第153話 G と D4層~溶岩地帯
約10日間かけて、第3層目となる砂漠層を疾走。
まぁそもそもゴブリンとかスライムの遺体の回収と
ミニワームに追いかけられるだけ、と言う
まともに戦闘すら無く、ただただ広大な砂漠を
ナックルウォーキングで駆け抜けるだけ、と言う
あまりに暇な状況に、ダンジョンがつまらないものだと
思い始めていた矢先。
ついに4層目でフィールドの形が変わったのです。
「おおおおお!ついに砂漠を抜けた!!」
但し4層目からがこれまた酷い。
「このダンジョンは魚人に恨みでもあるのかね?」
『ただ踏破されないようにした結果では?』
4層目は溶岩グッツグツ、ドッロドロの超高熱地帯。
いろんなところで溶岩が噴き出したりしていて
足場や固まった溶岩なのか、岩肌なのかは解らないけど
ちょっと間違えればあっさり燃えそうな感じなのです。
『どちらを選択しますか?』
「そう言われると悩むね……。」
ここでニクジュバンニは2つの選択肢を私に提案してきたのです。
どちらもフォームチェンジなのですが
1つはファイアフォーム、もう1つはウォーターフォーム。
「お勧めは?」
『ファイアフォームです』
この溶岩フィールドに対する防御特化にあたる
火属性フォーム。
ファイアフォームならば溶岩の中すら歩けるらしく
ニクジュバンニとしては防御特化型の方をお勧めだとか。
火属性は風属性に強い
風属性は土属性に強い
土属性は水属性に強い
水属性は火属性に強い
これが四大元素の相関となるそうなのだけど
これは攻撃する際のお話。
防御の観点で言えば同族性が最も優れていて
無効化する事から、ニクジュバンニはファイアフォームを勧めていて
これがウォーターフォームとなると
攻撃の観点でいえばウォーターフォームが強いけど
防御で言えばある程度、少量のダメージを受ける事となるのだとか。
『安全第一、ハンドパレットにスケボーのように乗ったりしても
死ぬよりはマシだと提案したまでです。』
「その前に溶岩の中を歩く事を想定していないし
なんで現〇猫みたいな事する前提なのさ……。」
ゴリラアーマーは無事でも、私が無事では済まされないという
ニクジュバンニの提言によって、ファイアフォームを選択。
『さぁ、気を張ってくださいね。
魔力が尽きればただのベーシックフォームと変わりは無いのですから。』
「うっす……。」
ただ全身が火属性に変わり、覆われるだけなので
攻撃の属性ダメージは見込めないものの
そもそもゴリラアーマーの大半は無属性で
ほぼほぼゴリラパンチばかりなので
まぁ問題は無いだろう、と4層目をテクテクと歩いていったのです。
「何か変わった魔物でも居るかな?」
『1層目から3層目の広さを考慮すれば
通常のダンジョンで言えば30層目くらいでしょうから
大体Dランク、Cランクあたりの火属性魔物が主体でしょう。』
「火属性持ちって赤オーガくらいとしか戦ってない気がするけど……。」
まぁグツグツと煮えるような溶岩の川に
どちらかと言えばドロッとしたもったりした溶岩の川の間の
陸地を進んでいくと、ようやく出てきた魔物が……。
「勝手に溶岩から出てきて、このビチビチ暴れてる魚?は何かな……。」
『「ラヴァ・ブリーム」溶岩鯛ですね。』
「………魔物?」
『鯛型の魔物です。』
「鯛って『sea・breamじゃ……。」
『溶岩ですので「lava・bream」です。』
「溶岩を泳ぐ鯛………鯛?
もしかして食べられる?」
『溶岩が大体900度から1100度あるのですよ?』
「なら焼いても食べられないのか……。」
食べられないなら、と溶岩の中へと戻してあげた。
『水に入れれば冷えますので刺身として食べられます。』
「リリースする前に言おうよ!!」
なんでも食べる為には処理が必要で
中々食べられない高級品らしいのです。
「と、言う事で用意しました無限水樽!」
そしてまたラヴァ・ブリームが飛び出てくるのを待っていると
5分としないうちに1匹が出てきたのです。
大きさはまぁ真鯛そのもの?
『一気に冷やしましょう!』
「ほいさぁ!」
水樽にラヴァ・ブリームを入れると
焼いた石を入れたように蒸気と共に
水がグツグツ沸騰していくので
次々と新しい水樽を入れ替えてラヴァ・ブリームを冷やしていく。
捌かなくても完全に冷えれば死ぬそうなので
そのままゴリラコンテナに収納。
一度完全に冷やせば刺身でも焼き魚でも
何にでも調理できるのだとか。
「私の胃袋が乱獲しろと叫んでいる!!」
『そんな声は聞こえませんが?』
このように多くの水を用意して冷やさなければ
殺して持ち帰ったとしてもその間はずっと熱いそうで
異空間収納などの能力が無ければ中々食せないのだとか。
『一応ダンジョンでなくとも溶岩地帯に生息しています。』
「そこまでいってまで食べたいとは思わないな……。」
『鑑定結果では熊本のう〇か鯛より美味しいらしいですよ?』
「よし、乱獲決定!」
最早出るという目的より、出た後の鯛のお刺身目当てに
私は狩れるだけ狩ったのですけど
何も出てくるのは鯛だけでもなかったのです。
「何このちょっと崩れたスライムみたいなの……。」
『プチ・ラヴァー・ゴーレムですね。
ただの溶岩の塊に核が魔素から出来て
誕生した人形のような魔物です。』
「へぇ、ミニゴリラ位で可愛いね。」
『但し強いですよ?』
ニクジュバンニのその言葉の直後には
私はプチ・ラヴァー・ゴーレムに殴られ、吹き飛ばされたのです。
最初は崩れたスライムみたいな形だったのに
突然腕のような形になり、そして殴られたのです。
「おおおおおおお!」
『さぁ、練習の成果を見せる時です!』
「解ってるよ!」
私は掌を後ろに向けた。
「スラスターフレイム!」
まずは大きめの炎を掌から出して
吹き飛ばされた際の勢いを打ち消す!
そのまま掌を姿勢制御の微調整の為の角度をつけて
再度掌から撃ち出す!
「バーニアフレイム!」
そして最後にもう今度は足の裏かをプチ・ラヴァー・ゴーレムとは
真逆の方向へと向け、撃ち出す!
「ブースターフレイム!」
魔力の消費は少々激しいけど
吹き飛ばされた際の反撃であり
かつ空中からの短時間飛行などを目的として
練習してきたものです!
ちなみに地割れから飛び出るともなると
フォーム変更から勢いを打ち消して、とまでは出来ず
ある程度余裕が無ければまだまだ瞬間的に使って
空を飛んで飛び出す、とかは練習が必要だったんですよね……。
「そしてこれがファイアフォームの一撃!」
私は足の裏から炎を噴き出しながら
プチ・ラヴァー・ゴーレムへと突撃。
「ごぉ!りぃ!らぁぁぁぁぁぁぁ!」
プチ・ラヴァー・ゴーレムも
反撃が来ると思ったのか。
慌てて逃げ出したけどもう遅い!
「えくすぷろーじょんぱんち!!」
火属性魔法「エクスプロージョン」を籠めた右拳は
プチ・ラヴァー・ゴーレムにあたらず地面にあたると
そのまま爆発し、その勢いでプチ・ラヴァー・ゴーレムは
核が傷ついたのか、その姿を維持出来ずに
ドロッと溶け、そのまま爆発の勢いに霧散していったのです。
「チッ……外した……。」
『今回は対象が小さかったので仕方ありませんが
もう少し練習して制度を上げたい所ですね。』
「そうだね……。」
日頃の鍛錬もあり、四大元素のフォームも
徐々に使いこなし始めているのです!
星5点満点で「面白い」や「面白くない」と
つけていただけると、作者が一喜一憂します!