第151話 G と 逆海底ダンジョン
「1つ疑問があるんだけど?」
『何でしょう。』
「ダンジョンって私みたいな方法で入るものなの?」
『本来は正規の入口から入るものです。
むしろマスターの場合は不正入場です。』
「ビューグル族が穴開けてここに置いていったんだよね??」
『むしろマスターのゴリラッパの演奏に畏怖の念すら
感じていたようですから、死んでもらう為に
置いていったのでは?』
「何、その手を汚すのは嫌だ的な……。
っていうかあんたが『くっ、こいつには敵わないぜ!!』的な
完璧な演奏をなされば逃げていきますとか言って
ゴリラッパ吹かせたんじゃない!!
『ビューグル族は手を大事にしてますから。
主に演奏の為に……。』
「手を汚さないの意味が違うでしょ……。
っていうか手を大事にってどうやって穴掘ってるのさ……。」
『彼らビューグル族は地属性魔法のエキスパートでもありますから。
そうでなければ大陸1つ分を3日で移動するとか
常識的に考えらないですよね?』
「それでダンジョンに穴が開くの?」
『無理でしょう、ダンジョンは魔素から出来ている生き物ですから。
普通に穴を開けようとしても開かないものです。』
「どうやって私をここに入れたのさ……。」
『それは逆ダンジョンだからでしょう。
最下層がスタート地点ですから出来たようなものですが
それも一瞬で穴は閉じられるますし
一度入ったら逆に出る方法は踏破する以外ありません。』
「ならビューグル族は?」
『そもそもマスターが気を失っている間にこのダンジョンに
穴を開けて放り込んでいっただけですから。
彼らはダンジョンに入っていませんよ?』
「完全に殺しに来てるよね!?
さっきあんた私を助ける為に頑張って移動してくれたって
解釈してたけど、これ殺す為に急いだんだよね!?」
『そうかもしれませんが結果として助かっていますよね?
あのまま埋められていた方が死んでたと思います。』
「いやいやいやいやいや、ダンジョンじゃ無いなら出られるでしょ。」
『ブル〇ス・リ〇ではあるまいし
マスターに1インチパンチのような
技はありませんよね?
開いている空間が一切無いのですから
ミニゴリラ達も含め、殆どの能力が使えないですし
使ってもマスターもその被害を受けるでしょう。
あのまま埋められた状態でもし放置されていたら
いくらゴリラアーマーでも抜け出す方法などありませんよ?
フォーム変更も出来ないのですからね?』
「え?じゃあマジあの状態なら……死んでたの?」
『ゴリラコンテナの食料が尽きるか、酸素が尽きた場合
そうなっていたでしょう。
酸素だけなら余裕で数千年は持つでしょうから
その間ずっと地中の暗闇の中で身動き1つ出来ずに
死んでいった所なのですよ?
だから危機感が薄いと言っているではないですか。』
「うぐぅ……。」
そうニクジュバンニに言われると結果的には
ビューグル族には助けられている。
それにもしゴリラアーマーのまま、地面に埋まったとして。
私のベーシックフォームのフルパワーで出られるかと考えると
多分無理な気もする。
土や岩盤なんかを力を籠めて動かそうにも
その行先が無ければ動かしようはないだろうし
逃げ先は地上しかないのだから……。
その上で地割れをあっさりと作って閉じる事が出来る存在に
私が狙われたのだとしたら、それこそ次の手があったかもしれない。
せめて空間を歪曲するようなドライバーでもあれば……。
『ゴリラアーマーにも出来ない事はあるのです。
だからこそ危機感は常に持ち合わせていなければ
こういう目に合うのですよ?』
「ふぁい……理解したのでそろそろ出ませんか?」
『ならそこの聖剣を抜いてください。』
「……………このモザイク掛かったのを?」
『はい、それが各階層を通過する際に必要な鍵らしいので。』
聖剣たる俺のエクスカリバー、とやらを抜く……。
『そういう意味ではありませんよ?』
「解ってるよ!!地面から抜くだけでしょ!?
そこに躊躇してるんじゃないんだよ!
このモザイクの下が妙に気になるだけなんだよ!!」
『そんなにノクタ〇ンやム〇ンライトやミッドナイトに
引っ越したいのですか?』
「んな訳あるかぁ!!」
まぁ女は度胸、とも言うかどうかは知らないけど。
とりあえず聖剣の上の方が多分……柄だよね?
何か触るの超嫌なんだけど……。
うん?思った以上に硬いと言うか、普通に剣の柄??
いや、これ違うよね?
なんか剣先というか曲剣っぽい感じの緩やかなカーブ?
特に変な感じもしないのでサクッと抜いてみた。
「……………なんでモザイクだけそのまま残ってるのさ……。」
聖剣とやらは無事抜けたのですが
どうやら聖剣にモザイクが掛かっていた訳ではなく
聖剣が刺さっていた場所だけにモザイクが掛かっていただけで
特に保険であるはずのR15にすら抵触しない
非常に変な形の聖剣が抜けたのです。
『これは………アホ毛ですか?』
「そう言われるとそう見えるね……。」
こう1周くるんと巻いたような
まさに髪の毛みたいな形の聖剣「俺のエクスカリバー」
「モザイク入れるとか紛らわしい……。」
『SNSのレタッチみたいなものですかね。』
「そう言われると良く解るわ……。
撮った写真にアホ毛あるとレタッチしたくなるし……。
って俺要素とエクスカリバー要素はどこ!?」
『さぁ、そもそも私が名付けた訳では無いので……。』
「その辺り調べられないの?」
ニクジュバンニにググってもらったけど検索できなかった上に
アカシックレコードの方は閲覧禁止だったとか。
「鑑定すれば解るかな?ゴリラ鑑定!」
【404 not found】
「存在しないってどういう事!?
っていうか何で404エラー!」
『世の中知ってはならない事があるという事では?』
「腑に落ちないけど、まぁ聖剣と言う名の鍵なんだとだけ
思っていればいいか……。
見た目強そうに見えないし、鑑定も出来ないんじゃ
ゴリラグナロクの事もあるから怖くて使えないよ……。」
それから暫くこの場所の外周を見て回ると
聖剣と同じ形の窪みを見つけ、聖剣を入れると
すぐ隣に階段のある道が出来たのです。
そして私は逆海底ダンジョンへ挑み始めたのです……。
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