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【完結済】G-form-girl  作者: ボブ
第9章 逆海底地下迷宮編
163/178

第163話 G と 零れ落ちる母なる核心。



 またか……また母なる核心(マザー・コア・ハート)はここなんだね……。

 男性の大事な場所にある2つの母なる核心(マザー・コア・ハート)

 がっつり握っているリラは、半ば溜息しか出なかった。


 リラは土に挟まれた後、右の拳を力づくで後ろへと土を押し出すように引き

 なんとかゴリラパンチを放ち、外に出るつもりだった。


 しかし突然、リラの周囲の土が何処かへと流れ始め

 暫くすると地下トンネルのようなものが出来上がった。


 それを為したのはカプリだった。

 カプリは同じオラクル騎士団所属である筈のアクオルスに

 母なる核心(マザー・コア・ハート)を掴まれた後

 残った力を使い、自らの足元まで地下トンネルを作り

 そこにリラを誘導したのだった。


 リラはその先で、カプリとアクオルスの話を聞く形となった。

 そしてリラは判断した。

 今はアクオルスの母なる核心(マザー・コア・ハート)を掴む事が最優先であると。


 カプリにとっては賭けでもあったが

 いずれにせよリラを生かす形にした以上、自らの命もこれで終わりだと考えている。

 だがそれ以上に今、ここでアクオルスをリラに殺させる事が

 何よりも最優先であるとカプリは判断した。


 だからこそ、あの四角い土の中からリラを開放し

 自らの真下まで地下トンネルを形成し、そしてリラを誘導した。

 その際に余った土は、全てアクオルスへと向けられていた。


 尖った棘状の土は、どこかに追いやらなければならない。

 そんな土を地上に出す為のものでもあった。



「君、こんな事してどうなるか解ってるのかい?」



「ええ、我らオラクル騎士団。そしてオラクル聖王国の

 裏切者を見逃すなど言語道断ですわ。」



「その結果、君も死ぬ事になると言うのにかい?」



「貴方が死ねば、あの騎士団から抜け出て自由気ままにしていた

 ジェスターそのものすら死ぬと同義ですわ。

 裏切者2人を殺す事に対して私1人の命ならお安いものですわ。

 きっとアッシュ様もお許しになられるに違いありませんわ。」



「君は馬鹿か!?自らが死んでも良いだと!?」


「チビガキ、いえ。宝瓶宮(ほうべいきゅう)のアクオルス。

 貴方は大きな勘違いをしていますわ?」


「勘違いだと!?」


「そうですわ、ただオラクル聖王国に牙を剥く相手と戦って負けるだけなら

 この命を散らせば、アッシュ様もお怒りになられるでしょう。

 しかし裏切者2人を道連れに出来、尚且つ誰もが捉えられなかった

 あの双児宮(そうじきゅう)のジェスターの母なる核心(マザー・コア・ハート)

 一緒であるならば、きっとアッシュ様はご理解して下さるわ。」


「アッシュ様、アッシュ様。

 君はずっとそればっかりだね。」


「当たり前の事を言わないで貰えるかしら?

 私は聖王様に仕えていると言うよりは、アッシュ様に仕えているの。

 私はアッシュ様のご期待に沿えればそれで本望なの。

 確かに第一はこの地面の中に居る、大猩猩に似た少女の抹殺。

 だけど、貴方のようなアッシュ様にすら牙剥く輩を放置しておく事の方が

 私にとってはアッシュ様の為になると考えているのよ。」



「自分の命を捨ててもか?」



「捨てるつもりは無いわ、でも貴方を葬れるこの機会を

 むざむざ見逃す方が、もっと無いわ。」









・その頃のリラ


「なんだかなぁ……、なんで私は地面の中で陽キャの為に

 アクオルスの金〇握ってるのさ……。」



  『それは母なる核心(マザー・コア・ハート)であって

   〇玉ではありません、マスター。』



「って言うかさぁ!!

 なんで心臓を模してる癖に、どいつもこいつも金〇の位置にあるのさ!?」



  『それこそ邪神様、元創造神様に聞く以外無いような事です。』



「っていうかこの握っている感覚が既に嫌なんだけどさ。

 もう潰して良い?」



  『もう少し話を聞くのも1つの手では?

   オラクル聖王国やオラクル騎士団、それにガングレリに限らず

   アッシュ、レオン、ジリスなどこれまで出てきていなかった

   人命すら出てきているのです。

   情報収集の為には時には我慢も必要だという事ではないのでしょうか。』



「その我慢が金〇握って、待機ねぇ……。」


 まぁカプリとやらの狙いは解ったので

 今現在、母なる核心(マザー・コア・ハート)を私は握っていつでも

 握りつぶせる状態で待機してはみたものの……。



「御免、ゴリラアーマーを挟んでいても

 何か私の手が穢れていく気がするんだけど……。」


  『我慢しましょう、ゴリラアーマー経由である以上

   私の手が穢れているのと同義なのですから。』


「さいですか……。」



 その時だった。

 リラが突如地面から腕を引っ張られる形に地上へと引かれると共に

 アクオルスの母なる核心(マザー・コア・ハート)を掴んでいた手に激痛が走り

 リラは無意識に手を放す形となった。


 そのまま空中に放り出されたリラは、身体を捻って地面へと着地。

 カプリとアクオルスが居た場所へと視線を移すと

 燃え盛るような炎を纏った人物が居た。



「貴殿がガングレリ殿が言っていた邪神の使いのリラか。」


 その炎が収まっていくのに合わせて

 まぁまぁ美形、と言うか超イケメンじゃね?って感じと

 あからさまなリア充だろうなぁ、と思うような男性が立っていた。


 手にはお姫様抱っこされている女性。

 まぁ恐らくカプリとやらだろうね……。


 ただアクオルスの姿は全く見当たらなかった。



「私の名は白羊宮(はくようきゅう)のアッシュ。

 オラクル聖王国所属、オラクル騎士団団長だ。」



 私はその男を見ているだけで、いけすかないとかそういう事ではなく

 それ以外にこの男の存在そのものを認められない。


 そんな気分になった。



  『リア充だからですか?』



 だからそういう事ではないって私、考えたよね??

 何か居てはいけない、存在してはいけない。

 そんな人物だと感じ取っただけなんだよ?



  『それが非リア充から見たリア充では?』



 だからそういう事じゃないって……。



「アクオルスとジェスターの母なる核心(マザー・コア・ハート)

 こちらで回収させてもらった。」


 よく見ると母なる核心(マザー・コア・ハート)が2つ。

 アッシュとやらの掌の上にあった。


 あの非常に僅かな時間でアクオルスの持っていた2つの

 母なる核心(マザー・コア・ハート)があっさりと奪われた

 と言う事に他ならないのだろうけど……。


 そのアクオルスが砂のように崩れている訳でも無く

 かといって炎を纏っていたからと言って焼け焦げた遺体が

 どこかしらにある訳でも無かった。


 消滅させる、私の覆滅(ふくめつ)(ゴリラ)デストロイ(破壊)でも無いのに

 その遺体すら残さない……。


 私は自らの身体の震えをほんの僅かに感じると共に

 構えを取って、どんな状況にも対応出来るようにしなければ。


 そう感じ、構えたのです。



「そう構えずとも良い。今回は磨羯宮(まかつきゅう)のカプリの事もある。

 この場は退散させてもらう。

 次、相まみえる時には正面から排除させてもらおう。

 さぁ、帰ろうかカプリ。」


「はい……アッシュ様……。」



 アッシュとやらはカプリを抱きかかえたまま。

 掌に持つ母なる核心(マザー・コア・ハート)と共に吹き出る炎のような

 羽を背中に生やし、あっという間に消え去っていった。



 そして見えなくなると同時に私は膝から崩れ落ちた。



「何、あの化け物……。」


 なんとも形容しがたい。

 ただ立っていただけだというのに、長い時間戦い続けたような疲労感。


 ゴリラアーマーは中の温度も調節されて

 汗などが出る筈も無いのに、多くの汗が滲み出ている事にすら

 今更ながら気が付いた。


 ニクジュバンニからみたアッシュはそこまででは無いらしいけど

 私にはそれが感じ取れた、と言っても過言では無かった。


 あのアッシュとやらと今、対峙していたら。

 そう思うと、いくら健康を持っているからと言っても

 今更ながらに恐怖感が滲み出てきて

 私の身体の震えが強くなっていったのだった。



  『何か「きめぇ」ですよね。

   わざわざ最後に「帰ろうか」「はい」だなんて言いながら

   美男美女が見つめ合いながら空を飛んでいく姿とか。

   どうみてもリア充ですよね。』



「恐ろしいね、リア充と対峙とか……。」


 (あつむ)莉良(りら)、ヲタ趣味へとどっぷり浸かった

 非リア充勢だと気づかされる日だった。


 いや、知ってたけどさ……。

 リア充見ると辛いね、色々とさ……。









 あれから私は予定通りと言うべく

 オプティロン大陸のディメンタール王国を目指した。


 そしてありえない光景を目の当たりにする事となった。


 ディメンタール王国が存在すべき国土には

 木も無ければ草1本生えていない。


 岩のようなものから山すら視界に入らない。

 それはどこまでも黒い大地が広がるだけだったのです。


 地平線、とは比較的近い距離までしか見えないものだと

 その後も歩き続けるも、どこまでも真っ黒い土しか見当たらない。



「それどころかこのキラキラ光る地面とか何だろうね。」


  『恐らくですが非常に高熱によって

   変質したものではないかと。』


「地面もある程度掘れば綺麗な土の色なのは

 これ燃えたって事かな……?」


  『あまり考えたくないのですが……。』


「アッシュとか言う奴のせい?」


  『と、考えるのが妥当ではないかと……。』


 つまり世界で一番大きい国を全て焦土と化した……。

 事実ならそういう事になる。


 思わず私は笑い声が出て、それが止まらなかった。

 笑うだけ笑った。


 人目が無いからかもしれないが、私の顔は泣きながら

 笑うと言う、なんとも変な事になっている事は解っていたが

 それでも涙も、笑いも枯れる事が無かった。


 どれだけ泣いて、どれだけ笑ったのかも解らない。

 だけど、これは私のせいだと思った。


 外堀から埋める?


 ゆっくりと?


「諸悪の根源が解っているんだから、最初から

 聖王国にいけば良かったんだ……。」


  『それは違います、当時のマスターでは

   今と比べればその力の差が大きすぎます。

   もし、直接向かっていたとして

   ジェスターに限らず、ガングレリとも対峙できるかといえば

   まともに目を合わせる事すら無理があったと思われます。』


「その結果がこれ、なんだよね……。」


 恐らく、このディメンタール王国に住む人々も

 犠牲になった、と考えるのが妥当でしょう。


  『だ、だとしてもです!!』


「だとしても?私以外が出来ないのだから

 これは仕方のなかった事だと?

 …………決めた、もうこのままオラクル聖王国に乗り込む。」


  『え?』


「これ以上、ガングレリにしてもオラクル聖王国にしても

 放っておく事を私が許容出来ない。

 これが頼まれだったとしても私が納得出来ない。」


 『無茶です!今のマスターの力ではとてもではないですが……。』


「ニクジュバンニ、これはゲームじゃないんだよ。

 スライムやゴブリンから律儀に倒して、自分に都合よく成長していくだなんて

 そんなご都合主義に合わせてたからディメンタール王国はこうして

 滅んでしまったんだよ?」



  『し、しかし……。』



「覚悟決めてよ、ニクジュバンニ。

 少なくとも私はあんた達に巻き込まれただけでしか無いんだよ?

 その私が乗り込むっていってるんだよ?

 人が亡くなって、国が滅んで、私が力を貸してくれ!って頼んだら

 でっかい球体が作れて、それを飛ばせば終わるって言っても

 そうなると解ってるならやるもんじゃないよね。

 今後どれだけ犠牲が出るかも解らないなら

 私はさっさと乗り込んで、ガングレリをこの手で握りつぶすべき。

 そう私は思う訳さ。」



  『しかし!まだゴリラアーマーの成長も足りていないと判断します!』


「それを待っている時間すら惜しいんだよ。

 それが人の命より優先しなければならない事だって言うなら

 私にはそれを堪えるだけの性分も無ければ

 そんな犠牲の上に成り立って、元に戻るってならまだしも

 魔法の世界の癖に、そんな事すら無いんだからさ。

 たった30秒で世界を救う勇者が居る位なんだからね!」



  『それゲームの話ですよね?』



「いいんだよ!私が、自ら決めたの!

 もうこれ以上待つのは耐えられないの!

 だからオラクル聖王国に乗り込んでやる!!」





 リラはこうしてオラクル聖王国へ

 乗り込む事を決意した。


 だが、今のままでは決してこの世界が救われる事は無い。

 リラにはまだまだ力が足りていないが

 リラはそれでも乗り込む事を決めたのだった。


 その結末が如何様になるかは、現在神様ですら解らなかった。


 だが、戦っているのはリラだけではなかった。

 リラがこの世界を救う為に出来得る限り、リラが知らない力が

 働き始めている事に、リラもニクジュバンニも気が付いていなかったのだった。



 そしてリラはその場から姿を消した。

 ほんの僅か、目を切る位の時間の間に……。




 G-form-girl 第一部  ―完―


 ※第二部は当「G-form-girl 163話」と同時公開されている

 「学園の階段」全話終了となる10月2日からの再開となります。

 学園の階段:https://ncode.syosetu.com/n8063ht/


 ※本作は完結済とはせず、第二部は「G-form-girl 164話」から

  そのまま再開予定となっております。

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