第152話 G と D1層~砂漠地帯。
「おかしいおかしいおかしい!
このダンジョン超おかしいんだけど!?!?」
『何をもってしておかしいとしているのか
理解に苦しみますが……。
ダンジョンの誕生については前に話しましたね?』
「あー、魔素が湧出うんたらで溜まった所に出来るとか?」
『地面の深い位置で溜まった魔素は地表までの距離があるので
そのままダンジョンの最下層になる、と言う話です。
しかし例外的に海と陸が接する場所ではこのような逆ダンジョンが
誕生し易いのです。』
ニクジュバンニ曰く、地表に近くても岩盤等が存在する事で
魔素が溜まり過ぎた場合は地表に近くてもダンジョンが出来るのだとか。
この海底が入口であろうダンジョンの場合は
陸地の浅い部分にダンジョンの最下層が出来たものなのだとか。
そして本来であればそのまま入口が地表に出来る為に
非常に浅いダンジョンが完成する事が多いらしいのだけど
稀に捻くれたダンジョンがあるらしく、海底目指して
地下迷宮を作っていくダンジョンがこの逆ダンジョンなのだとか。
ちなみに海底に出来た魔素溜まりの場合は
そこから海の魔物が生まれ、同じように海底でも浅い部分に
ダンジョンの最下層が出来た場合は
そのまま海底に入口が出来るらしいのだけど
やはり稀に捻くれたダンジョンが陸地を目指していく為に
深層ダンジョンと呼ばれる100層を大幅に超えるダンジョンが
出来やすいのだとか。
「で?それとこの1層目の光景に何か関係があるのかな?」
『ダンジョンは入口に近い、遠いに関係なく
惑星の中心に近い程、広い層が出来るのです。
その為に逆ダンジョンは1層目が最も広くなるのです。』
「ほぅ、だからこの層は……見渡す限り砂漠なのかな?」
目の前一面鳥取砂丘!と言うよりは
エジプトとかカイロとかその辺り??
地平線まで見えて一面の砂、砂、砂。
さらに何故か空があって太陽がジリジリと照っていて
青い空に白い雲が浮かんでいる光景……。
「で、1層目だから魔物も弱いんだよね?」
『はい、最下層から遠いという理由で魔素が少なくなり
あまり強い魔物が生まれないのです。』
「で、一面ゴブリンやスライムと思われる魔物が干乾びてるのは?」
『環境に適応できなかったのでしょう。』
1層目は砂漠なのに、ゴブリンやスライムといった
どう考えても砂漠の魔物とは思えない魔物が居て
それらが干乾びて死んでいる、と言う非常にシュールな絵面……。
そして目の前にかなりの死体があるのだけど
少しするとそれが消えていくという、謎の層からの始まりでした。
『ダンジョンは生き物でもあります。
死体となった魔物達は続々とダンジョンに吸収されていきます。』
「むしろこの逆ダンジョンは侵入者を止めるつもりはあるのかね?」
『あるからこそ1層目から砂漠なのでは?』
「……………そう言われるとそうなんだろうけど
何か納得がいかない……。」
しかもこの1層目とされる砂漠のダンジョン。
超広いんですけど………。
「おかしい……もう3日くらいは彷徨ってる気がするんだけど
上への階段が見当たらない……。」
『………え?』
「………え?」
ニクジュバンニに最初に聞けば良かった……。
普通の上から下に降りるダンジョンでは多くが階段で降りるらしく
私もそういうものなんだと勝手に思い込んでいたのです。
『このような大規模な層の場合は階段ではなく
転送の魔法陣による転送ですよ?』
「そっか……。」
しかも1日前に上に上がる場所は通り過ぎていたとか。
「そこはせめて『上に上がらなくて良いのですか?』くらいは
案内すべきじゃない?」
『マスターがミニワームの大群に追いかけられていたので
それどころでは無かったですよね?』
ミニワーム、いわばミミズの大群。
但し30センチほどのミミズで
噛み付く事も出来ない位には脅威とも言えない非常に弱い魔物で
むしろゴブリンの方が強い、とまでニクジュバンニには言われていた。
「いや、普通に考えて30センチ大のミミズが
大量にウネウネと追いかけてくるんだよ?
恐怖じゃない??」
『ただの虫嫌いですよね?
健康持ちなのですから恐怖耐性ありますよね?』
「自慢じゃないけど千曲川の鯉釣りは『いもようかん』だったし
近くの沼釣りはフナでも『いもようかん』で
アメリカザリガニ釣りは『いかくん』だったからね?
長野の山沿い暮らしだったけど、長く東京に住むとね……。
虫に対する抵抗力が落ちるものなんだよ?」
そうは言っても1匹2匹ならまだしも数百匹が
追いかけてくるのは流石に耐えられず、逃げまくっていたのですが……。
『あれが上りの石碑を護るボス扱いですからね?』
「ボスなんだ……。」
あまり戻りたいとは思わないけど
上に行く為に戻らなければならない………。
「殺虫剤が欲しいね……、出来れば酢。」
『酢ですか?』
「ミミズは完全皮膚呼吸だからね。
身体が渇くと死ぬんだよね。
だから酢をかけて水分を奪えば死ぬよね?
……………あれ?」
『残念ながら、ミニワームは魔物です。
砂漠で生きているミニワームが乾燥で死ぬとか
超ありえませんよね?』
「うぐぅ……こういう所は似てないんだ……。」
『ゴリライアット・ショットガンで気絶させながら
強行突破したらいかがでしょうか。』
「ボスだから倒さないと駄目なのでは?」
『ボス扱い、と言うだけでただ石碑を護っているだけでしょう。
倒さないと進めないタイプのボスは
基本専用の部屋があるものです。』
相手をせず無視して進んでよい、との事らしいので
ゴリライアット・ショットガン片手に
ミニワームを次々と撃ち、1層目を通過。
そして2層目へと進んだのです。
「のぉぉぉぉぉぉ!!2層目も砂漠じゃない!!」
『世の中こんなものだと思います。
そもそも海底に入口がある時点で魚人位しか
入ってきませんから。
魚人の大敵は乾燥ですから、その対策では無いかと。』
「そう言われれば魚人の方がもっときついのか……。
攻略させるつもりが無い、と言うより
入ってくる事自体お断りって感じだね。」
『攻略されてしまえばダンジョンは消えてなくなる
可能性が非常に高いですから。
ダンジョンの意志がそうするのも仕方のない事です。
ダンジョンの核さえ壊されなければ残りますが
核から出るお宝が最も高価なものですから。』
「そっかー…………お宝?」
『主にミミックやガベージボックスのような
シェイプシフターの類から出るものや
実際に宝箱がある例もあります。』
「お宝………バナナ以外も出てくるんだよね!?」
『普通バナナは出てきませんからね?』
但しお宝が多くあるのはこのような広大なフィールドタイプの層ではなく
本当に迷宮のような入り組んだ場所の方が圧倒的に多いらしく
私はそれを目指して上層に急ぐ事を決めたのです!
『出る事が目的では無いのですか?』
「それはどちらかというとついで?」
私の中では「お宝>脱出」なのです。
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