第3話 G、水を汲む。
「うーん、やっぱり思っていたのと違う……。」
結局ニクジュバンニがひらめいた無限樽は
飲料水を確保するべく、私が降り立った森に近い
湖の畔で水を汲んではゴリラコンテナへと収納するのに
役立っていたのです……。
ゴリラコンテナ魔法はいわゆるアイテムボックスみたいなもので
中は異空間へと繋がっていて、いくらでも物が収納出来て
時間も止まる、ご都合主義の典型魔法だとか。
「しかし何故、飲料水から……。」
『人族は食べなくても1か月くらいは生きられるとされていますが
水分が無ければ1週間と持たないとされています。
この湖は幸い綺麗である事から、飲料水となります。
また健康持ちであるマスターであれば
煮沸せずともお腹を壊したりする事もありません。』
「へぇ…………、ちょっと待って。
健康持ちって何??」
何か不穏なワードが聞こえてきた。
『創造神様がマスターに与えた3つの能力の1つです。』
「………確かお肌がピチピチプルプルになるとか
いくら食べても太らない能力だとか言ってなかったっけ……。」
創造神様とやらは、大層なチートは上げられないけど
いつまでも若々しくお肌はピチピチプルプルで
いくら食べても太る事も無い、全人類の夢のようなチートなら。
そういって貰った気がするんだけど……。
『マスターに与えられたのは「不老」「健康」「隠蔽」の3つです。
不老は肉体の成長最盛期までは成長した後、成長が止まる能力なので
いつまでも身体は若々しいままです。
マスターの成長最盛期は15歳となっております。
またこの世界の成人年齢も15歳となっております。
健康はいくら食べても太らないを補助すべく、胃腸の消化力を助けたりしますが
本来は病や毒、精神的な耐久力を増加させるものです。
隠蔽はこの世界には「不老」持ちは存在しない為、その隠蔽の為に
つけられたのだと推察します。』
「おおぅ……、超チートじゃん……。」
『という建前の上、恐らく邪神の身体の回収に非常に
長い年月が掛かる事から、不老を与えたのだとも推察します。』
「やめてー!それ一瞬、頭を過ったけど
違うと信じたかったから考えないようにしてたのに!?」
『そもそもたかだか人族の一生程度で全てが集まる程
簡単な訳がありません。』
「そ……そうだよね……。」
『という建前の上、恐らく勇者などの拉致被害者は
可能な限り少ない方が良いだろう、と言う創造神様の
ご判断故だと推察します。』
「勇者ってやっぱり拉致被害者なんだ!!」
『勇者が帰れるのは魔王を倒した場合だけです。
前回は邪神討伐で呼ばれた為、元の世界へは帰れず
この世界に骨を埋めています。』
「邪神と魔王って別なんだ……。」
『魔王は魔族の王で、邪神は地上に直接的に関与した神が
天から落とされてなるものです。
今では勇者とその仲間の子孫がこの世界に存在しています。』
「ほぅ……。」
『但し勇者の装備は勇者本人にしか扱えませんし
勇者の能力も子孫には引き継がれませんので
どいつもこいつも基本はただの無能です。』
「言い方ぁ!!」
ニクジュバンニと話をしつつ
樽を湖に沈め、樽を湖から出してゴリラコンテナに入れていると
手が何かに噛まれた感じがした。
「何これ……。」
何かギザギザした歯でがっつり私の手が噛まれているけど
思った程は痛くも無いけど、やけに大きな魚でした。
『この世界特有の魚の1種でアブラマシマスですね。』
「脂……増します?」
名前の最後が「マス」なのは、地球と同じで
サケ科の魚をまとめた総称を「マス」と呼ぶのだとか。
『ちなみに可食は可能ですが、大量に食べると大変な事になります。』
「どうなるの?」
『アブラマシマスは多量の脂質を含んでいるので
大量に食べると下痢を引き起こします。
マスターの場合は下痢は起きませんが、代わりにお尻の穴から
油脂が意図せず漏れ出てきます。』
「なんかバラムツみたいなものかな……。」
『いえ、アブラマシマスは95パーセントが脂質です。』
「それで生きていられるの?」
『はい、一見歯がギザギザで獰猛そうに見えますが
筋肉が殆ど無い為、噛んでも痛くないのです。』
「ああ、それで……。」
『アブラマシマスは売れるのでゴリラコンテナに
入れておきましょう。』
売れる。
この世界のお金の持ち合わせがない私としては
魅力的なワードだったのです。
『アブラマシマスは魚臭さと言う難点はありますが
灯り用の燃料などとして使われています。』
高くは無いけど、脂が豊富で身を絞るだけで
簡単に脂が取り出せるそうで
私の身長148よりかは少々長いこのアブラマシマス1匹で
銅貨10枚程、日本円で1000円くらいはするのだとか。
『運ぶ苦労を考慮したら、安すぎても誰も
採ってこなくなるからの価格なのでしょう。』
私が自分で潰して、脂を採っても構わないらしいけど
まぁ手が魚臭くなるのは勘弁願いたく
水を汲むついでに採れた分だけ、頭を叩いて動かなくなった所を
ゴリラコンテナに次々と収納していった。
そして何故かファンファーレのようなものが聞こえてきたのです。
【ゴリラアーマーがゴリラ能力「無限鋼鉄製樽」をひらめきました】
「さっき1時間待たされたのは何だったのか……。」
『鋼鉄製なら脂を絞っても良いし、煮沸すら出来ると
思っただけなのですが。』
天文学的数値とは何だったのか。
そう思いながらも、便利なので突っ込まない事にしたのです。
星5点満点で「面白い」や「面白くない」と
つけていただけると、作者が一喜一憂します!