第30話 G、ゴブリンクイーンの存在を知る。
私はマルッスさんの依頼を断ってからも
毎日のようにゴブリンを狩り続けた。
但し、今度は一切の報告をせず
狩る事にしたのです。
それによって、ゴブリンの耳を含めた遺体は
次々とゴリラコンテナの中へと蓄積されていった。
私が断った理由?
正直胡散臭いからだ。
ギルドはそれぞれの町に大抵支部、と言う形で
存在している。
あの後気になって、アブラハムナカの町の
衛兵でもあるモドン隊長に確認をしてみた。
そしてホーレルヒ王国が小国でも
キチンと冒険者ギルドが存在していると聞いたのです。
なら普通はホーレルヒ王国の冒険者ギルドが
する事では無いのだろうか。
もしくはホーレルヒ王国にある冒険者ギルド側に
問題がある、もしくは問題そのものだとしたら。
どちらにせよ胡散臭い上に面倒事としか思えない。
『間違いなく厄介事でしょう。』
「ところで気にはなってたんだけどさ……。」
『なんでしょう』
「最近のゴブリン、武器持ってなくない?」
『そう言われるとそんな気がします。』
私がこの世界に来た時に遭遇したゴブリン。
そしてホーキテの町に来てから遭遇したゴブリン。
どちらも何かしら武器を持っていた気がする。
だけどここ最近のゴブリンは
武器1つ持っていない為、鉄屑すら手に入らない。
酷いと石斧なんてゴブリンも居たけど
最近は爪で引っ掻きに来るか、噛み付きに来るか
精々石を投げてくる程度で弓持ちも居ないし
火爆球を使ってくるゴブリンも居ない。
『普通に考えれば被害に合う冒険者が減った事で
武器の鹵獲が出来ていない、とでも
考えるべきでしょう。』
「んー、でも思った程の武器を持ったゴブリン自体
そもそも居なかった気がするんだけど……。」
特に大きな違いは最初に遭遇したゴブリンの武器は
錆っ錆の武器だったけど
この辺のゴブリンの武器は比較的綺麗だった。
『質より量、と言うべき武器も多々ありますね。』
「棍棒とかそんなに作るのは難しい気もしないけど
最近はそれすら持ってないよね……。」
なのに、毎日倒している数が減っている訳でも無い。
なんとも不思議な状況だったのです。
『ゴブリンが新たなゴブリンを生み出すのに必要な期間は
2、3週間程度が必要な上に成体になるにも
2、3か月の時間が必要となります。』
「でも子供と思われるゴブリンも居なかったんだよね?」
『はい、どれもこれも成体です。』
とんでもなく素早く、それこそ生産工場的な場所が
もし存在していたとしても。
これだけ私が狩っていれば、流石にもう少し減っていても
おかしくない、と言うのがニクジュバンニの見解。
だけどニクジュバンニが言うには
そもそもゴブリンは大半がオスで
メスが生まれる確率自体が非常に低いのだとか。
『メスの突然変異種、が最も考えられるケースですが
それでも予測される出産量と成長を鑑みた場合
発生量が予測を大幅に超えます。』
「なら人為的?」
『……………人の手に余るものです。』
「なら………核心?」
『メスのゴブリンに憑りついているとしても
予測をやはり大幅に超えます。
と、すればゴブリンクイーンに
核心が憑りついているとでも
考えるのが一番しっくりきます。』
「ゴブリンキングってのは創作物で聞くけど
ゴブリンクイーン?」
『はい、ゴブリンの女王とも呼ばれるもので
ゴブリンキングがオスならば
ゴブリンクイーンはメスですが
特性がかなり違います。』
なんでもゴブリンクイーンと言うのは
キングと違って全くその場から動けない位巨大で
蟻のような感じなのだとか。
オスは働き蟻のように、栄養を集めに動く。
クイーンはその栄養を子作りの為に摂取し
時にはオスすら食べるのだとか。
「もうアントクイーンに改名した方が良くない?」
『ゴブリンですから、そして核心が
絡んでいるなら人為的なものです。』
核心は全部で108個、この間1つ消滅させたので
残りは107個になるけどその使い方を始めて教えてもらった。
まず1人目が血を核心に垂らす事で
核心が目覚める。
そしてその近くにあるそれ以外の血に対して反応し
そこに憑りつくのだそうだ。
『核心を目覚めさせたものも
憑りつかれた者も一蓮托生。
核心が壊されると共に
どちらも死にます。』
「………あれ?って事はこの間の人型オーガも?」
『世界のどこかで突然死した人物が居た筈です。』
「なんでそんな事するかね……。」
それは邪神による甘事が聞こえるのだとか。
そして最初に血を垂らした者は、憑りつかれる相手に対し
自らが持つ欲望のようなものを叶える存在となるのだとか。
「つまりあの人型オーガは1人目の願いとして
あのように暴れていた?
そして今回のゴブリンが異様に多いのも
何かしらを叶える為に動いていると?」
『そう考えるのが私の立場と知識から言える事です。』
「ならマルッスさんはシロって事かな?
討伐されたとすれば、1人目がマルッスさんなら
調べない方が得策って感じもするけど。」
『どうでしょう。
どちらにせよ、面倒事ですが
核心絡みだとすれば
マスターは面倒でも絡まなければなりません。
それが本来の「お仕事」ですから。』
「おかしいな、お願いレベルだった筈なのに……。」
『どちらにせよ一緒です。
もし核心持ちであれば
核心を取り出せば
憑りつかれた方は砂のように崩れ落ちても
また再利用が望めます。
マスターがこの世界から消滅させねば
また同じような事が起きるのです。』
「ま、ゆっくりやるよ。
1つ消滅させれば100年は復活が伸びるんでしょ?
放置はしないけど、急ぎもしないよ?」
『はい、1つ1つ確実に潰していく事が重要です。』
「ならする事は……、ゴブリンを根絶やしにする事からだね……。」
『その意気です。』
核心絡み、だけどそれは現状では
予想で予測であって、確定事項ではないのです。
だからこそゴブリンの根絶を目標に
私はゴブリン狩りを続けていったのです。
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