第160話 G と D8~9層 海上地帯
「ぎゃあああああ!目が、目がぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「「「「「「「「「「ウホッ、ウホォォォォォォォ!!」」」」」」」」」」
「ぎゃあああああ!鼻が、鼻がぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「「「「「「「「「「ウホッ、ウホォォォォォォォ!!」」」」」」」」」」
『何を学習能力が無い事をしているのですか……。』
8層目も9層目も結局同じ構造の層で
ダツ、じゃなかったニードルフィッシュに
目と鼻を狙われる始末なので、さっさと駆け抜ける事にし
ノーガードでナックルウォーキングする事にしたのですが……。
まぁ痛いものは痛い訳で、私もミニゴリラも
叫びながら海上を駆けているのです。
「はぁ……鼻の穴が広がるかと思ったよ……。」
『ゴリラアーマーの鼻の穴の奥には
特殊なフィルターで遮られていますので
そこまで届きませんからね?』
「痛みだけは来るから余計にそう思うんだよ……。
まぁこの調子なら今日中には踏破出来そうだよね。
っていうかニードルフィッシュが飛んでこなくなったんだけど?」
『恐らくあれが原因では無いでしょうか。』
あれ、とは?
周囲を見渡すと陸地は無い筈だし
誰かが居る訳でも無い筈なのに
何故か木製のボートのようなものが見えたのです。
「くっ……まさかサーモンを味付け無しで食べるだなんて……。
せめて!せめてライムと塩があれば!!
いや!日本人なら醤油とわさびやろ!!」
ボートの上ではあのカツオ頭の三平が小芝居をしていた。
そもそもどれだけの人が元ネタを知っているのだろうか。
あと当時、日本では刺身に醤油とわさびなる文化はあったけど
アメリカには醤油もわさびも普及していない処か
生魚とか一般的には忌避されてた時代だと思ったけど?
あとサーモンは確かに鮭だけど
英語圏だとアトランティックサーモンかパシフィックサーモンで
日本でサーモンって言うと養殖品で
生食出来るものに限られると思うよ?
スーパーとか生食用は「サーモン」で加熱用は「鮭」表記だし……。
『日本人とか堂々と言ってますけど
あれ、カツオですよね?』
「しかも生きている癖に横縞じゃなくて縦縞がくっきり出てるから
あれ死んでるんだよね?」
頭から尻尾に向かう縞を縦縞と呼び
背中にお腹方向に向かう縞を横縞と呼び
生きている際に出てくるのは横縞、死んだら出るのが縦縞。
つまり三平は生きているようで死んでいる事に??
暫く小芝居を見ていると、海の中からギザギザしたものが
円を描くようにゆっくりと出てきたかと思えば
そのままギザギザが噛み合うように閉じたのです!
「あ、食べられた。」
『あれはメガロドンですね。』
「メガロ丼?」
『丼物ではなく、白亜紀初期にホホジロザメから分岐し
絶滅したネズミザメ科に分類される鮫ですが
あれは魚類のオトドゥス・メガロドンではなく
魔物としての鮫です。』
「そっか……三平は美味しくいただかれた訳か……。
死にたがってたし、丁度良さそうだね。」
『何を言っているのですか?
メガロドンがあの程度食べただけで
満足する筈ありません。』
「つまり………?」
三平をボート毎バリバリと食べていたけど
それが終わると海上に立っていた私に向かって
その巨大な身体で私を追いかけ始めたのです。
『逃げた方が良いですよ?』
「冷静かつ淡々とした言い方するような内容じゃ無いよねっ!?
『逃げろ』でいいじゃん!!」
まぁ、そう言いながらも私はナックルウォーキングで水上を走り逃げるも
まぁメガロドンが速いのなんの……。
『アオザメなら時速100キロ近い速度で泳ぎますけど
ホホジロザメですから、速度自体はそこまでではないかと。
但し回遊距離だけで言えばトップクラスの筈です。』
「ならなんで私についてこられる位に速いのさ!!」
『水面に対してナックルウォーキングをしているからでしょう。
地面に対して行うのとではやはり速度が出ませんから。』
「つまり私が遅いと!?」
『そういう事になります。』
まぁ、メガロドンとの追いかけっこは私にとっては分が悪かったのですが
ゴリライアットガンを併用して逃げるも
とてもではないけど逃げられるとも思えない位に
ぴったりと追いかけられて、中々引き離せなかったのです……。
「あああああ!めんどい!
沈まないフォームはニンジャフォーム(これ)しかないし
かといってニンジャフォーム(これ)じゃ力が下がるし!!」
『一応もう1つありますけど?』
「なんですと!?」
ニクジュバンニ曰く、ウォーターフォームでも良いらしい。
但しニンジャフォームのように水上を歩くか潜水するかのような
2択式ではなく、水属性魔法で足元の水を流転させて
私自身を次々と水の勢いで持ち上げるか、私自身が水を噴き出して
飛ぶような感じに移動などを行うなどの魔力操作如何によって
可能となる、と言うだけであって難易度は圧倒的に高くなるとか。
「つまり私自身を海に浮かせる為に魔力操作をしつつ
攻撃にも魔力操作をすると?」
『ファイアフォームでもやってますよね?
ブースターフレイムにスラスターフレイムに
バーニアフレイムと呼ばれる形で……。』
「あれはなんていうか、アニメとかの影響で
イメージが非常にし易いんだけど……。
水で飛ぶようなのって中々……。」
『ただ地面もそうですが、海水もダンジョンそのものと言っても
差支えはない存在なので、マスターが水を噴き出して飛ぶ方が
理想ではあると言えます。』
「………いや、別の案でいこう!
無限灯油樽!無限レギュラー樽!
この2つをそこらじゅうに撒き散らす!!」
『なるほど、水の比重が1とすれば灯油は0.8程度。
ガソリンも0.7程度ですから水に浮きますね。
そこに灯油とガソリンを混ぜて引火し易くする訳ですね。
ガソリンの引火点はマイナス40度ですし
灯油は37度ですから!』
「そこまで細かくは知らないよ!!」
ポイポイと灯油とガソリンを撒き散らしたら準備完了だけど……。
確かガソリンが先に引火するだろうけど気化も速い上に
水で消える事も無い筈……。
私は最悪、ファイアフォームになり
海に沈む事を覚悟しつつ、火種をゴリラコンテナから出したのです。
「なぁ、あんさん馬鹿やろ?」
「五月蠅い!さっさとメガロドンに食われた癖に!!」
まぁ火を付けた途端、火柱があがって
ゴリラアーマーを着ていたからこそなんとかなったものの
下手をすれば焼身自殺ものの文字通り「火の海」となった海に慌てふためき
逃げ回り、最後は無限プール樽の上に逃げて
ゴリラコンテナからの空気で呼吸をして逃げた、と言うのが実情で
メガロドンそのものは、そもそも水の中に逃げれば良い訳でして……。
「結局ワイがメガロドン倒しただけやんか……。」
「いや、あんた食われたんだからさっさと中で暴れて
倒せば良かっただけじゃない……。」
最終的には三平が胃の中で暴れて
メガロドンを倒し、出てきただけであって
私のした事はこの海に火を放って私自身が地獄を見ただけだったのです……。
まぁ出てきた三平も地獄を味わった訳ですが……。
「つーか、ガソリンの火を舐めすぎやで?舐めプやで?
こんなんちょっとやそっとじゃ消えへんで?
ワイの頭どうしてくれるんや?」
「………カツオのたたきとして売るとか?」
「こんなガソリン臭い『カツオのたたき』が売れる訳あるか!!」
「うぐぅ……。」
三平は顔のカツオは真っ黒になっているだけでなく
何故か肌が綺麗な褐色に焼けていた。
あと褌が燃えていない辺り、何で作られているのか気になったけど
所詮は他人のパンツでもある訳で、気にしない事にしたのです。
と、言うか三平はどうやってここに来たのだろうか。
それすらも気にしない事にしたのです……。
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