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【完結済】G-form-girl  作者: ボブ
第8章 魔導列車編
148/178

第148話 G と 生贄。前編

 それは新月の真っ暗な夜。

 私が木の上で寝ていると、人々が

 1つの神輿のようなものを担ぎやってきたのです。


 私の寝ている木の近くにあった祠のような場所の前に

 その神輿を放置し、そのまま帰っていったのです。





「……………ゴリラ鑑定……。」



 その鑑定結果は私が苦虫を潰したような顔をするのに

 十分な位に不愉快な内容だったのです。



  『何もこの世界に限られた事ではありません。

   地球でもこのような事があった、とされる事例は

   そこそこ確認されているでしょうし

   マスターも知らなくはないですよね?』



 知ってるよ。


 様々な理由もあっただろうけど、大半はそれこそ

 科学的な根拠もへったくりもない、どちらかと言えば

 宗教的なものを端としたものばかりだけどね……。


 どちらかと言えばこういうのは

 ま〇が日本昔ばなしの方が多かった気がするけどね……。



  『マスターのその不愉快さが解らない訳ではありません。

   しかし生贄に手を出すというのは

   それに対する責任を負う事でもあるのですよ?』



 生贄。

 あの神輿には人が入っている。

 しかも血の匂いがする……。



  『逃げられないように足の腱や足そのものを

   切るなどは良く知られた方法でしょう。

   もしくは人の肉を捧げる事が目的で

   既に生きていない可能性もあります。

   生死まで確かめるのであれば直接見なければ

   あくまで人が入っている程度までしか

   鑑定では見抜けませんからね……。』



 あの神輿を置いていった人たちは

 誰かを生贄に捧げに来た。


 そしてこれからそれを取りに来る存在が居る。



  『少なくとも私は係わらない方が良いと思います。』



 ニクジュバンニ。

 それは面倒事だから、って事?



  『厄介事に首を突っ込んで碌な結果にならない事は

   最早テンプレといって良いかと思われます。』



 テンプレねぇ……。

 だけどあれを放置しておくってのは……。



  『人として、ですか?

   それを偽善と呼ばれるとしてもですか?』



 あー、それはない。

 そもそも取り繕う必要性すら無いからね。


 本心から言って、寝覚めが純粋に悪いから。

 可哀想、とか私が例え思ったとして。


 もしかしたら覚悟を決めた人が居るのかもしれない。

 そうじゃないかもしれない。


 でもどっちにしても私の寝覚めが悪すぎるんだよね。

 これってどちらかと言えばただの自己満足だよね。


 今後、生贄を出した人達がどうなるのか。

 そんな責任すら負えるかと言われれば無理ゲー。


 やってきた人物だか魔物だかを倒して終わるのかすら

 解らない、無計画な犯行と言っても良いかもしれない。



 でも身勝手な話、不愉快でかつそれをどうにかしなかった事で

 寝覚めが悪くなるってのは個人的にどうなのだろうか。



  『私は係わらない方が良いと思います、と言いましたからね?』



 何その言質とった、みたいなのは……。



  『何が起きたとしても責任は取らない、責任転嫁も

   避ける為の社会的、かつ合理的行動の一環です。』



 神の眷属の癖に浅ましい真似を……。

 っていうか何か聞こえない?



 あの神輿から何かくぐもった声が聞こえてくる。


 むぐぅ……ぬぐぅ……。





  『それにしても変ですね……。』



 何が?



  『声が女ではありません、男です。』



 そうなの?



  『もしこれが供物だったとしてですよ?

   女ではなく男が捧げられていて誰が喜ぶのですか?』



 それは解らないじゃん。

 供物を受け取る人にせよ、魔物にせよ

 男の方が喜ぶ可能性もあるんじゃない?

 受け取る側がメスとかさ……。



  『そうでしょうか、力関係から言って

   男が供物にされる例は非常に少ないのですが……。

   それともう1つありまして……。』



 何さ……。



  『非常に血が生臭いです……。

   魚臭さが目立つのですが………。』



 ふむ……………。

 これは見なかった事にした方が良さそうだね。


 もぐもぐぬぐぬぐと喋り、男で魚臭い。

 私の中ではあの中身に心当たりがある存在が思い浮かんだ。



  『やはりあれは三平でしょうか』



 折角言わないようにしてたのに!!

 なんでそこで言っちゃうかな!?



  『だとしても拘束されて生贄として

   出される程、弱くは無いと思うのですが……。』



 魚臭い、と言う時点で興味が湧いたので

 ミニゴリラからミニミニゴリラを出動させ

 あの神輿に張りつかせ、そこからミクロゴリラを中に入れて

 中を探る事としたのだけど、まぁ暗くて見えない……。



  『ゴリ(ライト)で照らせば良いのでは?

   そもそも細菌サイズなのですから光も非常に小さいものになります。』



 それって非常に小さな部分しか照らせないから

 やっぱり見えないんじゃ……。


 仕方が無いので大量のミクロゴリラを中に入れて

 そこら中照らす形にすると確認が取れた。


 やはりあの三平だった。


 但し外見は私が知る三平からは遠く離れた姿だった。


 カツオはカツオだけど、何故か頭が鰹節になってるし

 そもそも人の身体もカラッカラに干乾びていた。

 っていうかなんで鰹節なのに血生臭くて魚臭いんだか……。


 一応生きているのか良く解らないし

 どこから声を出しているのかすら解らないけど

 丸々1本の鰹節の一部だけが縛られていて

 むぐもご言っているのでどうやらそこが口らしい……。


 え?なんで三平か解ったかって?

 そりゃ……褌に名前書いてあったからね……。



 ミニゴリラ達を駆使して拘束を排除しても

 殆ど身動きしなかったのです。



「み……みず………ぎ……。」


 水、だけで良いものを何故「ぎ」を追加でつけるのだろうか……。


 干乾びてるから水かければ元通りにでもなるのかと

 無限水(バレル)をミニゴリラに出させて

 一斉に神輿の内側に届く位には

 盛大かつ大量に水をかけると、身体はすぐに水を吸って

 元通りになり、いつのまにか頭もカツオ1匹の状態に戻ったのです。



「ワイ、復活やで!!」



 一応、知らない存在でも無いので

 知り合い繋がりで助ける事にしたけど

 どっちにしても寝覚めが悪い気が……。



「で、なんで鰹節になってたのさ……。」



「カツオが乾燥したら鰹節になるやろ……。」



「いや、生のままじゃ腐るだけでしょ。

 あれは茹でて燻製にしてから干したものであって

 カビ付するかしないかもあるよね?」



「そこはまぁ……ファンタジーの世界っちゅー事で。」



 とりあえず鰹節云々は置いておいて

 何故、三平がこうなったのかという原因を遡っていくと

 私も忘れていた1つの事があったのです。



「アクオルス?」


 そういえばそんな名前の子供が居たような気が。

 まぁ、ガングレリと名乗っていたあの

 ラブアセタデユ子爵の事であり

 宝瓶宮(ほうべいきゅう)のアクオルスの事なんだけど……。



「あんたが倒したんじゃなかったっけ……。

 ありとあらゆる水分を絞り出して……。」



「せや、やがのぅ……あのカラッカラに干乾びた状態で

 襲われてなぁ……。」



 なんでも今度は水分が全くない状態で現れ

 三平を圧倒したのだとか。



「むしろワイの友達の水すら絞り出されてな……。」


 多分、それは友達ではなくただの知人だったのでは?

 ともかくあのアクオルスがまだ生き残っていたとか。

 そして三平はカラッカラの状態で討ち捨てられたのだとか。


 それを偶然近くを通った人に拾われ

 「丁度良い、これを10年に1度の生贄として捧げれば!」

 と捧げられたらしいのだけど……。



「ちょっと待って……。

 どこにあんなカラッカラの三平を捧げるなんて事に……。」



「頭舐められたんやで?鰹節やから良い味やったろうな。」



「いや、あれを鰹節とは認めたくない。

 っていうか熱して燻製にしてから干したものが鰹節だからね??」



「まぁどっちにせよ旨かったらしく

 それで贄にって話やったからな。

 そもそもや、リラはんに渡すつもりで追いかけていったのに

 逃げに逃げてくれたお陰でこうなったんやで?」



 そう言われると母なる核心(マザー・コア・ハート)

 体内にあるからなんとかするなら最終的に

 私が握りつぶさなきゃ駄目だと、今更ながらに思ったのです。



「で、アクオルスは?」


「知らん、ワイから水分抜き出してどっかいきおったで。」


 アクオルスがまだ生きていて、どこかに身を潜めている。

 それが解っただけでも収穫だった。

星5点満点で「面白い」や「面白くない」と

つけていただけると、作者が一喜一憂します!

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