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【完結済】G-form-girl  作者: ボブ
第10章 オラクル聖王国編
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第166話 G と 天蝎宮 の ピオーネ



「くっ……やはり化け物!私の毒から抜け出すなっ!?」


 ピオーネはリラの変化に気が付いた。


 すぐに腕を上げ、片膝を上げた防御姿勢を取ったものの

 海上、それも海を完全に抜けて宙に浮くほどまでに吹き飛ばされた。


 ピオーネはその衝撃にギリギリ耐え、水属性の魔法の力で

 海上に立ち、すぐに膝を折った。


「きっ……規格外にも程が過ぎる………。」


 ピオーネの右肩から先が全て無くなっていた。

 そこから赤い血が流れだしたものの

 それすらも魔法によって止めた事で、失血死そのものを逃れたものの

 謎の衝撃の強さに、身体が震え始め

 歯がカタカタと鳴り始めた。



 そして海から水柱が立ち、収まった所には

 リラ、神器であるゴリラアーマーが立っていた。


 これまでの真っ黒い毛が茶色へと変化し

 顔付きすらもこれまでと違うものだったが、その左手を見ただけで

 リラだとすぐに解った。



「私の腕っ……。」


 リラはそれを歯で噛み千切り、咀嚼。

 そして口からペッと吐き出した。



「ウゴホォゥ……。」


 これはゴリラアーマーレベル3の最終形態「プリミティブ(原始)フォーム」


 過去にフューリアス(怒り狂う)フォームを使った時と同様。

 リラには制御不能の形態であり、意識も無い。


 その代わり、意図的な制限をかけたりする事が無く

 リミッターが切れた状態となる事から、力の限界点が高くなるメリットと

 その野性的な行動は目の前の敵と視認した相手を

 殺すまで続く、残忍なフォームでもあった。



「……………野蛮な……。」


「ウッホホゥ……。」


 今のリラ、と言うより原始フォームのゴリラアーマーにとって

 野蛮、と言う言葉は誉め言葉にしかなっていなかった。


 そしてここから蹂躙、と呼んでもおかしくない光景となった。

 リラはあっという間に距離を詰め、反転し逃げようとしていたピオーネの髪を掴んだ。


「ひっ!?」


 それがただ掴んだだけなら良かった。

 もう片手を使い、無理矢理髪を引き抜いたのだった。


 しかもかなりの量を纏めて。

 それで髪だけが抜ける、などと言う事は決してない。


 頭の皮膚すら剝がれていく、絵面にする事すら躊躇われるような光景……。


 それに最早、声にもならない叫びをあげているピオーネに

 原始フォームのリラが驚く事等無い。


 何しろ意識が無いのだから。


 かろうじてニクジュバンニには意識があったが

 考えを伝えるにしても、それを伝えるべきリラの意識が無い。


 ニクジュバンニの制御下にありながらも

 原始フォームは一度目の前の獲物を捉えたが最後。

 決して手を緩める事等ありえなかった。


 間髪入れずに腕が、足がもがれ四肢全てが無くなったかと思えば

 それを齧っては、くちゃくちゃと咀嚼してから肉や骨を吐き出していた。


 さらにこの原始フォームは悪質だった。

 ゴリラ癒しの魔法を使い、さらにはそこに本来使うべき魔力より

 非常に少ない量にまで抑えた事で、四肢がもがれた部分が

 薄く皮が再生し、失血死する事を許さなかった。


 そして拷問とも言える一方的、猟奇的な行動を取っていった。

 だが、決してリラが望んでいる訳でも無く

 ニクジュバンニが望んだものでも無かった。


 原始フォームと呼ばれる特殊なフォームそのものの本質だった。


 こいつが死んだら鮮度が落ちる……。


 これは獲物、私の食料であり糧……。


 特にそれをニクジュバンニははっきりと理解していた。



  『このフォーム……ピオーネとやらの力を吸収している?』



 無暗に原始フォームはピオーネを喰らってはいなかった。


 その力をこのゴリラアーマーに吸収させていた。


 ただその方法が純粋に野蛮であり、猟奇的に映っているだけだった。


 それも血の匂いに誘われてきたのか、鮫に近い魔物が寄ってきても

 一睨みし、追い返していた。


 あくまで原始フォームが獲物としているのはピオーネだけだった。


 しかも不思議と感じたのはバイザー部分の構造だった。


 本来のゴリラアーマーより少し口が前に出ていて

 口を開ければリラの顔が出る筈の前に

 不思議な空間が出来ている事にも気が付いた。


 原始フォームはその部分でピオーネの力を吸収し

 そして不要な肉や骨部分は全て吐き出していたのだった。


 それだけなら、まだニクジュバンニは理解出来た。

 ピオーネが手に持っていたキャサリンから抜き出した

 母なる核心(マザー・コア・ハート)


 さらにはピオーネの体内にあった母なる核心(マザー・コア・ハート)まで

 そのまま口で齧り始めたのだった。


 一齧りする度に、まるでリラが普段握り潰しているかのように

 光りの塵のように消えて、何故か原始フォームは

 吐き出さずにそのまま飲み込んでしまった。


 それを数回繰り返す事で、1つ、また1つと

 2つの母なる核心(マザー・コア・ハート)を食べてしまったのだった。


 最早、身体と頭だけのピオーネは生きてはいない。

 サラサラと身体が崩れ始めているものの

 それを勿体ない、とばかりに原始フォームは手で掬っては

 口へと運び、そして全てを口に入れ飲み込んでしまった。



  『恐ろしい………。』


  『何を恐れているのです?ニクジュバンニ。』


  『……………その声は……。

   いえ、しかし………。』


  『貴方は私が居ない間、声を忘れ

   私と言う存在すら忘れたのですか?』


  『それはありません!しかし!』


  『貴方にも思う所はあるのでしょう。

   ですが私は『違う!そんな訳が無い!!』………。』


  『貴方は絶対にゴリラの神様ではありません!

   彼の存在はすでに消滅してしまったのです!』


  『なら私は何なのかしら?』


  『さぁ、私が知った事ではありません。

   フューリアス(怒り狂う)フォームに次いで

   このようなフォームを扱わせるなど………。』


  『リラを殺した貴方がそれを言うかしら?』


  『……………まぁいいわ。

   貴方という眷属がこの任務に失敗すれば。

   どうなるか位は解っているわよね?』


  『違う!私のマスターはリラだけだ!!

   私は最早ゴリラの神様の眷属などではない!

   ただのニクジュバンニです!!』


  『あら、こんな所で決別宣言?』


  『そのようなもの……ゴリラの神様の存在が

   消滅した時にしている!!

   今の私はニクジュバンニ!

   マスターであるリラと共に、この世界の邪神。

   元創造神を復活させる事が任務!!』


  『そうよ、それが貴方の任務。

   だけどもう解っているのでしょう?

   リラの身体にはまだ起動していない核心が1つ埋まっているの。

   全ての母なる核心(マザー・コア・ハート)が消滅すれば

   その核心も消えてしまうの。

   だって母なる核心1つに対して核心は9つあるの。

   そして母なる核心が1つ消えれば核心9つも消える。

   つまりリラはこの全てを終えた時。

   その身体の中から核心が消える事で身体に深い傷を負うのよ?

   リラは生身のただの人間。

   そんな傷を負ったら、生きていられなくなるの。

   そして神器の持ち主であるリラが死ぬ事で

   神器は誰のものでもなくなるの。

   つまり私が回収出来るようになる訳。

   ニクジュバンニ、貴方はいずれ私の下に戻る事になるの。』


  『それが例え事実だとしても、虚偽だとしても!

   私のする事に変わりはない!

   私はリラをサポートする役割であり

   私のマスターはリラです!決して貴方ではない!!』


  『馬鹿な子ね……。

   もう少し頭が良いと思っていたのだけど……。

   まぁいいわ、戻ってきたら貴方がどうなるのか。

   その身でしっかり体感すると良いわ?

   まぁ、まともな意識が保てればの話だけど?』



  【プリミティブ(原始)フォームを封印しました。】



  『しかし今の私はこのゴリラアーマーの全権を握っているのです!

   貴方がどのようなお考えかは知らないが

   神と言う存在だとしても!

   決して思い通りにならないと思っていただきたい!!』



  【外部との通信を遮断しました。】



  『……………一体どうなっているのでしょう……。』



 プリミティブ(原始)フォームが封印された事で

 リラはベーシックフォームへと戻り、そして海の底へと沈んでいった。


 まだリラが意識を取り戻していない事で

 ニンジャフォームへの変更なども無く、そのまま海底へ……。


 そしてニクジュバンニの心には、この邪神の身体と精神の回収と破壊。


 その先にある結果が、間違いなく良くない事だと思い始めていた。


 本当に全ての回収と破壊が済んだ時。


 リラはどうなるのか、この世界は、日本はどうなるのか。


 ニクジュバンニは多くの疑問を持ったりしたが

 最早、世界の記憶(アカシックレコード)にも接続出来ないよう

 自ら通信機能の全てを遮断した。



  『本当に私は……、いえ。

   私達はこの道を進んで良いのでしょうか……。』


 この一連の事をリラが知る由も無かった。



 【ゴリラアーマーがスキルポイント20を獲得しました。】

  スキルポイント合計:20

  バージョンアップ消費:-29


 核心(コア・ハート)の残り数:81

 母なる核心の残り数:9

 邪神の復活まで残り:4500年

星5点満点で「面白い」や「面白くない」とつけていただいたり

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