第140話 G と 嵐 前編
「うらうらうららららぁ!!」
最後尾側の救助も終わり、先頭車両へと進んでいく際。
私は屋根伝いに進み、ミニゴリラ達は車両内を進み
次々と空賊達を倒していったのです。
車両内は乗客の持ち物が奪われ
さらに凄惨な状況の車両もあったのです。
どうやら1車両単位で全てを奪い終わってから
そのまま殺害している模様で
先頭車両に近い程、乗客が殺されていたのです。
そして辿り着いたのは3両目。
どうやら大ボスの登場のようです。
「お前か、うちの連中を殺してくれたのは……。」
「この列車の乗客を殺してくれたのはあんた?って聞くのと
同じくらい馬鹿馬鹿しい質問だと思わない?」
「……………まぁいい。
武器を捨ててもらおうか。
こいつの命が惜しければな……。」
「なんでこう悪人ってのは人質が有効だと
勘違いしているかね……。
特に惜しくも無いのでどうぞどうぞ。」
「なっ、貴様!何を言っている!!」
「え?だってこの特等車両に乗ってるって事は
超お金持ちですよね?
お貴族様か豪商、と言うか服装的にお貴族様ですかね?」
「私を誰だと思ってい「ならこいつにもう用はねぇな」ひっ!?」
私がどうぞどうぞ、と言った事で
サッと短剣を出して、首を掻き切ろうとした所を
ミニゴリラ達がナックルウォーキングで距離をサッと詰め
男に襲い掛かったのですが、その際に
お貴族様だかの首をしっかりと切り
それから私の方に突き放すように、後ろへと下がったのです。
突き放したタイミングを計り
私はゴリラ内癒ゴリラ外癒ゴリラ再生と
回復させた事で、多少の血は出たものの
お貴族様とやらをミニゴリラ達に回収させたのです。
「………癒しの魔法か。」
「だとしたら?」
「ならこいつらは他の方法で殺すべきか。」
そう言ってこの車両1つが丸々部屋となっている
特等車両の家具の陰から連れてこられたのは女性だった。
そしてその首を一気に掴んだ所で
私も距離を詰め、男の手首を掴んだのです。
「チッ!?」
すぐに男は女性へと幾度か刺し
そのまま2両目へと消えていったのです。
女性もすぐに回復させたことで
ドレスが血塗れはしたものの、まぁ問題はなさそうだった。
「嫌な予感がするなぁ……。」
お貴族様の多分旦那の方、そして奥さんと考えると
ここに子供が居ない、と言うのが私には引っ掛かったのです。
すぐにミニゴリラ達に2人を見張らせて
2両目へと入ると、先程の男が子供を盾にしていたのです。
「3人も……。」
恐らく長女と思われる女の子。
そしてそれより小さな女の子と男の子。
「さて、今からこの3人には死んでもらう。
特に惜しくも無いんだろう?」
「…………………。」
「おや、どうした?
人質が有効なのは勘違いだと言ったのはお前だろう?
おっと、その小さな猿みたいなやつも動くなよ?」
「ミニゴリラ、3人を保護。」
「動くなっつった……ろうが………。
てめぇ………今、何しやがった………。」
男は短剣を長女と思われる女の子に刺そうとしたのだろう。
下の子2人は泣きじゃくり、長女はそれまで
気を張っていたのかもしれない。
男の声が大きくなった事で、ビクっと身体が僅かに動いたけど
それ以上、何かをされる事は無かったのです。
「何しやがった?手の内をわざわざ話してやる
義理む義務も無いんだけど?
それより人質は居なくなったようだけど?」
3人はミニゴリラ達に護られ、私の後ろへと連れて行かれた。
っていうかミニゴリラ器用だよね……。
子供達の手を引いていくのに、わざわざミニゴリラ同士で肩車して
キチンと子供達の手の高さに合わせてから
3両目に手を引いて歩いていったんだけど??
『ゴリラの鏡ですから!』
なんであんたの声が妙に嬉しそうなのかは知らないけど……。
あれ私ベースだよね?
私の分身みたいなものだよね?
つまり私が………?
『ないない、それはないです。』
否定が早い!!
って遊んでいる場合ではなかった。
私はゴリラ武器「バナナ売りのハリセン」を出し
そのまま1発、勢いよく男の頬を叩いた。
男は気絶と共に、勢いよく叩いた事で
床にあっという間に倒れ込んだ。
そして1秒。
男は何が起きたのか、と多分思っている事でしょう。
何しろ思った程ハリセンが痛くないのは
ダメージが1固定だし、むしろ床にぶつかった方が痛い筈。
それに気絶してから倒れているので
どうして倒れたのか、など1秒の時間が飛んでいる筈。
「どうなってやがる……。
俺の身体に何が起きてやがる……。」
まぁ男が身動きが取れない理由が
一番の謎だろうけどさ……。
これがこのロアーフォームの最大の武器でもある
ゴリラ技能「Gプレッシャー」。
ロアーフォームのゴリラの顔でもある胸当て、剣の鍔の中央、盾。
いずれかの口を開いて放つもので、無差別にかける事も出来れば
こうしてたった1人だけ、など指定した相手だけに
圧を使った精神的圧力をかけて動けなくしたり
強くかければ呼吸困難に至る位のゴリラ技能。
これによって男は身動きが取れなくなっているのです。
加減自体はニクジュバンニがコントロールしてくれているので
まぁ死に至る程ではないものの
今、身体を動かそうと思っても動かせない程の
圧力をうけている訳です。
「くそっ……なんで身体が動かねぇ………。
毒か!?それとも……。」
何か勝手に勘違いしているけど
このままにしておく事は出来ないのです。
Gプレッシャーは対峙した状態でなければ
効果は出せないので、このまま放置しておけば
また3両目に移動して、あの子達を殺すだろう。
それ以上に、人を殺す事に躊躇が無い。
生きていれば多くの被害が出るだろうね……。
「さて、このまま殺してもあんたが楽になるだけ。
貴族とは言え、3人の子供にあれだけの恐怖を植え付けたんだ。
これからまともな生活が送れるなんて思わないで。」
「はっ、とんだ甘ちゃんだな!!
俺を殺しもせずに済ませるつもりか!?」
「そうだよ、殺さないし活かしもしないけどね。」
私はロアーソードの鍔の中央にあるゴリラの口を開いた。
このロアーソードは先程みたいにGプレッシャーにも使えるけど
その圧力となる雄叫びを今度は刀身そのものに向ける。
振動剣、とも言えるかもしれないけど
構造的にはニクジュバンニ曰く、超音波振動メスとかに近いとか。
超音波振動メスは超音波振動の作用によって
脂肪分が乳化し、脂肪が刃に付着しない事で切れ味を持続させる
と言うものだそうで、このロアーソードも
切り続けても切れ味の鈍らない剣、と言う意味では間違いでは無いのだとか。
それから私は男の四肢を切り、即座に効力を最小限にまで抑えた
ゴリラによる癒しの魔法でその傷口を塞いだのです。
「さて、これであとは先頭車両位かな?」
「た……たすけ…………て…くれ……。」
「助けてくれってこれまで言った人、何人助けたのかな?」
私はそう言い残し、先頭車両へと向かった。
ちなみに男は両手両足が切られた状態で、そのまま
軽く傷口を閉じるように回復させたので
胴体から生えているのは首のみの状態。
十分、これまでやってきた事をその姿で反省すると良いよ?
あ、ちなみにこれちゃんとくっつける方法があるそうでして。
両手両足があった場所の傷口を再度切断して
癒しの魔法である身体再生の上位魔法となる
超越身体再生を使えば
にょきにょき生えてくるらしいです。
まぁ、それを行ってくれる神殿は
今、世界中で立ち入り調査が入って次々と壊されている訳で。
早くいかないと、治してくれるところなくなるけどね?
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