第14話 G、逃走の末。
「ぬぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!追ってくる追ってくる追ってくるよ!?」
「逃すか!」
『瞬間的な速さを出せるようですが、継続性が無いのでしょうか。
思った程距離を詰めてきませんね……。』
「そもそも私、今、時速40キロで走ってるよね!?
なんで追いつけるのさ!!」
『あのオーガに聞いてみたらいかがでしょうか』
「聞けるかぁ!!」
つか連戦も連戦、私自身も少々疲れが出てきているし
身体中が痛いのを我慢しつつ、逃げているのだけど
ニクジュバンニが言うにも、ほんの僅かづつながら
私との距離を詰める事が出来ているらしい。
「無限バナナの皮!!」
逃げる為には足を滑らせたい。
だけど後ろを見る訳にもいかず
適当に撒き散らしつつ逃げたけど
ニクジュバンニ曰く、バナナの皮を警戒していて
皮の無い場所を走ってきているとか。
『それでも多少左右に避けた分だけオーガが遅くなりました。』
「やったね!」
『35センチ程距離が開きました。』
「誤差レベル!?っていうかこういう時に
何かひらめいたりしないの!?」
『そんな暇があるとお思いで?』
「はい、真面目に逃げます……。」
この後も、樽を出して水を巻いたりだの
バナナの皮だけでなく、バナナそのものを撒いたりとしたものの
思った程引き離せない……。
「ああ!こうなったらヤケだヤケ!!無限糞!」
私はあまりやりたくない糞を撒き始めた。
これにはニクジュバンニ曰く、顔を顰めているとかで
鼻や口の辺りに手を当てながら追ってきていて
避ける範囲も広がったらしい。
『最高記録です!1メートル50センチ程距離が開きました。』
「私の身長分とかやっぱ誤差じゃない!?
何かあれと戦う術とか無いの!?
もっと足止めする方法とかさ!!」
『「あれ」と戦うのは今は無理です。』
「っていうかあれ何なの!?」
『解りません。しかし強い事は間違いありません!』
「解らないのに自信満々すぎじゃない!?」
『強者とは相手との強さの差を見抜くからこそ強者なのです。』
「何か格好いい事言ってるけど、逃げてるんだからね!?」
そんな中、ファンファーレが聞こえてきた。
「やった!何かひらめいたんだね!?」
【ゴリラアーマーがゴリラ能力「無限DK樽」をひらめきました】
「はい……?」
なんか聞き覚えがあるんだけど……。
これって確かパートナーが出てくるとか
そんなのじゃなかったっけ……?
「なんて考えている暇はないか!
いけっ!無限DK樽!!」
私は手元にDK樽を出して、後ろに投げた。
ニクジュバンニ曰く、地面に落ちた樽がガタガタを動いているのだとか。
「次!次!次!次ぃ!!」
私は次々とDK樽を後ろへと投げたのです。
「後は任せた!!」とばかりに私は逃走に徹したのです。
後ろに残ったDK樽はガタガタを揺れるばかりだけど
それによってどうやらあのオークの足が止まったようです。
ガタガタを勝手に揺れ動く樽。
そりゃ私も何が起きるのか解ってないんだけど
奇妙だよね……。
そして一気に私は距離を稼ぐ事が出来たのです。
「はぁ……はぁ……なんだか超疲れた………。」
『お疲れ様です、DK樽が良い役割を
果たしたようで何よりです。』
「今思ったんだけどさ………大丈夫なの?」
『何がでしょう。』
「いや、そもそもゴリラでDK樽とか……。」
『あれはそもそも鈍器ーコングであって
ゴリラでは無いですよね?』
「あんた伏せるつもりないでしょ!?」
『伏せるも何も、DK樽を出してみれば解ります。』
ニクジュバンニがそういうのでDK樽を1つ出してみた。
「うん、何か樽にDKって書いてあるし?
ガタガタ揺れてるし、これあのDK樽だよね??」
と、思っているとDK樽の上の蓋が開いたのです。
すると同時にポンっと軽い音と共に
何かが上に飛び出し、樽の上に着地したのです。
「何この小さいゴリラ……。」
と、思っているとまたファンファーレが鳴った。
【ゴリラアーマーがゴリラ能力「ミニゴリラ」をひらめきました】
【ゴリラアーマーがゴリラ能力「ミニミニゴリラ」をひらめきました】
【ゴリラアーマーがゴリラ能力「ミクロゴリラ」をひらめきました】
「……………はい?」
そしてニクジュバンニの言い訳のような説明が始まった。
まずDK樽の正式名称は「わからない」と言う意味の
don´t knowの頭文字を取ってDK樽なのだとか。
「他に『私の知った事ではない』って意味も無かったっけ……。」
『しっかりと勉強なさっていたようで何よりです。
この樽は使った本人すら何が出てくるか解らない樽です。』
「え?……………まさかパルプ〇テみたいな??」
『近いですがマスターに被害が及ぶ事はありません。
ただ樽から「何か」が出てくる、と言うだけです。』
何が出てくるか解らないから「don´t know樽」で
私の知っている樽では無いらしい。
「じゃあこの小さいゴリラは?」
『見てひらめいただけです。』
「はぁ……。」
なんでもミニゴリラは手のひらサイズのゴリラで
ミニゴリラのお腹から、ミニミニゴリラと言う小指の爪位のゴリラが出てきて
さらにそのミニミニゴリラのお腹から、ミクロゴリラと言う
細菌サイズのゴリラが出てくるのだとか。
「使い道は……?」
『さぁ、命令位は聞いてくれそうですけど?』
レベル1なので、出てくる数は1匹だけらしい。
「……マトリョーシカ?」
そうはいっても、小さいながらに可愛いし
力もあるのだとか。
「やっと……見つけたぞ………。」
「え?………なんで血濡れてるの……。」
逃げ切ったと思っていたのに、あのオーガが追い付いてきたのです。
その姿は息を切らしているだけでなく、全身真っ赤っか……。
血に塗れたその姿は、少し前に見た姿と違い
疲労困憊、満身創痍とでも
言うべきなのだろうか……。
「貴様が落としていった樽のせいだろうが!!」
「え?役に立ったの……?」
そもそも私はどうしてあの樽で
ここまでになったのかも解っていないし
ニクジュバンニが逃げろ、と言った程強いとされる
このオーガがここまでになるほどの効果があった事が信じられなかった。
「そっかぁ、予想外だったなぁ……。」
予想外ついでにニクジュバンニにお願い事をしてみた。
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