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【完結済】G-form-girl  作者: ボブ
最終章 決戦編
174/178

第174話 対 獅子宮のレオン。 その2


 レオンの全身が真っ赤に燃え、大剣すら炎に包まれてから。


 一体、何合打ち合ったのかすら解らない頃。


 レオンは片膝をついていた。



「お前……何者だ……。」


「あ?俺はオークビッツ族のタブロクだ。

 それ以上でもそれ以下でもねぇ。」


「何で俺の炎が効かねぇ……。」


「お前、聞けば何でも答えてもらえるとでも思ってるのか?

 戦っている相手が答える訳ねぇだろ?」


「チッ……。」


 レオンは自らが燃える事、そしてその炎を大剣に移し

 切っていく事で炎によるダメージが与えられる。


 そしてジワジワと真綿で首を絞めるように

 タブロクを追い込むつもりでいた。


 だが結果はタブロクは炎によって一切ダメージを受けていない。


 そして1合打つ度に、その攻撃の軸をずらしてくる。


 これまでの人生で起こらなかった事だ。


「さぁ、さっさと背中を見せて逃げてみろ。

 その時はお前の死ぬ時かもしれないぞ?」


 獅子、ライオンの獣人たるレオンに対し

 逃げろという言葉は効果覿面だった。


 何しろ獣人の頂点と自らが名乗っている

 獅子の獣人が逃げるなどありえない。


 ただそのありえない行動すらタブロクは潰しに来ている。

 獅子の獣人が背中を見せたとして

 常識で言えばありえない。


 それがタブロクの中で言えばありえると

 言っているのだから。


 そしてレオンの持っていた獅子の獣人たる誇りをも煽る。

 以前とは比べ物にならない位、タブロクは冷静だった。


 いなし、煽り、それでいて冷静に見ている。


 今のタブロクは自らの非力さを重々承知していて

 尚且、今の自分に出来る最も得意とする素早さを生かした

 戦い方が出来ているのは三平に師事した結果なのかもしれない。



  『それにしては修行期間短いですよね?』


 それは私も思ってるけど

 決して口に出す事じゃ無いよね、ニクジュバンニ……。


  『まぁ、あの調子なら勝てるでしょう。

   以前の様にカッとならなければ、ですが……。

   しかし炎を空間魔法で消しながら戦うとか

   意外な才能ですね。』


 ニクジュバンニ曰く、レオンの炎がタブロクに届かないのは

 タブロクの表皮に纏わりつこうとする炎を部分的に

 空間魔法によって消しているからであって

 普通に戦えば見て解るような火傷を負っていても

 おかしくないのだとか。


  『あのレオンと言う獣人もただ大剣に炎を纏わせているだけでなく

   効果的にタブロクにあたるように燃え盛らせている。

   だけどその全てを部分的にタブロクが消しているからこそ

   炎が当たっているように見えて、実は当たっていない。

   面白い光景です。』


 そんな中、私には遠赤外線効果だの

 遠火の近火というワードが次々と浮かんだ末

 豚の丸焼きまでイメージとして出てきたが

 今、話す事では無いと口を瞑んだ。


 あれ、中は熱くないのかな……。


  『あれは着ぐるみではありませんよ?』


 知ってるよ……。


  『熱いに決まってるじゃないですか。

   少なくとも表立って見えていないだけで

   低温火傷は起きていますよ?』


 まぁ、熱だからね……。



「成程な……これだけ炎の近くに居てあれだけ動いて。

 汗の1つも出ねぇと思えば……。

 お前、匂うんだよ。」


「お前も汗かかないだろうが……。」


「獅子の獣人は肉食獣だから、体温調節は舌でするんだよ!

 だがお前は僅かながらに汗を出す。

 しかもそれが臭いとなってこうして俺の鼻に知らせてきてやがる。」


「それがどうした?」


「お前、表向きは火傷も何もねぇが熱だけは受けてるな?」


「それはお前も一緒だろうが。」


「はっ!炎を発する俺が炎の熱さに負ける訳がねぇだろうが!!」


「だからどうした?」


「俺の攻撃は決して無駄じゃ無かった訳だ!」


「…………お前、馬鹿だろう。

 お前も熱に負けないってだけで熱自体はどうせ身体の中に

 蓄積されてるんだろう?

 自分でいったじゃねぇか、舌で調整するって。

 さっきから口を噤んでいるんだから逃がせてねぇんだろ?」





  『どっちもどっちですね。

   豚も発汗はせずに粘液で調整する生き物ですから……。』


 そこまで動物には詳しくないけどそうなの?

 ならどっちもただの痩せ我慢って事かな?


  『そもそも自らが炎を纏っている方が

   どう考えても不利ですよね。』



「だからどうしたと聞いている!

 百獣の王たる獅子の獣人がそう言われて

 はいそうですかと退く訳が無かろうが!」


「いや、退けば良いだろうが。

 恰好を付ける為の気勢など無意味だ。

 それは俺が最もよく知る事だ。

 見るんだ!俺の師匠の姿を!

 たった1枚、褌をつけるだけで恰好をつけるなど

 無意味だと身体で語る位なのだぞ!」



  『ただの変態ですよね?』



 うん、私もそう思う。

 いや、もしかすれば特殊な能力で褌以外身につけられない。

 そんな人物なのかもしれない?


 三平に限ってそれは無いか……。



「……………そ、そんな奥深い意味が……。」



  『馬鹿同士の戦いですね。』


 あんたさっきから辛辣だね。


  『ええ、「学園の階段」とやらでは出番もへったくりも

   ありませんでしたから。

   その分、こちらではキチンと出番を作らないとなりません。』


 ほぼ終盤にする事じゃないと思うけどね。



「さて、時間だ。」


「……………時間?」


「がっ!?」


 それはレオンの身体が丁度真ん中辺りから。

 渦を巻くように捻じれ始めたのだった。



「空間魔法系の奥義である鳴門だ。

 ああ、最早お前はそこから逃れられない。

 師匠は仰った、光属性と闇属性を混ぜないように混ぜる。

 それこそがこの空間魔法系の奥義であると。

 そして師匠と足繁く通った!

 かのラメーンと呼ばれる食べ物に1つだけ浮いている!

 ナルトを見て、実物の鳴門を知らない俺が

 1週間の間、想像力を膨らませた結果!!

 この奥義が誕生したのだ!!」



  『そんな事で出せるなら最初から出来たのでは?』


 言ってる事は滅茶苦茶だけど、ラーメンのナルトは

 鳴門巻き、って名前だしあの渦が鳴門の渦に例えて

 名付けられたってのは合ってるよ。


 あれでイメージ出来るか、と言われると私にゃ無理だね……。



「なっ、何故だ…何故動けねぇ……。」


「捻じれ始めた時点でもうお前はその空間に囚われてるんだよ。

 しかしこの奥義には重大な欠点がある。

 まず対象はお前そのものではなく、その場所に対してしか発動出来ない。

 さらに発動までに非常に時間が掛かる。

 さらに発動後、実際に捻じれ始めるまでの時間が決まっている。

 今と言う時間、この場所、奥義が発動する時間と場所は予め

 俺が決めたものだ。あとはお前がその中心に立ち、時間さえくれば

 勝手にお前は奥義である鳴門の餌食になるって訳だ。」



  『習得方法は雑なのに、奥義自体がキチンとしてますね。

   確かに相反する光属性魔法と闇属性魔法をそれぞれが

   光と闇を失わないように一定率で混ざればそれは空間魔法です。

   但し、どちらかと言えばブラックホールとホワイトホールが

   渦を巻いている、そんな状態でしょうか。』


 いや、私そっち系は苦手だから……。

 もう少し解りやすくプリーズ!



  『理論の説明だけで2週間ほど掛かりますが宜しいですか?』


 いや、もう結構……。

 っていうかそれって知らずにタブロクは使ってるって事だよね!?



「そしてこの奥義の最大の欠点だ。

 近場にあるものを最終的には全て飲み込んでしまう。

 だからこそ、お前には離れてもらう必要があった。」


「お前……最初から相打ち覚悟か……。」


「それがどうした、お前を倒すのに必要であると判断したからこそ

 この奥義を使用した。気分はどうだ?」


「……………それなら悪くねぇな。

 少なくともお前を道連れに出来るならな……。」


「そうだな、それが出来るならな。」


 しかしタブロクは2本の短剣を円状になるように目の前を裂き

 そこへ飛び込むと、次の瞬間には私のすぐ近くに居た。


「終わったぞ。」


「はぁ!?」


 なんでもタブロクは空間を切り裂いて

 ここへ移動し、そして閉じたらしい。


 これが無ければ相打ちなのだが、タブロクはこれが出来るようになったからこそ

 獅子宮のレオンを1人取り残す事が可能となったとか。



「あいつが勝敗と生死まで気にしていたんだ。

 これで俺が勝って、あいつが負けて

 俺が生きて、あいつが死ぬ。

 あいつの望み通り、両方の決着をつけてやっただけだ。」


 レオンはあの空間からもう逃れる事は出来ないそうだ。

 だからレオンは吼えた、だがそれに近づこうとすれば巻き込まれる

 タブロクの奥義の前に、誰かが助けに入っていった事で

 犠牲者がどんどんと増える。


 そして最後は誰も近づく事無く、助けに入ったと思われる聖騎士が

 捻じれに捻じれて文字通り、物理的に散った。


 胸の真ん中から捩れ、渦状になり

 闇は身体を吸い込むように、光はその吸い込んだ身体を吐き出すように。

 それぞれが逆回転しつつ、螺旋状に渦を描いていく。


 そして身体が限界まで捩れれば弾ける。


 見ていて決して気持ちのよい奥義では無い。

 それが助けに入った関氏だけでなく最後はひと際大きな叫び

 それと共にレオンが散って暫くしてから捻じれは収まった。



「どうだ!これが師匠から教わった奥義『鳴門』だ!」


  『このドヤ顔が無ければ格好良かったのに……。』


 タブロク自体は冷静を装っているけど

 顔だけは完全なドヤ顔だった。



「どや!わいの弟子の強さは!」


 あ、ここにももう1匹ドヤ顔なのが居たわ。

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