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【完結済】G-form-girl  作者: ボブ
第8章 魔導列車編
145/178

第145話 G と 秒速5メートルの厄災

「おおおおおおおお!でっかー!」


 旅の途中で遭遇した巨大亀。

 多分大きさだけで言えば50メートル程とは

 ニクジュバンニの計測。


 移動速度が秒速5メートル、つまり時速に換算すれば……18キロメートル。



  『またマスターは珍しい厄災と遭遇しますね……。』



「え?これ厄災なの……?

 随分大人しいけど……。」



  『正体を知る前に甲羅の上に乗るのも

   普通ではありえない事なのですけどね……。』


「いや、ゆっくり進んでるから

 寝てれば勝手に進んでくれるかなと……。」



 この巨大亀の正体を鑑定してみるとその名を「ステレオタイプトトータス」。

 これでSランク同等の厄災なのだとか。



「トータスって事は陸亀だよね……。

 なんでステレオタイプ?」


  『ステレオタイプト、常動化しているのです。』


 なんでも厄災、とされていたのは昔の事で

 まだこのステレオタイプトトータスについて

 細かく知らなかった頃の名残だとか。


 昔は街などを壊したり、馬車を襲ったりとした事で

 厄災認定されたらしいのだけど、調べていくと

 同じ場所を延々とグルグル回る魔物で、そこさえ避けてしまえば

 攻撃はしてこない上に、攻撃されそうになると

 ひたすら防御をする魔物で、現在においてはその通るルート上には

 町や村なども作らない事によって

 ほぼほぼ被害は無い上に、非常に穏やかな性格をしているのだとか。



 ただ全く被害が無い訳ではなく草食なので

 通り道の草は根こそぎ食べられてしまうので

 すぐ近くに畑などは作れないのだとか。


 但し良い部分もあるそうで、糞などは堆肥として使えるらしく

 冒険者の採取依頼にもあったりするのだとか……。



「……………なのにまだ厄災なの?」


  『そうですね、世界的には10匹程度確認されているそうですが

   まず陸亀なので長命種でして、1万年は生きるようです。』


「長い……。」


  『しかもその間、同じ場所をずーっと回るか、草を食べているか

   糞をしているか、寝ているかだけだとか。』


「随分とおっとりした魔物だね……。」


 あくまで同じ場所を通るだけであって

 厄災と認定されたのは町を襲った、というよりは

 通り道に町が出来ていた、と言うだけのものだそうで

 このステレオタイプトトータス自体には悪意は無いそうなのだけど……。



  『ググったところ、過去に小さな新興国が

   まだ生態について詳しくない頃に潰されて

   滅んだそうで、その被害を忘れないようにと

   厄災級とされているそうです。

   現在でも前に出て、稀に踏みつぶされてしまう者も多少いるそうです。』



「なんだろうなぁ……。

 被害を受けている、っていうよりは

 人のエゴのような気がしなくもないんだけど?」



  『日本のクマなどの野生動物の被害に近いようなものです。

   昔は人々は人里に降りてこさせないように

   果実の木を植えたりしたりとしたものですが

   昨今、そのような事があるかと言われれば

   昔ほどではない気がします。』



「で、未だ厄災なんだね……。」



  『そうですね、これだけの巨体ですから

   食べる植物量も少なくはありません。

   それに木もステレオタイプトトータスにとっては

   立派な食料になりますので、町や村はむしろ

   彼らにとっての食事なのです。

   厄災、と言う認定を解かれる事は無いでしょう。』



「………強いの?」



  『防御一辺倒です。

   但し物理も魔法も非常に効き難い上に

   ステレオタイプトト―タスの得意な魔法は

   癒しの魔法です。』



「おおう……回復TANK(タンク)……。

 だから厄災だけど生き残ってるんだ……。」



  『討伐なさっても良いのですよ?』



「する理由が何も無いんだけど?」



  『一応可食可能ですよ?』



 ニクジュバンニの言う通り、ゴリラ鑑定では

 可食出来ると書かれている……。



「可食出来る……けどわざわざ苦労して狩ってまで

 食べる味ではない、って……。

 とんでもなく討伐する理由にすらならないよね?

 なんて話してたら何か頭と手足が引っ込んだんだけど??

 食べるつもりは無いからね?」



 そうステレオタイプトトータスに言うと

 頭と手足を出して、また歩き始めたのです。



「人語を理解してるのかね……。」



  『どちらかと言うと身の危険を察知したのでは?』



「身の危険て……。」


 特に食べようとした覚えも無いんだけどね……。



「そういえばバナナも一応植物だよね?」



  『淡水亀などは食べるらしいですが……。

   陸亀はどうなのでしょう。』



 気になったので無限バナナでバナナを出して、進路上に

 房ごと投げてみた。



  『食べましたね……。』



「まさか首がシュッと伸びて食らいつくとか

 ちょっと想像を超えてたわ……。」


 面白半分に私はバナナを投げ続けているうちに

 悪戯心が少々芽生えてきた。


 これ、もし歩いているルートと違う所に投げたら

 どういう事になるのだろうか、と……。



  『これでルートがずれたらどうするのですか?』


「その時はその時じゃないかな……。」



 バナナをあっちこっちに投げてみると

 やはり首を伸ばして食べ始めたけど

 どう考えても届かない範囲のバナナが出始めた。




「おおう、向きが変わった!」



  『やってしまいましたね……。』



 まさかルートを外れてバナナを食べにいくとは……。


 しかもバナナを蒔くのを止めるとそのまま進みだしたのです。



「おうっ!?」



  『マスター………。』



 完全に進んでいた道とは90度違う方向を向いたまま

 ステレオタイプトトータスが進み始めたのです。



「これはまずい!」


 急いで追加のバナナを元のルート上に置いていくと

 それに反応したのか、元のルートへと戻ったのです……。



「ふぅ、危うく何かしらを壊したかもしれないという

 罪悪感から逃れる事が出来たよ……。」



  『マスター、微妙にまだ予想されるルートからずれています。』



「ナナナンダッテー!?」


 私は急いでバナナを使って微調整を開始し

 1時間ほどでニクジュバンニから元のルートに戻ったと告げられた。



「危うく国家壊滅の元凶になる所だった……かもしれない。」



  『ところでマスター、事件です。』



「何、事件って……。」



  『ステレオタイプトトータスがテイム出来てしまってます。』



「……………はて、テイムとは何かね?

 ニクジュバンニ君。」



  『私、メスですからね?

   テイムは魔物を飼いならす事で、自らの使役獣とする事です。

   つまりこのステレオタイプト―タスは

   既にマスターの使役獣となっており

   命令すれば言う事を聞く状態です。』



「え?」



  『おめでとうございます。この世界で初めての

   テイミングモンスターです!』



「ええええええええええええええええええええええええええ!?」



 ただバナナをあげていた、それも使役獣にしようとか

 そんな考えはなく……ほぼ何も考えずに……。


 しかしそれによってこのステレオタイプトトータスは

 私の使役獣となってしまったようです……。

星5点満点で「面白い」や「面白くない」と

つけていただけると、作者が一喜一憂します!

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