第136話 G と 嵐 の 襲撃
「いかん!屋根を閉めるぞ!?」
ホットルさんが急いで端にある屋根を上に被せるように
展開させ、上からの落下物等に備え始めた。
一応、屋根の一部分だけが魔導銃の銃口が出せるように
開いているのと同時に側面から身体を乗り出す事が出来る
あくまで簡易的な屋根だったのです。
「耳ぃ塞げ!恐らく出るぞ!!」
「出る?」
ホットルさんの言葉から数秒。
魔導列車の側面から次々と何かが空へと打ち上がったのです。
ホットルさんの説明は良く聞こえなかったけど
ニクジュバンニが改めて解説してくれた。
打ち上がったのは全体の1割程度が緊急用の照明弾で
近隣の町や村に見えるように打ち上げたもので
残りの9割は似たようなものに見えるけど
いわゆる機雷のようなものなのだとか。
打ち上げた後に下手に触れればドカン。
火薬の爆発ではなく魔力の爆発だそうで
一定時間経過すると、一斉に自爆するとか。
「……………そもそも魔導列車って走ってるから
これ打ち上げてもそのまま残るんだよね??
少し離れて待ってれば全部魔導列車の上空から
消えるんじゃないかな……。」
「嬢ちゃん、天才か?」
いやいや……。
ただの空中機雷なら、魔導列車が停車するならいざ知らず。
今みたいに出来る限り逃げようとしたところで打ち上げても
そのまま置き去りにするだけで、然程の効果は無いのではと
考えたのですが……本当にその通りらしい。
『魔導列車を後ろから追いかけてくるなら効果はありそうですが
今回のように斜め前からやってくるのには無意味ですね……。』
ただそれ以外にも魔導銃が魔導列車には備え付けられていて
対空砲火はあるそうなので問題は無い、と言う話でしたけど……。
「何か当たってるようには見えるけど
墜落しそうな気配はありませんね……。」
「ワシらが撃っとるのと同じ弾じゃからの……。」
弾頭が臭いだけの魔導銃を魔導飛空艇に撃って
どうしようというのだろうか……。
『対人相手なら効果はあるのですから
使うタイミングの問題な気がします……。』
そうこうしているうちに大きな魔導飛空艇から
小さめの魔導飛空艇と思しきものが次々と出てきたのです。
「チッ、車両の間から乗り込むつもりだな!
嬢ちゃんは後ろを頼む!
ワシは前の連中を撃つ!」
なんて言われてもそもそもこの箱のような場所。
天井が出てから左右から這い出て撃つ事になるのですけど
形状と横に開いている穴の大きさからいって
1人がやっと出られる程度。
つまり私が右から後ろ側を狙うと
前は左側しか撃てない。
「これ構造的な欠陥なのでは……。」
「嬢ちゃん、その前にここは1人用だからな……。」
「それがおかしいですよね……。
前後左右を撃つなら4人用にしないと……。」
「今更な話だな!それにワシは冒険者であって
この魔導列車の設計をしている訳でも無いからのぅ!」
「そう言われれば確かに!」
ホットルさんと共に前後に張りつこうとする
小さめの魔導飛空艇を狙い、私もゴリライアット・ガンを
スナイピングライフルフォームで狙い撃っていく。
「ミニゴリラは張り付いてくる魔導飛空艇を!
ミニミニゴリラは車内の殲滅へ!」
掌から次々とミニゴリラを出し
屋根の上を進ませ、ミニミニゴリラを車内へと放っていく。
他の冒険者を含めても
全員で10人と居ないらしいのでまずは絶対値を増やす。
1桁を3桁まで上げる。
これだけでもかなり対応しやすくなる筈。
それも私と同じ能力を持つミニゴリラ達も
ゴリライアット・ガンを持って車内を走り回る。
一番は最悪の状況を防ぐ事!
「最悪の状況じゃと?」
「動力車を乗っ取られる事、もしくは破壊。」
「乗客の命はそうでも無いのか。」
「そもそも賊なんだから、命なんて取っていったって
1鉄貨にもならないでしょ。
目的として考えるなら乗客の持ち物などの金銭か
この魔導列車の鹵獲。
これが魔導具だって言うならミスリィルが使われてるでしょ。
それに長い時間、これだけの質量のものを走らせるだけの
魔力を蓄える魔石だって、多分良い値段で売れるでしょう?」
「そう言われればそうじゃな。
楽して金を稼ぎに来とる連中なのじゃから
命じゃ酒も飲めやせんな。」
「それにこれもあるからね、無限熱湯樽!」
私は熱湯を魔導列車の後方へと次々と蒔き散らした。
沸騰寸前の熱湯なので、当たれば熱いのは当然ながら
魔導列車が走っている真っ最中でしかも夜。
湯気がバッと出て、それすらも僅かな妨害に繋がればと
選択したのが無限熱湯樽です!
無限鋼鉄製樽で魔導列車に傷が入ったら困るし??
「ははははは!おまけで追加の無限水樽!!
この寒い夜にキンッキンに冷えた冷水は堪えるでしょう!!」
「なんか嬢ちゃん楽しそうだな……。」
「ははははは!………全っ然面白くないですね!!
これが本当に面白いと思ってやっているとしたら
頭のおかしな人ですよ!
でも人殺し紛いの事をしている事は紛れもない事実で
こうでもしてないとやってられないだけですよ!!」
「人殺し紛いか……冒険者ってのは罪深い仕事だ。
だが違ぇねぇし、その考えにはかねがね同意だ!!
嬢ちゃんは一番後ろを頼む!
動力車は先頭車両だけでなく、最後尾もだ!!
狙ってくるなら最後尾にも来るはずだ!」
「うぃっす!」
粗方見える範囲の対処が終わった事で
ホットルさんとは分かれる形となったのです。
「そういえば最後尾近くにも冒険者が1人居るんだっけ……。
ベーシックフォームで近づいて大丈夫かな……。」
『でしたらゴリラアーマーレベル3で
新フォームが追加されましたので
不本意ながらお試しになられるのはいかがでしょうか。』
ちょっと待った。
前にレベル3になった時も知らせてこなかったけど
なんでフォームが増えている事すら教えないのさ……。
『8種類程増えましたが、個人的にマスターが
新フォームとなるのはゴリラ要素が激減する為
報連相は控えておりました。』
なんでゴリラ要素が最優先なのさ!?
『ゴリラだからですが何か?』
聞いた私が馬鹿だったわ……。
あんたそういう性格だったね。
で、その新フォームとやらを見せなさい。
『私がマスターの為に選んだフォームで行きましょう!』
マテ、私に選択する権利は無いのかね?
『私がゴリラアーマーです!!』
……………もう何か言う気力が失せた……。
「何だか知らないけど申請、マテリアライズ!!」
『承認、マテリアライズ!!』
そして私は新フォームに包まれたのです。
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