゃったんだよ!?」
『身長が低いのにキーパーという謎の立ち位置に
疑問は無かったのですか?』
「誰が悲しくて1メートル手前から全力でボールを蹴られて
それをキャッチするなんていう苦行と言う名の練習を
強制されているキーパーなどという役割をやりたがる人が居るのか、と
今なら小一時間位問い詰めたい気分だけど?」
背が高いから、身体が大きいからキーパーではなく
当時は痛い思いをしたくないからキーパーはやらない。
だからこそ押し付けられたキーパー……。
そんな時代だったなぁ、と
思い起こしによる、精神的ダメージを
私は受けていた……。
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