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【完結済】G-form-girl  作者: ボブ
第8章 魔導列車編
134/178

第134話 G と 魔導列車の車窓から。

 私は2等車両ではなく1等車両に乗るべきだったと

 今更後悔していたのです……。


 そもそも馬車にも特にスプリングなどがついていない。

 なら列車は?と最初に思い浮かべるべきだったのです。


 ニクジュバンニ曰く、全く無い訳では無いとか。


 板ばね、と呼ばれる鋼板の曲げ特性を利用したものが

 存在するそうで、蒸気機関車にも採用されていたのだとか。


 ただし現代的な板ばねに比べると、質は悪いそうで

 それがこの先程から発生している縦揺れに出ていたのです……。



「オエエエエエエ……。」


 先程から酔った乗客が

 窓から吐いている、と言う史上最悪の絵面が続き

 どうにも私が貰いそう、と言う状況に耐えきれず

 部屋に居るのが辛くなったのです……。



  『マスターは健康持ちですから酔う事はありませんよ?』


 私が酔わなくても周りが吐いてて貰いそうなんだけど?


 だって酸い匂いもするしさ……。


 お尻が痛いとかなら創作物で散々読んできたけど

 まさか貰いゲ〇しそう、だなんて……。


 しかも魔導列車は満員御礼。

 移る車両も無いので、私はうろうろした挙句に

 屋根の上で寝ころんで落ち着こうとしたのです。


 車両と車両の間にはカバーのようなものも無いので

 屋根に登れば少しは気紛れにもなるかも、と登ると

 まさかの屋根の上に人が居る光景を目撃したのです。





「あー、そういうのはあるな……。」


 屋根の上に居たのはドワーフ族のホットルさん

 という方でして、Bランク冒険者だそうです。


 で、何故屋根の上に居たかと言えば

 護衛任務、だそうです……。


 一応屋根に登ってきたのを怪しまれはしたものの

 冒険者ギルドの登録証を見せ、経緯を説明すると

 まぁ理解はして貰えたようだ。



「まさか魔導列車の護衛任務が屋根の上とは……。」



「おいおい、ずっとここに居る訳じゃねぇぞ?」


 なんでも屋根の上にも居るのは一番見通しが良いからだとか。

 魔導列車には魔物の脅威もあるものの

 一番厄介なのは魔導車を使った賊や

 小型魔導飛空艇を使った空賊、と呼ばれる連中なのだとか。


 特に屋根の上は上空を見渡せると言う事もあって

 空賊への警戒と、遠くから迫ってくる脅威を

 いち早く列車内に伝達する役割があり

 時間で交代するものらしい。


 しかも報酬が出る上に片道単位での依頼だそうで

 魔導列車の始発駅から終着駅まで行きたい冒険者が

 主に依頼を受けるのだとか。


 むしろ始発駅と終着駅でしか依頼が無いらしく

 多くの冒険者が魔導列車の護衛任務を知らない

 と言う事も非常に多いのだとか。



「まぁ貰いゲ〇が嫌で屋根に登ってきた冒険者なんてのは

 初めて遭遇したがな……。」


「はは……。」


 ちなみにここは丁度魔導列車の中間点で

 先頭に近い方と最後尾に近い方の3か所があるそうで

 それぞれに冒険者が居るとか。



「まぁ屋根には登らん方が良い。

 何しろ屋根の上に居る冒険者には

 魔導銃が貸し与えられているからな。」


 同じ冒険者だから、と教えてくれたのですが

 この魔導銃、軍隊が持つものと外見は似ていて

 1発撃つごとに弾を込めなければならないタイプだそうですが

 実は実弾ではないのだとか。


「こいつは染料弾ってもんでな。

 この薬莢の横に色がつけてあんだろ?

 これと同じ色の染料が入った弾だ。」


 いわゆる防犯用のカラーボールの延長。

 ペイント弾とも言えるもので襲撃してきた賊などに

 撃ち込んで対応する為であって

 殺傷能力は無いらしい。



「殺傷能力が無い?

 賊なら特に殺したとしてもお咎めは無いのでは??」


「そういう事じゃねぇんだよ。」



 なんでもこの中の染料は錬金術で加工された染料が

 詰めてあって、水などで洗ったりすれば

 簡単に流れる、と言う風に認識されるようにしてあるとか。



「賊なんざ、風呂に入る事ぁねぇ。

 清拭か精々水浴びが良い所だが……。

 まぁ簡単に洗い流せると大抵の賊は思ってるもんだ。

 だがこいつは国軍が持つ魔導具に反応するんだ。」


 色は洗えば落ちるけど、実際は色だけが落ちて

 残るものがキチンとあるらしく

 襲い掛かって来た賊などが街などに訪れると

 特定の魔力反応が門で解るようになっている上に

 全ての弾がキチンと登録管理されているらしく

 どの襲撃事件で使われたものかまで解るのだとか。



「意外とハイテクだった……。」


「はいてく?が何だかは知らんが間違って

 撃たれないようにしろよ?(くさ)いからな。」


(くさ)い?」


「おう、ミノタウロスのミルクが腐ったような(にお)いがするぞ?」



 ニクジュバンニが言うにはチーズみたいな発酵臭がするとか。

 そもそも日本にある防犯用カラーボールにも

 そういうものが存在していて、警察犬などが

 追跡しやすいように(にお)いがつけてあるのだとか。



「馬のミルクならなぁ……そういう酒もあるから

 良いのじゃが、ミノタウロスはな……。」


 そうか、ドワーフだからか……。

 やっぱりお酒一杯飲むのかな……。



  『そもそもドワーフにとってお酒は酒精が主であって

   味は二の次です。そして酒精の低いお酒をお酒として

   扱う事もありません。その最たるものが

   この世界のエールビールです。

   マスターが良く知るのはラガービールのピルスナーであり

   エールビールとは異なるものです。

   またそこのドワーフは既に呼気中のアルコール濃度が

   酒気帯び運転の100倍を超えています。

   これはウォッカを1.2リットル程飲んだ状態に換算できます。』



 うぉぉぉぉぉぉぉい!!

 どんな状態で仕事してんのさ!?



  『意識ははっきりしているので問題は無いようです。』



 問題無いの!?

 っていうかウォッカってアルコール度数96パーとかじゃなかったっけ!?

 あれを2本とか開けた状態!?



  『そもそも人族とは身体の構造は似通っていても

   別種族である以上、別物とお考え下さい。

   それに水の変わりに酒精を持ち歩き

   水代わりに飲むというのは特にこの世界だからという訳ではなく

   地球でもありえた話なのです。

   その上でドワーフが酩酊状態になる事はありません。』



 …………つまりお酒を飲んで依頼をしていても

 問題ない、とでも??



  『そもそも依頼さえ問題なく行えれば良いのでは?

   酒精を摂取しているイコール仕事をせずにサボっている訳でも

   依頼自体はきっちり行っていればどこにも問題は無いのです。

   むしろお酒を飲んでいる、と言うだけでドワーフ族であれば

   判断が鈍る事すらありません。

   日本人の尺度ではかるのは得策ではありません。』



 なのかな……?





 突然バシュっと音がすると

 どうやら賊が現れたらしい。


 魔導車なのかな?

 何か速い乗り物で魔導列車に並走していたのが

 ホットルさんが魔導銃で撃つとあっという間に去っていった。



「おお!こうかはばつぐんだ!!」


「ミノタウロスのミルクの腐った匂いは極まると

 気絶(スタン)を起こすからな、見てみろ。」


 魔導車?をよく見ていると去った、と言うより

 確かに運転手が気絶していた。


 そしてそのまま道を逸れるばかりか草原へと突っ込んでいき

 最後は岩か何かにぶつかったのだろうか。


 何かに引っ掛かったかのように後ろが跳ね上がり

 そのまま何回転かしてから止まっていた。



「嗅いでみるか?(意識が)飛ぶぞ?」


「辞退させていただきます……。」


 というか本当に(意識が)飛んでいるので

 笑い事では無いのだけど、賊は自業自得って事で良いと思う。


 あれが本当に賊なら、の話だけど……。

星5点満点で「面白い」や「面白くない」と

つけていただけると、作者が一喜一憂します!

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