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【完結済】G-form-girl  作者: ボブ
第3章 サンディング王国編
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第19話 G、港町の状況を知る。

「たいしたおもてなしも出来ないけど。」


 そういって出してくれたのはパンとスープに

 焼いた魚だった。


「いぇいぇ、私ここ暫くこれ(バナナ)だけだったので……。」


 バナナ以外のものを口にする。

 それはこの世界に来て、初めての事でワクワクしたものの

 すぐに私の手と口は止まった。


ふぁ()……ふぁふぁい(かたい)……。」


 パンに(かぶ)り付くと、まずパンに歯が立たない。


「何してんだ、嬢ちゃん。

 スープに浸さねぇと硬くて食えたもんじゃねぇぞ?」


 あー、なんかそんなのあったね……。


 パンが硬くてスープに浸さないとって

 創作物には多くある描写だ……。


 ただ目の前にあるパンはどちらかと言うと

 丸いパンではなく、薄い感じのパン。

 ナンにも見えるけど、膨らんでいる感が無く

 そもそも焼いた魚が乗せられていた。



  『無発酵のトレンチャーパンですね。』


 ニクジュバンニの説明は私にしか聞こえないので

 静かに聞いていると、まずトレンチャーパンと言うのは

 上に料理を乗せる為のパンなのだとか。


 そして最後はパンすら食べる、というものだそうだ。

 王侯貴族等になると、食器を使う人も居るけど

 このトレンチャーパンを食べると言う人も居て

 その主たる人々が庶民なのだとか。


 それと無発酵とはこの場合、発酵させていないと言うよりは

 麦などの穀物を挽いたものに水を入れて混ぜ

 休ませたものを指すのだとか。


 本来のトレンチャーパンはビールを加えて発酵種を

 作るものらしいけど、これは使われていないらしい。


 イーストや天然酵母を使ったものとは違い

 微妙に膨らんだり、全く膨らまなかったりと

 都度、状況により変わるのだとか。


 うどんのようにした訳でもないので

 薄くもガッチガチなのだとか。


 ただこの世界に酵母が無い訳ではないのだとか。

 ワインを用いたもの、リンゴなどを使ったものなど

 多種多様にあるらしい。


  『良く食卓を見て下さい。

   ここにはお酒が存在していません。』


 そう言われると、ワインを水で薄めてとか

 そういう感じも無く、飲んでいるのはスープ。

 それとコップのようなものに入れられているのは……白湯だった。


 それだけかと思ったけど

 スープも良く味わうと魚の出汁がしっかり出ていて

 非常に美味しい潮汁のような感じはしたけど

 野菜などが入っている形跡もない。


 この世界、野菜も高い?と思っていると

 ニクジュバンニが決して高いものでは無い、と

 声に出して聞くまでも無く帰ってきた。



「悪ぃな、この町じゃほぼ魚でな。

 麦は手に入るが高くてな……。」


 ニクジュバンニはこのホッコイさんの言葉に対しても

 麦も決して高いものでは無く、麦か蕎麦が

 庶民の主食だと言うのだ。



「それって冒険者ギルドとかが開店休業なのと

 何か関係あります?」


 その言葉にホッコイさんはビタっと止まったけど

 食事の後に教えてくれた。


 まずこのハリーバードの港町。

 国には属しておらず、基本町長が最も上となるのだとか。


 そしてこの港町を出てすぐ、隣接する国があり

 ホーレルヒ王国という国だとか。


 昔から国に属するように言っては来ているそうだが

 断っているのだとか。


 その理由は、ホーレルヒ王国とこのハリーバードの港町の

 位置関係にあるらしい。


 まずこの辺りで海岸状になっている場所は

 この港町の湾内に限られていて

 あとは切り立った崖や、私が流されてきたハルマヘール川のような

 急流地帯がある程度なのだとか。


 ホーレルヒ王国は非常に小国で

 このハリーバードの港町と言うのは喉から手が出る程欲しいらしい。


 しかしその属国化の条件が相当酷いのだとか。

 まずニクジュバンニ曰く、戦略物資ともなりえる塩。


 これを国有とし、国以外が扱えないときている。

 さらに魚介類なども含めて、非常に高い税制を求めているのだとか。


 それにこの港町は反対し、一時期はホーレルヒ王国が

 攻めてきた事もあったのだとか。


 ただここに居る人たちは多くが漁師で

 海で鍛え上げられていた事もあり、抵抗出来て以降

 ホーレルヒ王国はやり方を変えてきたのだとか。


 このハリーバードの港町の周囲、ホーレルヒ王国との境に

 壁を建造し、関所を配置し非常に高い通行税を取る様になったのだとか。

 それによって、この港町から出ていく塩に魚介には

 高い税金が掛かり、それによってホーレルヒ王国は

 属国化せずに、税収を賄う方向へと舵を切った事で

 ハリーバードの港町を属国とする事をしなくなったのだそうだ。



「つまり出ていくものから同じ利益を取っていると……。」


「そんだけじゃねぇ、入ってくるものにもだ。」


 それによって、最低限の麦を入れるのが手一杯で

 野菜や果実などはまずお目にする事も難しいのだとか。


 麦も主食と言うよりは魚と併用する形でギリギリな為に

 簡単に作れ、安価な筈のエールすらこの港町では

 高級品になるのだとか。


「だからつって、町長の決定を恨んじゃいねえ。

 属国になったとしても、結果はそう変わりはねぇ。」


 それでも多少は益があったと、当時の対応は

 間違っていた、とする人々はこの港町を去ったとか。


 そして元々貿易の為に来ていた船なども

 寄港する事はなくなったのだとか。



「そりゃそうだ、他所いきゃ金になるが

 ここじゃ高い税金取られて商売にもなりゃしねぇ。

 冒険者も来なくなり、今ではかろうじて

 商業ギルドが残っている程度だ。」


 商業ギルドは本来、属国の商人に対しては

 税金を取り、そしてそこから商業ギルドの手数料を引いて

 国に税金を納めるけど、国の税金は無いので

 丸々手数料だけを取るだけの状態なのだとか。



「商売すんにゃ、商業ギルドの登録は世界法で必須だ。

 俺達も漁師でありながらも商人にならねぇと

 ホーレルヒ王国で魚なんかが売れねぇからな。」


 少なくともホーレルヒ王国の国境。

 そこで取られる税金が、このハリーバードの港町にとって

 鬼門なのだけど、1つ気になった事もあった。



「船で他に持っていくとかは?」


「無理だ、ここから一番近い港でも片道で2ヶ月は掛かる。

 その間に魚は腐るし、塩漬けしたとしても

 そこは港町だ、苦労の割に身入りにならん上に

 魔物だ何だと危険も多い。」


「つまり、国境を通らずに腐らせずに

 物が売れ、高い税金が掛からずに

 物が手には入ればベストな訳だね?」


「そりゃそうだが……。」


「ならこの一宿一飯の御礼はそれで決まりだね……。」


「「?」」


 ホッコイさんと奥様は不思議な顔をしていたけど

 私にはある程度、それを可能とする方法がある。



  『しかしマスター、それでは本当に一時的な効果しか

   得る事は出来ませんよ?』


 そうだね。

 私もそうだと思う。

 だけど、今食べている魚。


 塩が振られただけではあるけど

 非常に美味しくいただけている。


 この世界に来て、初めての動物性たんぱく質。

 こんな美味しいものが多くの税金によって

 多くの人達が食べられないでいるかもしれないなんて

 勿体ないし、何より私自身がこのやり口に納得がいかない。


 ただそれだけ。

 正義は人それぞれ、立場によって異なるんだし?

 私の正義を貫くってのも、それはそれでありなのでは?


  『マスター、鏡見ますか?』


 いや、結構。

 多分、今の私は悪い顔してると思うからね……。



「ところで嬢ちゃん、確認何だがよ……。」


「なんでしょう」


「なんでそんな格好してるんだ?」


「……………そいつぁ聞かない約束だよ、おとっつぁん…。」


「……………。」


 そんな約束はしている訳もなく

 別にホッコイさんが父親でもないけど

 これで誤魔化せたかは知らない。


 とりあえず聞き直してこなかったのでこれで良しとした。

星5点満点で「面白い」や「面白くない」と

つけていただけると、作者が一喜一憂します!

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