第154話 ボス の 名は。
4層目を抜け、5層、6層目とやはり溶岩地帯で
少々変わったペンギン頭のマッチョな人の身体をした
溶岩人鳥と呼ばれる魔物の群れに
追いかけまわされたりしたのです。
「何故ボディビルのようなポージングばっかりするのやら……。」
『マスター、あれは立派な攻撃なのです。』
「……………はい?」
なんでもムキムキマッチョな半裸ペンギンたちが
ポージングしていたのは格闘系の技能だそうで
それぞれが
フロント・ダブル・バイセップス
バック・ダブル・バイセップス
バック・ダブル・バイセップス
フロント・ラット・スプレッド
バック・ラット・スプレッド
サイドチェスト
サイドトライセップス
アブドミナル・アンド・サイ
フロント・リラックス
サイド・リラックス
リア・リラックス
モスト・マスキュラーと書いてルビは共通して「肉体言語」と言うらしい。
「……どこが攻撃?」
『主に精神に効果的な攻撃で、キチンと圧を消費する
格闘系技能です。
マスターのような健康持ちには一切効果はありませんが……。』
隠れてその様子を見ていると
溶岩に向かってポージングすると、ラヴァ・ブリームが気絶したのか
プカプカと浮いてきたので多分効果はあるんだろうね……。
そして6層目の一番奥につくと
まぁ巨大で豪華な扉があったのです。
「ここは何かね?」
『これがボス部屋です。』
「ほぅ……、つまりこの中にはお宝を落としてくれる
素敵な犠牲者がいらっしゃると言う事だね?」
『マスター位ですよ?そういう考え方をするのは……。』
「でも創作物でもボス倒すと色々出るよね?」
『確かに出ますがここが1つ目と考えると
そんなに良いものは出ないと思いますよ?』
「だよね……、ここ6層目だけど宝箱も無ければ
魔物の死体くらいしか拾ってないからね……。
……………この扉、持って帰れないかな?」
『それはダンジョンの一部ですから無理ですよ?』
「チッ……鋳熔かす前提で職人ギルド辺りに
売りつけようと思ったのに……。」
『稀代の大金持ちが何を仰っているのやら……。』
「さて、じゃあ何が出るかな?何が出るかな!」
私は勢いよく巨大な扉を開け、覗き込むと中は空っぽ……。
「あや?」
『ボスが出るのは扉が閉まってからですよ?
ちゃっちゃと中に入りましょうね?』
「ふぁい」
中に入り、真ん中へと近づいていくと
扉が自動的に閉まり始めたのです。
このボス部屋、とやらはまず巨大な円柱型の部屋で
扉を開けて入ると暫くして自動で扉が閉まり
それからボスが出てくる仕様だそうです。
ここまでは基本どんなダンジョンでも大抵同じだそうで
この先がダンジョンやボス部屋毎に違うのだとか。
それを決めるのが扉の模様のように描かれている
古代語だそうで、それによって
大きく2つの仕様に分かれているのだとか。
1つ目が入ったらボスを倒すまで出られないタイプ。
2つ目が途中退出、つまりギブアップして出られるタイプで
こちらは出るとボスがリセットされて
必ずしも同じボスが出る訳でも無かったり
全く同じボスが出るけど体力満タンで出てくるかなど
細かく言えば様々なボス部屋があるらしいのだけど
大きく言えば2つ。
「で、ここは?私、古語なんて読めないからね?」
『ボスを倒さないと出られないタイプです。』
「ほぅ、ならお宝は?」
『それなりに期待できます。
途中で出られるタイプは期待出来ませんので。』
「ならさっさと倒して進もうかね………。」
そして音を立てて静かに閉まっていった扉が
完全に閉じ切ったのです。
「さて、鬼が出るか邪が出るか……。」
出た……。
「はっ……ははははは!」
『まさかのボスですね。』
目の前にいたのはゴリラ。
それも私の身の丈の倍以上の巨大なゴリラ。
ゴリラ鑑定の結果は「大猩猩」。
厄災級魔物……。
大猩猩は見た目ゴリラだけど、毛の色は黒ではなく白。
私との目で見る限り4メートル級の大猩猩。
「ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛!!」
大猩猩は私を見つけると叫びながら
ドラミングをするや否や、すぐにナックルウォーキングで
私に向かってきたのです。
『大猩猩は属性を持ちません。
ファイアフォームからの変更を!』
「ベーシックフォームとベーシックフォームを選択申請!
シルバーバックフォーム、マテリアライズ!!」
『シルバーバックフォームを承認。
トリニティーマテリアライズ!!』
背中に鞍の形に灰色の毛色が現れる!
そして目の前の大猩猩とプロレスのフィンガーロック。
本来であれば指を相手の指の間に入れて組み
力勝負などをする際の形なのですが
まぁ私の方が圧倒的に小さい事から
私は拳を、大猩猩はその拳を掴む形で組み合ったのです。
「ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛!!」
「ぬがああああああああああああああ!!」
やはり体格の差が力勝負にまで発展せず
大猩猩は体重を前にかけ、私に覆い被さるように
力だけではなく自らの体重もかけて、一気に押してきたのです。
「こぉの程度で潰されるかぁぁぁぁ!!」
私はゴリラアーマーの足の指をしっかりと地面に食い込ませ
その押しを両手を突き出す形となった拳で耐えた。
そして私を押し切れないと判断した大猩猩は
突如片手だけを掴んだまま私を振り回し
部屋の壁へと投げつけたのです。
「ファイアフォームとファイアフォームを
選択申請!マテリアライズ!!」
トー
フー
何か鳴ったけど気にしない!!
【新フォーム「デュプレックスブレイズフォーム」をひらめきました。】
『デュプレックスブレイズフォームを承認。
トリニティーマテリアライズ!!』
私の身体が一気に燃え盛った。
ファイア(火)フォームの比ではない位の燃え方だけど
基本的な部分はファイア(火)フォームと同じだったのです。
「ナイス、ニクジュバンニ!
ブースターフレイムで逆推進!
さらにスラスターフレイムで姿勢制御!
さらにバーニアフレイムで微調整!」
私は部屋の壁に激突する事無く、静かに壁に足をつけた。
「そして推進!!」
今度は壁から一気に炎を吐き出しながら大猩猩へと一気に攻める!!
「ゴリラエクスプロージョンパンチ!!」
ブースターフレイムなどの推進力を背負って
大猩猩へと拳を向けるも、私の拳は地面を捉えただけだった。
既に途中で大猩猩が逃げに走ったのは見えていたけど
まだ推進力そのものの制御が上手くいかず
曲がるように跳ぶ事は出来ず、地面に拳を突き立てる事しか出来なかったのです。
「ゴリラか何か知らないけど、こっちは本家ゴリラだからね!
あんたに負けるつもりは一切ないよ!!」
大猩猩に指をさしむけるとその顔は口角を上げ
怒りを露わにしたような、そんな顔をしていたのです。
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